番外編、鹿野健太

「あ、ちょっと!?おい!?」


鹿野という男から名乗るように催促されたが、面倒だったので背中を向けて、虐めを止めに行くことを優先する。

そのまま本日2度目のチンピラ成敗であるが、竹本については弱すぎて話にならなかった。

残り1ヶ月前後で多分首吊って死んでる。

そんなわけでギフトを使うという女の子を助けた。


「大丈夫かい?」

「は、はい……。あ、ありがとうございます!」


緊張したように赤い顔で頭を下げる青髪の女の子。

「いいよ、いいよ」と謙遜しながら、彼女のプライベートに踏み込んで侵食していく。


「名前は?」

「し、島咲碧です!わ、私も名前を聞いて良いですか!?」

「明智秀頼だよ」

「す、素敵な名前ですね!明智さん、よろしくお願いいたします!」

「……あぁ」


…………なんかガチ恋されたってのが伝わってくる。

バカだなこの女。

俺は別に島咲碧に興味なんかない。

関心があるのは、神からの贈り物ギフト




それから、数日をかけながらその面白いギフトの内容を聞き出していった。

『死んだ双子の精神を身体に宿す』ギフト。

そんな特殊なギフトもあるのかと、自分とは違う方向性のギフトに歓喜をした。

俺のギフトへの探求心は満たされていった。




「秀頼兄ちゃん!ミドリもお姉ちゃんも秀頼兄ちゃんが好きだよ!大好き!」

「ありがとう、ミドリちゃん」


良い人間を演じながら、彼女たちに対して試してみたいことが浮かんでいく。

ただ、それを試すには時間が足りなかった。


「ミドリとお姉ちゃん、もう少しで転校しちゃうんだ……。秀頼兄ちゃんから離れたくないよぉ……。離れたくない……」

「大丈夫だよミドリちゃん。俺と君たちは運命の相手だから。絶対また会えるよ」

「本当に?」

「あぁ。君たちは高校になったらギフトアカデミーに通うことになるだろ。だから、俺もミドリちゃん達に会いにギフトアカデミーに行くよ。それまで、またな」


彼女らに対して、誠実な男であり続けた。

彼女たちのギフトで試したいことがある。

それだけの目的を未来に託し、彼女らと数年の別れをすることになる。


絶対に島咲碧は大人になったら良い具合に成長し、男なら憧れるような女になるだろう。

──そんな彼女を、俺はぐちゃぐちゃに壊してやりたい。













─────







「おい、秀頼」

「うるせぇ……。女の大声すら聞きたくねぇのに、男の大声なんかもっと聞きたくねぇよ。男は大声を出せないように人間は遺伝子を組み換えるべきだね」

「わけわかんねぇこと言ってんじゃねぇって!」

「マジでうるさいから、カノケンは黙って」

「カノケン言うな」


島咲碧を竹本から助けた以降、鹿野健太という奴に付きまとわれることになる。

ギフトも使えない羽虫程度の存在だ。

だが、なんか奴に気に入られたらしくタケル並みにお節介な男として日常に踏み込んできた。


「お前、2組の後藤をボッコボコに殴ったみたいだな!?何やってんだよ!?」

「けっ。タケル殴ってきたのはあっちからだっつーの。やられたら10倍返しでやり返す」

「お前って奴は……。やり過ぎなんだよ!」

「どうせ、誰も俺には逆らえないんだよ。例え、この国の国王であってもな」

「だから安易にギフト使うなよ。お前は優しい奴なんだからさ……」

「きめぇ」


何が優しい奴だよ。

鹿野とは高校になってもたまにつるむ仲になった。

知り合い以上、友達未満くらいの認識である。


「…………」


十文字タケルも、津軽円も、鹿野健太も本当にバカばっかり……。

優しいだの、良い奴だの、根は真面目だのわけわかんねぇ評価をくだしてきやがる。

これが絵美や、鳥籠女とかヨル・ヒルであるなら目が節穴とでも批判するであろうし、全然間違ってない。


「なぁ、秀頼。今からでも真面目に生きないか?ギフトなんかの汚い力使わないでよ……」

「俺はいつだって真面目だよ。ギフトが汚い?はっ、俺が駆使出来る力はすべて俺の力だよ」


今更、ギフトを失うことの方が怖い。

俺は人を信じない。

ギフトで操った人じゃないと信じられない。

ギフト無しで惨めな人生に戻る方が、よっぽど怖い。


「俺は……、お前にはもっと普通の生き方をして欲しい……。お前はスペック高いんだからさ、たくさんの人に囲まれて……。そんな輪の中心にお前がいるんだよ」


たくさんの人に囲まれた人生?

輪の中心?

なれるわけないだろ、こんな俺がさ。


「女も周りにたくさんいるんだよ!抱くだけの仲じゃない、もっと好かれて愛されるような」

「…………はいはい」

「ギフトなんかに頼らなくても、そんな太陽みたいな奴になれるんだよ」

「きっしょ、死ね」


鹿野の妄言が激しくて気持ち悪い。

反射的にギフト使って【死ね】と言ってしまうほどに……。



………………そういや、こいつにギフト使ったこと無かったな。

タケルも、円も、こいつも……。

ギフト使ったことないのか……。



「駄目だよ。……結局、俺はどこ行っても嫌われる。そういう人間なんだよ」


だから、俺はギフトを捨てられない。


「お前は……もっと凄い奴なんだって……、友達として自慢させてくれよ……」

「…………」


ごめん。

別に鹿野は友達じゃねーんだわ。











【クズゲスSIDE】










「おい、聞いてるかマイフレンド秀頼!」

「聞いてるよー。あ、咲夜からライン来た」

「女はな、腕と足で良い女かどうかわかるんだぞ!」

「あぁ、腋は良いよね。あ、山本からライン来た」

「腋なんかの話はしてねぇだろ!」

とはなんだ!なんかとは!…………あ、ゆりかからライン来た」


なんか知らんが俺は鹿野と一緒にミャクドナルドで、ポテトをかじりながら良い女談義を繰り広げられていた。

鹿野から、『彼女欲しい!』という議題から『彼女にしたい良い女』談義が派生していった。


「てか、ライン来すぎじゃね!?」

「そんなことなくね?……あ、スタヴァの姉ちゃんからライン来た」

「なんでスタヴァの姉ちゃんと連絡先交換してんだよ!あの人、腕がキレイだよなー」

「いや、あの姉ちゃんはえくぼが素敵……。あ、美鈴からライン来た」

「お前マジでいい加減にしてくれ!男からも女からもモテて!太陽かなんかなの!?」

「褒めすぎ草。あ、和からライン来た」

「かぁぁぁ!こうなったら秀頼のライン荒らしてやる」

「カノケン、スタンプ送り過ぎて草。あ、楓さんからライン来た」

「カノケンって呼ぶな!なんなんだよこいつ……。人に好かれるギフトでも持ってんのかよ」

「持ってねーよ。あ、エイエンちゃんからライン来た」

「お前凄すぎなんだよ……。秀頼がマイフレンドって自慢して良い?」

「その自慢はなんの価値あんだよ。あ、達裄さんからライン来た」


タケルほどではないが、そこそこ長い付き合いのある鹿野とも遠慮が無くなってきたなと思ってしまう。

一緒のクラスになったことがない同学年では1番仲が良い奴かもしれない。


「俺もたくさんの奴からライン欲しい……。あ、俺にもライン来た!?俺の時代到来だな」

「ラインくらいなら俺がいくらでも送るよ」

「ラインの相手お前かよ!ぬか喜びさせやがってぇぇぇ!こうなったら本格的に荒らす!」

「かかって来い!」

「フ●ックスのアピール真似しやがって!」


理沙からの来たラインの通知が来ながら、鹿野と俺でお互いのライン荒らし合戦が始まるのであった。

たまには珍しい相手とレスバをするのも楽しい日であった。













鹿野の原作世界は、秀頼の友達?でした。

ただ、秀頼からは友達扱いされていませんでしたが、ツンデレなだけです。


原作秀頼が、島咲碧とミドリのギフトにやりたかったことは、いずれ公開します。




クズゲス世界では、タケルや山本らよりは親友というより、悪友に近い関係。

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