13、エニアのアイス
「アイスうまうまー」
『アイスくはくはー』
「いや、どういうこと!?」
俺の真似をしながらアイスの感想らしきものを口にしながら和んでいた。
ヒャーゲンは高くて中々手が出せるものではない。
しかも、スーパーではなくコンビニで買ったという!
太っ腹なエニアに神様の器を見た!
「というかお前、どうやって稼いでるの?」
『クハッ?ギフトを使えればいくらでも稼げるが?例えば『黒幕概念』のような架空の人物の姿を分身させてバイトさせたり、メェルカリ使ったり……。色々じゃ』
「え?労働なの?」
『労働・経営・投資、なんでもするぞ』
「…………」
資本家はしないのだろうか?
やっぱり神は規格外である。
『ギフトは生活を豊かにする。ホモサピエンスとして進化が止まった人間に対し、新しい進化をもたらした。不幸になる奴なんか知らん』
「そう割り切れない奴もいるってことだよ」
ゆりかやヨル、ギフト狩りは現に復讐に走るほどに追い詰められている。
『電子レンジに猫を入れて爆発した、スマホを使って視力が低下した。便利な道具にもそのような事故があろう。ギフトと同じではないか?便利な力故の代償。ギフトだけ非難される覚えはない』
「使える人間、使えない人間がいる不平等が起こるんだよ」
『クハッ!金持ちか、貧乏に生まれるか!不平等自体昔からある!それが1つ増えただけではないか!』
「ギフトは努力じゃどうしようもないじゃないか……。やめよう、平行線だ……」
アイスが不味くなる。
いくらエニアと話すのが楽しくても、やっぱりわかり合えないのを痛感するだけで辛くなる。
『クハッ、クハッ。そうだな、平行線は交わらないのであったな』
俺に前世を持ちながら、織田みたいに原作を知らない状態で明智秀頼に転生したら、逆にエニアに共感していた未来があったかもしれない。
運命は酷いくらいに残酷だ。
『クハッ、アイス一口交換じゃ』
「は?あぁ、良いよ」
『貧相ミルクは意外にも初めてじゃな』
「バニラだよっ!」
エニアのリッチミルクを手に取り、手が止まる。
…………全面スプーンですくった跡がある。
真ん中くらいまでまんべんなく食い散らかされている。
俺のアイスの食べ方は、1箇所アイスをすくったところから底まで食べていく食べ方なので終盤までアイスの上面が残っている。
エニアもそういう食べ方だと思っていたから、どこにスプーンをすくうのか、困惑する。
どこすくっても関節キスになっちまう……。
『食べないのか、明智秀頼?』
「た、食べにくい……」
『風邪で食べにくいか。ふむ』
「あ……」
エニアが自分のアイスを取り上げる。
同時に俺のスプーンも持っていかれた。
「ちょっと!?スプーン間違えてる」と口にした時だ。
『クハッ!口を開け』
「え?」
『神が直々に食べさせてやる。ほら、口。あーんと開け』
「…………あーん」
『クハッ』
俺の口にアイスを放り込む。
色んな意味で恥ずかしさが込み上げる。
こんなラブコメシーン、明智秀頼に不釣り合いじゃないか?
『クハッ!やっぱり貧相ミルクは味が薄くて叶わん。リッチが至高よのー』
ベッドに座っている足をバタバタさせながらクハクハと笑っている。
あまりにも無邪気過ぎて意識してる自分が恥ずかしくなる。
俺にバニラアイスが返される。
全然味がわからなかったリッチミルクがどんな味だったのかを想像しながらバニラアイスをすくおうとした時だ。
(…………お前が食べていた箇所からスプーンの跡があるな)
アイスの量は減っているのに、まさか俺が口にしていないところにはスプーンの跡がないまっさらな状態であった。
しかし、俺がすくっていた場所を上書きする形で、エニアのスプーンが抉った跡がある。
どういう神経してんだこいつ……。
俺が困っているのに気付かぬまま、楽しそうにアイスの味を楽しんでいる様子だった。
わかんない!
エニアがわかんねぇよぉぉぉ!
『おい、明智秀頼』
「ちーん。死んでます……」
『どうしたお前!?』
アイスを食べて、熱がぶり返した……。
多分朝より10度ぐらいは体温が上がった気がする……(体感)。
そのままベッドで座りながら死にかける。
『そういえば病人だったか。クハッ、おもしろ!髪とかいじっちゃお』
ぴろぴろと前髪を数回だけ弄り、満足したように鼻息を上げた。
『ではな、神は帰還する。これから大事な部活の打ち合わせがあるのでな。クハッ、早く良くなり、神とチェスを楽しもうぞ』
アイスとスプーンを放置したエニアがそのまま瞬間移動して消えてしまう。
広くなったベッドにペタンと倒れ込む。
治りかけた熱が、本当にぶり返したようだった。
あ、悪魔かぁぁぁ!
あのエニア野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
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