19、関翔と知り合う

「そんでさ、誰待ちなのよ?」

「俺の別クラスの友達よ。とりあえず校門で待っててくれって指示だから」

「はいはい」


つい昨夜、タケルとヨルと一緒になんかやらかした夢がぼんやりとあり、穏やかな日常が尊いものに感じた。

なんだったのだろうか?と、夢を思い返してみる。

半分くらいしか記憶に残ってないけど、茜をなんか拷問したことだけは覚えている。

いやいや、するわけないでしょあんなこと……。

どんな状況になったらあそこまで酷いことをすることになるのか……。

上を見上げると、雲が出てきた曇り空がこれからを示唆するように思えてくる。


「あ、師匠!師匠だ!」

「明智にタケル!」

「じゅ、十文字に……、ヨリ君だぁっ……」

「ばいばーい」

「また明日なー」


ゆりか、ヨル、千姫の女子寮組の3人が縦に並んで帰宅している様子を見かけて手を振った。

ゆりかとヨルは相変わらずだが、やっぱり千姫は俺を避けるような仕草が目立つ。

なんか調子が狂うんだよな……。


「はぁ……」


プライベートなヨルを眺めていると忘れがちになるが、未来の生きるか死ぬかの世界を歩んだ彼女は、やはりドライな一面があるのを嫌でも思い出させる。

ギフト狩りへの復讐の炎はまだ昂っているのだろう。


ゆりかも一応はギフト狩りだったか……。

彼女はギフト狩りから足を洗っているから夢の世界では殺害しなかったが、ギフト狩りのメンバー情報を吐き出すために協力してもらったんだっけかな?

色々と今後に関係ありそうな情報は整理していった方が良いだろう。


因みに、1番夢で記憶に残っているのは彼女たちと何回も何回も愛し合ったことである。

ガキの頃から知っている絵美が大人の喘ぎをすることとか、咲夜のご奉仕プレイとか、アリア様の女王様プレイとか、円との笛プレイとか、ヨルの甘えん坊プレイとか、サーヤの隠れマゾプレイとか、美月と美鈴の姉妹丼プレイとか……。

8割方がピンクの出来事しかもう頭に残ってない。

一夜の夢で何人抱いたんだよ俺……。

というか色々な娘とやっていた俺だが、スタヴァの姉ちゃんとか悠久とか千姫とか知り合いの女全員に手を出したわけではないのは俺の名誉のために語っておく。


(夢の自分に負けて恥ずかしくないの?)


中の人の純真無垢な質問にドキンとさせられる。

いや、抱いた女の数が多いから勝ちとかそんなゲームはしてないから!

自分に負け惜しみしていると、『おーい!』とタケルを呼ぶ男の声がした。

現れた男の顔を見て、『は!?』と心の中で叫んだ。


「た、タケル……?」

「確か1回だけ見たことあるだろ。関翔だ」

「うおぉ!?すげぇ、明智先生だ!俺、関っす!よろしくな!」

「あ、あぁ……」


セカンドで追加されるタケルの友人枠である。

ファーストの明智秀頼がアレなせいで、セカンドでもタケルの友人を増やしたが結局アレだったというオチが付く。

しかし、基本的にギャルゲー世界なので主人公のタケルとヒロインには優しく(三島遥香や赤坂乙葉以外)、野郎には厳しい。

ギャルゲーは残酷な天使の概念である。


「彼が倦怠期だった山本カップルの仲を修復させたっていう」

「あぁ。恋のキューピットだ」

「いや、流石に盛り過ぎだって」


恋のキューピットでは絶対にない。

まず、山本の彼女を見たことすらないもん。


「とりあえず恋愛ごとなら秀頼に任せとけってぐらいモテモテボーイだ」

「モテモテボーイはだっせぇよ」

「よろしくお願いします。モテモテボーイさん」

「お前も乗るなって」


発言者的には褒めているつもりでも、本人はまったく褒められている気がしない称号だ……。

とりあえずどこ行くか?という流れになり、タケルが「いつもんとこでいいやろ」との一言でマスターの店『サンクチュアリ』に決定した。


「じゃあ、明智は十文字や山本と同じ5組なんだな」

「あぁ。そうだな」

「てことは、詠美も同じか。大丈夫か、詠美に虐められてないか?」

「大丈夫だよ」


というかお前、詠美の被害者かい。

予期せぬ接点に笑いそうになった。

意外と俺の知らないところで関翔という人物は、俺の知人たちと関係があるんだなと驚きを隠せないでいた。


「とりあえず恋愛相談とかお前そういうの好きだろ?なんか関にアドバイスしてやれよ」

「恋愛相談が好きなのは女子であって、俺はそんなに好きではないよ」


彼女はいても童貞な俺なんかで良いのかは、甚だ疑問が残るところではある。

タケルを仲介として挟みつつ、関翔と簡単な雑談を交わしていく。

原作キャラクターだと思うと緊張するな……。

あえて、関とは1年時には関わらないようにしていたし。

ギフト狩り連中とは、巻き込まれるのも困るので極力関わり合いになるつもりもなかったからな……。

そんな感じに当たり障りのない風にタケルと関と会話をしていると、見慣れたこじんまりとしたマスターの店を発見した。

サンクチュアリの入り口に着くと、タケルを先頭に関、俺の順番で入店していった。


「いらっしゃーい。お?珍しいトリオだね」

「こんちゃーす」

「お久し振りですマスター」

「よ」

「君とが1番付き合い長いんだからもっとなんか言えよ」


俺の挨拶はマスターの中で不評だった……。


「なんか意外なメンバーなんだけど、どうかしたの?」

「最近気付いたんだが、喫茶店の店長のあんたはお客さんに干渉し過ぎでしょ」

「だって暇なんだもん」

「そんな理由かい」


俺も暇をしながら金を稼げる人になりたいものである。

咲夜のコミュ障だけど、イタズラばかりなのは構ってちゃんだと思っていたけれど、マスターの血筋を受け継いだものであるのだと今更2人の共通点に気付いてしまった。

そう考えると構ってちゃんなマスターであるという解が出せる。


「実は、関の恋愛相談だってさ。それで、俺がモテモテボーイの秀頼を紹介したってわけさ」

「明智先生にあやかった恋愛価値観を受け取りに来ました」

「人選大丈夫?本当に大丈夫か?中学までキスマークを口紅だと思ってた彼で大丈夫!?」

「え?キスマークは口紅だろ……?」

「口紅の痕がキスマークじゃないのか……?」

「お前ら3人無垢か!」

「…………」


タケルと関が2年前の俺と同じ反応をしている。

2人は16・17歳で気付けたけど、俺は30年以上知らない事実だったわけである。

達裄さんの知識は童貞を驚かせる破壊力が高すぎるんだよね……。


「不安だ……。とりあえずテーブル席に案内しますね」


いつものカウンターではなく、話をしやすいようにマスターの粋な計らいでテーブル席に案内された。

奇しくもこの席はこないだ深森親子と会談した場所と同じであった。


「しかし、秀頼と関と一緒にサンクチュアリに来ることになるとは人生わからぬものだな」

「人生語るほど生きちゃいねぇだろ」


タケルの隣に関、タケルの目の前に俺という配置に付いた。

4人席なので、俺の隣は空白になっている。

マスターに3人がコーヒーを注文すると、すぐ目の前に差し出されたのであった。

「ごゆっくりー」と言いながら、マスターはカウンター席に座りクロスワードパズルのテキストを開きだした。

咲夜曰く、マスターの趣味レベルにクロスワードにハマっているとのこと。

良い誕生日プレゼントを娘にもらい幸せ者なマスターだ。


「それで関の好きな娘誰だよ!?同い年!?先輩!?」

「お、同い年」

「おぉ!俺らとタメかよぉ!」


同い年と聞かされると知り合いなんじゃないかって期待感が沸き上がる。

知り合い同人の恋愛なら尚楽しいものだ。


「誰だよ、名前言っちゃえよ。島さんとか?松井さんとか?」

「いや、違う。俺の好きな娘は……」

「ストップだ、秀頼に関」

「え?」


タケルが割り込んでくると腕で✕マークを示していた。


「好きな娘が俺と被る可能性あるから、恋愛相談において名前は聞かないようにしてるんだ」


タケルは恋愛相談されてるのか?という純粋な疑問が……。

てか、好きな娘とかいるのかこの男は……?


「俺は、人の恋愛ごとにおいては蚊帳の外でいたい!それに、関の想い人という匿名状態の方が面白いしな」

「確かにな。俺の好きな娘がタケルとブッキングした場合敵になるのか。よし、なら名前は伏せるぜ」

「匿名の女ってなんかそそるよな」

「わかりみ。フゥーゾォォックとかで匿名女といつかやってみたい」

「いきなりなんの話してんの?」


野郎の恋愛話は無限に話を膨らませられるが、マスターの突っ込みでなんとか脱線しないですんだ。

関の好きな娘の恋愛話をするために、自然とみんなの顔がテーブルの真ん中へと釘付け状態で、コソコソしているという状況になっていた。












秀頼と関の初対面はこちらから。


第16章 セカンドプロローグ

4、上松ゆりかのジト目

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