6、十文字理沙は止められる

『では、2つ目の質問に行くよ』

『なんでも来いや!』

『あと、歌うの禁止で』

『え……?』


千姫に刺された先読みで秀頼が固まる。

『この世の終わりみたいな顔してる』とカメラマンの的確な突っ込みが画面外から聞こえてきた。


『では、次のインタビュー。あたしはどんな可愛い化粧品を使っているでしょう?ほらほら、ヨリくぅーん?わかる?』


ぴっと動画を止める千姫。

周りの面々に秀頼がなんて答えたと思う?と問いかける。

そして真っ先に咲夜とゆりかが手を上げ、あまりに同時だったので発言も一緒にどうぞと促す。


「「知るかボケ!」」

「あ、絶対これだわ」

「さぁぁて、これはぁ……」


円も(明智君なら言いそう)とうんうんと頷く。


「残念!」

「う、ウチが外しただと……!?」

「谷パイ、さっきも外してたじゃないですか」


咲夜の衝撃に震えたところに、和の無慈悲な突っ込みが飛んできた。


「さぁさぁ?わかる人いる?」

「なら、私が行きます」

「お?来たな、可愛い永遠ちゃん!さぁ、可愛い回答をどうぞ!」

「ヨルちゃんとゆりかちゃんと同じ化粧品」

「うわ、ドンピシャだよ。大正解」


千姫が参ったとばかりに惜しみない拍手を送り、再生ボタンを押す。






『は?千姫の化粧品?知るかボケ!』

『ヨリ君ひどいー!』

『でも、なんとなくヨルとゆりかと同じやつ使ってんじゃね?匂いがなんとなく2人に似てる』

『え!?そんなのわかるの!?』

『無人島で生き抜くには鼻も良くないと死ぬんだよ。あと1ヶ月くらい前かな?絵美と永遠ちゃんも同じやつ使ってた気がするんだよなー。友達同士で化粧品買うってある?』

『何回かは』

『尊い……』

『泣くなよ……、ヨリ君は大袈裟だなぁ。どんだけみんなが大好きなんだよ……』

『よっぽど素っ気ない1日が辛かったらしいな……』


と、咲夜とゆりかの答えもあながち間違いではなかったことも明かされたインタビュー内容だった。


「あ、あたしの匂い覚えられてるのかよ」

「ち、ちょっと千姫。匂いかがせて……」


ヨルとゆりかが赤くなりながらどぎまぎしていた。


「永遠……」

「絵美……」

「同じの買ったのいつだっけ?」

「1ヶ月くらい前です……」

「…………尊いだって」

「…………に、ニヤニヤが止まらないです」


口元が多分気持ち悪いくなっているのを自覚した2人は口元を抑えてニヤニヤを見られないようにして、目を瞑っていた。


「ちょ、ちょっと待ってください!?なんか流されてますけど絵美先輩はどうしてお兄ちゃんが歌うってわかったんですか!?」

「え?だって昔、小学校入る前かな?わたしがお母さんに怒られて秀頼君の家に逃げた時に、頭撫でながらア●マパンマンたいそうを歌ってくれたからですよ」

「え?ズルくないですか!?その思い出!?」

「秀頼君、ア●パンマンは卒業したからあんまり見ないみたいですが、曲は好きって言ってました」


みんなが(しらねぇぇぇ!)と絵美の秀頼情報に突っ込んだのだった。


「…………パンマンは君さー。良いな」

「あ、お姉様がスマホを取り出した……。レクォチョォクで曲を購入するつもりですね」

「美月さん……」

「ちょ、勝手にわたくしの同行を先読みするな!?」


美鈴と遥香がジト目で美月の行動の予想が出来てしまい、(単純……)と純粋無垢な美月に突っ込んでいた。


「はいはい。ヨリ君好きなのわかってるから続きに行きますよ」


騒ぎだした面々を制するように、手をパンパンと叩き自分に注目させる。

千姫は「次の出題です」と、続けた。


「西軍で1番好きな人と、1番嫌いな人は誰でしょうか?」

「!?」

「!?」

「!?」


出題した途端の動きがみんな俊敏だった。

ガバッと全員が食いつくような視線に千姫が「テヘヘ、照れちゃう」と可愛くおちゃらける。


「千姫……、お前本気で秀頼にその質問したのか?」

「本気だよー。タケルちゃんも証人だし。タケルちゃんこの場に居ないけど」

「兄さんならこの質問の答えを知っているわけね」


理沙がスマホを取り出そうとするが、「ダメだ、タケルにラインするな!」と咲夜に止められてしまう。

不満そうな顔の理沙に「当たり前だろ……」とヨルが呆れた声を出す。


「ちな……、因みになんだが全員とかそういうのは……」

「夢見すぎですよ美鈴ちゃん。きちんと名指しで好きな人と嫌いな人を宣言してますから」


誰だ?

誰なのだ?

西軍のみんなは焦った顔で疑心暗鬼のように全員を見ていく。

好きと嫌い。


果たして、秀頼は誰を選んだのだろうか……?

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