第42話
☆☆☆
コンビニで秋生さんと秋ちゃんと別れたあたしは、フワフワと浮いているような感覚で家に戻ってきた。
「おかえり」
と、リビングから聞こえてきたけれど、ろくに返事もせずに二階へとあがる。
そして、自分の部屋に入るのではなく、陽菜ちゃんの部屋をノックした。
「はい」
「陽菜ちゃん……」
「あら、帰ったの? って、なにも買い物してないじゃない」
「……うん……」
「どうしたの? 上の空で」
けげんそうな顔をする陽菜ちゃん。
あたしはまだフワフワとしている感覚のまま「好きな人と、番号交換してきた」と、呟いた。
「え? そうだったの?」
「うん……」
陽菜ちゃんに話すと、だんだんその出来事が現実だったんだと思えるようになってきて、あたしはストンッとベッドに腰を下ろした。
「あたしのこと、可愛いと思ってたって、言ってくれた……」
「うそ!? よかったわね」
陽菜ちゃんは、まるで自分の事のように喜んでくれる。
「あたし、期待していいのかなぁ?」
「相手は、月奈を可愛いって言ってくれたんでしょ? なら、きっと大丈夫よ!」
「あ、でもあたし……」
「なに?」
「あの人に彼女がいるかどうか、聞いてない!」
一緒にいた相手が妹だとわかって、それで安心してしまっていたけれど、肝心な部分を質問し忘れていた。
「どうしよう、これじゃ告白できない」
すがるような視線を陽菜ちゃんへ向ける。
すると陽菜ちゃんはあたしのあたまをポンポンとなでて、「番号交換しているなら、後で聞いてみればいいじゃない?」と、言ってきた。
あ、そっか。
もう、番号もアドレスも知っているんだった。
「で、でもさ、急にそんなこと聞いたら変じゃないかな?」
「急に聞かなくても、ゆっくり聞けばいいんじゃない? 好きだからって、焦る必要はないと思うけど?」
「そ、そっか……」
そうだよね。
今日の急展開で、頭はパニック。
そのせいで気持ちが焦っているだけかもしれない。
あたしはパっと立ち上がり、「ありがとう陽菜ちゃん。話したら、パニクってた気持ちが落ち着いた!」と、笑顔をみせた。
「それならよかった。焦らず、ゆっくりね?」
「うん!」
うなづき、あたしは部屋を出たのだった。
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