『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』S1:EP1~2[2022.09.10 追記]

 twitterを見ていると、アマゾンプライムで配信開始された『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』で、ひげのない女ドワーフや黒人エルフが出てくるとかで囀っている連中が大勢いた。


 私は『指輪物語』のファンじゃないのでどうでも良かったが、黒人にエルフを演じさせることが本当に問題なのかどうかについては少々興味が湧いた。


 しかし、ドラマそのものには興味はないし、そもそも観る方法がないしなあ……と思っていたのだが、よく考えたら私はプライム会員だったことを思い出した。



『力の指輪』は、第二紀を映画化した作品らしい。つまり、冥王モルゴスの敗北後、身を隠していたサウロンがエルフを騙して指輪を作らせ、その力で世界を支配しようとして失敗する話である。第三紀の話である『指輪物語』の前日譚。

 原作だと、トールキン死後にまとめられた『シルマリルの物語』にこの辺の話があるらしいが、私は読んだことがない。



 問題になっている女ドワーフや黒人エルフについては、私は特に気にならなかった。もともとファンじゃないし、そんな細かい描写はどうでもいい。


 それよりも、エルフの連中が人間と大差ない程度のおつむであることの方が気になった。

 エルフは『指輪物語』の世界において、最も優れた種族であることになっている。そのわりには目先の利益にとらわれ、先見の明がなく、差別的で、しょうもない政治遊びをしている。はっきり言って人間と大差ない程度に阿呆である。

 この作品にはいろんな種族が出てくるが、観ていても違いがわからない。外観が異なるだけで、中身はアメリカのドラマに出てくるキャラクターの類型にしか見えない。しょうもないことで言い争ってばかりで、なにひとつ建設的な話し合いのできない、頭の悪い、くだらない生物ばかりである。

 冒頭の話とか、何? なんで折り紙の船に石をぶつけて沈めるの? その行為に意味あるの? その行為を撮影して編集して我々に見せる意図は何なの? それを見せられている私は何を思えばいいの? いじめかっこ悪いとか?


 あのシーンに限らず、とにかくこのドラマには、いかにもアメリカのドラマ臭いアホなシーンが多いのである。しょうもないことでいがみ合うシーンが。

 何あれ。あれを見て視聴者に道徳か何かについて学んでほしいの? これは道徳学習ビデオなの? 意味がわからん。


 もっともこれは、このドラマの欠陥と言えるかどうかはわからない。原作でもエルフは内輪もめしてごちゃごちゃしているし、サウロンが美しい外観に化けているだけで騙されるくらいには先入観と偏見に満ちた能無し種族であることは間違いない。


 ともかく、私はドラマを観ていて、あんな頭が悪くて卑しい生物どもが好き勝手にうじゃうじゃと徘徊する世界なんかさっさと滅べばいいのにと思った。早くサウロン様がこの世界を闇に閉ざし、全種族を奴隷としてコキ使う素敵な王国を建国されたらいいのに。そうすれば彼らはいかに自分達が愚かだったかを悟るだろう。まあ、悟らないかもしれないが、それはそれで奴隷としてコキ使われるにふさわしいから良しとする。



 というわけで、私はサウロン様の登場を今か今かと待ち望んでいたのだが、私の見間違えでなければ、どうやらエピソード2までにはサウロン様は登場されなかったようである。ケレブリンボールは出てきたが、たぶんサウロン様はまだ。どこかにいたのか? その他はどうでもいいゴミみたいな種族のしょうもない話がいくつか並行で語られるだけ。面白いか? この話。どうでもいいエルフの女が延々水泳する話とか、どうでもいい家族がホラー映画ごっこする話とか、楽しいか?


 第二紀で重要なのは、馬鹿なエルフがサウロン様に騙されて塔と指輪を作り、サウロン様が第一の指輪をお造りになられた際にようやく気付くという間抜けっぷりが描かれるところにある。

 そして、全盛期のサウロン様のご活躍が存分に映像化されるはず! 『ロード・オブ・ザ・リング』とかいうしょうもない映画ではサウロン様は目玉だけしか登場せず、誠に不敬な怪しからん扱いだったが、今度こそは大暴れしてくださるに違いない。このクソみたいな世界を闇と絶望に閉ざしてくださるに違いないのである。

 英雄気取りの女エルフの話とか、それを邪険にするエルフのしょうもない政治話とか、その他どうでもいいゴミ種族の話などどうでもいいではないか。早くサウロン様を出せ! サウロン様のご登場が遅れていることの方が、エルフやドワーフの描写よりもよほど問題だろう。サウロン様がお目見えしなければつまらんのである。サウロン様! 早く! 早くこの永遠につまらぬ平和と光に満ちた世界に闇と絶望をお与えください!


 ここまでの2時間で面白かったのは、ケレブリンボールが例の塔を建設する話をしていて「馬鹿な奴らめ。自ら堕落と破滅に向かおうとするとはな。クックックッ」と楽しめるところだけ。早くエルフ共がサウロン様のイケメンぶりに騙されて自滅に向かう素敵な本題に入らんのかね。



 このドラマはシーズン5まであるらしい。この調子でダラダラと続くのであれば、はっきり言って全部は観ていられない。サウロン様がご活躍されるシーンだけ抜粋して拝見するのが得策かもしれない。



[2022.09.10 追記]


 EP3を観た。つまらん。

 話の進みが遅いとか、悪役のサウロンが出てこないから話が締まらないとか、いろいろ理由はあるが、一番問題なのは、このドラマが『指輪物語』の世界を描いているように見えないこと。


 私は『指輪物語』のファンじゃないから、細かい描写や原作との整合性については気にしない。

 私が気になるのは脚本。

 このドラマは、見た目だけは立派だが、中身がステレオタイプなアメリカドラマでしかなく、架空の世界のファンタジーには感じられない。


 ガラドリエルが情緒不安定なのはダメなドラマの典型だし、折り紙の船を無意味に石で沈めるシーン、化け物に襲われてクローゼットに隠れるシーン、アホな理由で水泳していたガラドリエルを助けなかった奴らがワームに襲われるシーン、ワンちゃんとの戦闘シーン、お友達に矢が刺さってスローモーションになるシーンなど、とにかくどこかで観たことのあるシーンばかり。


 こうしたクリシェやオマージュが、作品に合っているなら何も問題ない。たとえばゲームの『バイオハザード2』では、ゾンビ映画やパニック映画、サメ映画でよく見かける典型的なシーンがいろいろ盛り込まれているが、これは作品に合っているし、先人達への敬意とも取れるから何も問題ない。

 BBCのドラマ『シャーロック』で、ホームズに鹿撃ち帽を被らせたり、マイクロフトに「elementary(初歩だ)」と言わせたりするお約束はベタベタだが、これは作品に合っているし、ファンサービスでもあるから全然OKである。ついでにいうと、このドラマではマイクロフトがスリムだったり、モリアーティがホームズの家のホコリをペロペロする変態だったりして原作の描写と異なる部分が多々あるが、そんなことはいちいち批判するに値しない。ドラマを観ていれば、制作者がホームズオタクなのは一発でわかるし、改変しているところはあえてやっていることがわかるからである。


 しかし、『力の指輪』に出てくるクリシェは、中つ国の歴史を描く作品には合っていない。なんでここでサメ映画のクリシェが来るの? と、その必然性のなさにむしろ白けてしまう。映画『ロード・オブ・ザ・リング』からのオマージュとかなら問題ないのだが。

 ……なんでサメ映画とかホラー映画のパクリシーンを盛り込むの? なんでガラドリエルをあんなにやかましいだけのアホにしたの? なんで戦闘シーンでは主役だけが異常に強く、他は弱すぎるの? わけわからん。


 これ以上は時間の無駄だから、もう観ないと思う。

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