7、島咲碧
「明智さんはやっぱり素敵です。……また会えて嬉しいです」
「うん。君も大きくなったね」
少なくとも美月と美鈴が思っていた通り、小学生からあんまり姿が変わらない絵美よりは変化していると思う。
身長は伸びてるし、出るとこは出てる。
それに、特徴的な姫カットな青い髪は彼女のトレードマークである。
本物の色編のヒロイン。
原作の彼女の役割は……、明智秀頼に恩がある。
そんな秀頼に憧れていて……、結果棚からぼた餅的にオモチャにされる。
彼女もまた、憐れな末路を辿るヒロインである。
宮村永遠でこそ、ぼかされていたが……。
彼女は本気で秀頼の食い物にされていて、ファンからは中古扱いされてキャラクター人気はそんなに高くない。
不人気の原因の8割は処●厨からである。
宮村永遠も確かに秀頼に襲われた描写はあるけれど、明言されていない。
というかされてたまるか!
永遠ちゃんは無垢な姿のままタケルとくっついたに決まってる!
それに対し、島咲碧はガッツリそういう描写がある。
可愛いキャラクターではあるんだけどね。
「明智さんもこんなに大きくなって……。本当にあなたは昔から素敵で、私の高見の山です」
「それは流石に褒めすぎだよ」
この子は、俺が好きっていうより、明智秀頼が好きなんだろうなというのがよく伝わる。
原作補正が強く働き、大好き・尊敬という感情にバフがかかる。
そんな認識だ。
「あなたに会えなくて私の人生は灰色になって……、退屈な人生でした。話かけたくても、私なんかが明智さんに話かけるのもおこがましくて」
「いや、戦国時代じゃないんだから身分差ないよ!?」
「嬉しい……。明智さんが私ごときと同じ立場と言ってくださるなんて」
「同じ立場の学生だからね!」
小学生の時の知り合いではあるのだが、すれ違ったことはあれど、ガチで喋ったことは実はない。
彼女の妹とは数回絡んだことはあるが……、それくらいである。
あの時は少しでも原作と剥離を生み出そうと円と話し合っていた時だからな。
だからこそ、原作補正を強く感じる。
だって、そもそも俺は彼女に名乗ったことすらない。
距離感がガチでわからない。
初対面なのに、初対面じゃないとか扱いがわからない!
いや、逆か?
初対面じゃないのに、初対面!
そんな人の扱い方をググりたい。
(変わりに俺がググってやるよ。……あ、俺に実態ないじゃん!)
タケル以上の無能がいたよ。
「明智さんとこんなに会話が出来て楽しいです!」
「そ、そうかな」
俺、なんか面白いこと言ったっけ?
「明智さん、神ぃぃ!」
「神?神ならさっき教室に戻ったよ」
「ううっ。緊張している私にそんな面白いジョークまで……。最高」
「?」
(なんかこいつあれだな。お前そっくりだな)
中の人の呟きに『マジで?どの辺?』と聞き返す。
すると、ニヤニヤ笑いながら指摘をする。
(宮村永遠とかスタチャに対する信者っぷりが。お前よく崇拝してるじゃん。お前そっくり)
…………。
……………………。
………………………………。
マジか!?
推しに対する気持ちなのか、これ!
「明智さんと会話出来たこと、人生の宝物です」
「あ、ありがとう」
確かに。
推しを語る俺みたいに目がキラキラしている。
推しを前にする俺みたいに涙目である。
いや、なんで!?
中の人の指摘に共感してしまった俺は、根本的なところで疑問が溢れだす。
大丈夫か?
この秀頼信者っぷりで、タケルと碧がくっ付くルートあるか?
………………あるな。
大丈夫だ。
原作を信じろ。
桜祭を信じろ。
ファーストは狂ったが、セカンドなら大丈夫。
これからタケルちゃんが逆転ホームランするから。
「あ、明智さんは最近お元気ですか」と聞き取れた瞬間であった。
学校のチャイムが鳴り響く。
やべっ、休み時間が終わる5分前の鐘である。
「そろそろ戻らないといけないですね……、残念です……」
「そうだね……。時間だね」
個人的には原作ヒロイン全員好きなので、こうして初対面のヒロインとお別れの時間になるのは悲しいものである。
彼女も露骨にシュンとして残念そうだ。
「そ、そうだ!木瀬さんに連絡先交換したみたいに私も明智さんの連絡先欲しいです!」
「い、良いけど」
「わぁ!本当ですか!?ありがとうございます!」
木瀬って誰?と思ったが、広末のことか。
完全に木瀬さんを広末と認識してしまっていた。
危ない危ない。
もし広末に会うことがあったら木瀬さんと間違えないようにしないとな。
休憩時間が終わらないように気を付けるために歩きながら連絡先を交換する。
最近、学校中の連絡先をもらってばかりで顔と名前が一致してない人が多いから気を付けないとな。
特に一緒のクラスになったことがない鹿野以外の野郎は顕著。
『島咲碧』の3文字が新しくラインに追加された。
「わぁぁぁ!明智さんの連絡先だぁ!このスマホ、一生の宝物にしますね!」
「多分その内、スマホ壊れますよ」
そんなこんなで分かれ道になり、島咲さんと別れた。
なんか面白くてインパクトのある子だったなぁという感想が第一に来る。
原作ではタケルと島咲さんのやり取りの描写がほとんどで、秀頼と島咲さんの絡みがわりとテキトーだった気がする。
(ギャルゲーならむしろ当然だよ。なんで竿役の描写までガッツリしないといけないんだよ)
いつの間にか中の秀頼も立派なギャルゲーマーになって嬉しいやら、悲しいやら……。
ちょっと幻滅するし、だけども歓喜している自分もいる。
(お前が家にいる時間のほとんどがギャルゲーに費やしているから覚えるんだろうがぁ!バァァカ!)
そういう煽りやめよ?
それより、好きなギャルゲー何よ?
(また君とか、キャラメルクリームとか、君と明日とか、その辺のやつ)
あらぁ、純愛モノばっかりじゃないですかぁ!
絶対に鏡を見ながらゲームをプレイしてはいけない甘々なやつばっかりじゃん。
(ドスケベティーチャーとか、変態マジックとか過激派なお前よりよっぽどマシだろ)
は?
ドスケベティーチャー舐めんなや。
ギャルゲーの好みはまだ一致していないらしい。
大丈夫、俺もギャルゲー初心者の時はライトで有名どころからはじめたから。
そういうのに飽きてきてからドエロいのとか、燃えゲー、鬱ゲーとかそういう風に分岐していく。
中の人のギャルゲーマースキルがどこまでいくのか、成長が楽しみである。
†
Q.結局、原作の宮村永遠って中古?
A.鬼畜なことはしてます。
というか、鳥籠の少女は秀頼にはじめてを捧げるのが運命みたいなキャラクターなので……。
察してください。
第6章 偽りのアイドル
番外編、鳥籠破壊の後日談
原作の半分くらいは、秀頼の女からタケルが寝取ることが多いような気がしてきた。
そんなギャルゲー。
病的な秀頼信者?秀頼ファン?なヒロイン・島咲碧が登場です!
一応、これまで登場しなかった理由があるってプロットに書かれてました!
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