第24話
☆☆☆
それから、あたしと陽奈ちゃんがやってきたのは会場から少し離れたデパートの屋上だった。
ここなら、人を気にすることもなく、花火を楽しむことができると思ったから。
陽菜ちゃんに、会場まで行かずにここで見てもいいかと尋ねると、すんなりOKしてくれた。
あたしは陽奈ちゃんに背中をむけて、バッグから4人を外へと出した。
外に出た途端、はしゃぐ白堵。
大きく空気を吸い込む菜戯。
きょろきょろと周囲を見回す汰緒。
そして、あたしの方を見て「サンキュ」と笑う美影。
美影の笑顔にドキッとしながら、あたしは会場がある方向の空をみた。
ここは格子状の網が貼られているだけなので、5センチの妖精たちも空を見ることができる。
「ねぇ、月奈」
「なに? 陽菜ちゃん」
「疲れ、取れた?」
「え?」
「昨日言ってたじゃない。妖精が見えるって」
陽菜ちゃんの言葉に、あたしは「あぁ~……」と、つぶやいて、チラッと美影たちの方を見た。
『妖精』という言葉を聞いて、4人がこちらへ注目している。
「もしかしたら、陽菜ちゃんの言うとおりかも……」
「疲れのせいじゃなくて、本当に妖精がいるってこと?」
「うん……」
小さく頷いたとき、夜空に大きな花火が上がった。
ドーンッ!という爆発音に、妖精4人は驚いたように目を見開き、そしてキラキラ輝く火の花に「おぉぉぉーっ!!」と、拍手を送っていた。
赤や青の花火を見ながら、陽菜ちゃんが「いいなぁ」と、つぶやいた。
「え?」
「妖精が見えるなんて、素敵」
あたしの言葉を疑うことなく、受け止めてくれる陽菜ちゃん。
しかも、『素敵』だって。
「ありがと、陽菜ちゃん」
「なにが?」
「なんでもないっ」
あたしはそう誤魔化して、陽菜ちゃんに抱きついたのだった。
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