5、佐々木絵美は自信満々

秀頼のインタビューが終わった午後、西軍全員が美月と美鈴の暮らすマンションの一室に集まっていた。

秀頼に素っ気なくしていた女の集まりである。


そして、画面が大きいテレビを前に自分の父が買ったビデオカメラを配線で繋げていく理沙。

数秒動かすとタケルの話す声がする。

「よし、兄さんの声がします。ミスがなくてなによりです」とこの場には不在なドジであるタケルに対し一言漏らす。


「じゃあ、やっていきましょう!ヨリ君王!」

「…………ちょっと待て?秀頼って王様なのか?」

「ミッキーは真顔で何言ってんの!?」

「いや、ヨリ君王……。つまり秀頼王ってことだろ?秀頼は王様だったのか?」

「……お姉様、恥ずかしいからやめて」

「ちょ!?なんなんだ美鈴!?説明をしろ千姫!?」


口を開くなと美鈴にジェスチャーをされる美月に「え?なんで?」と美月は理解していないことを隠さなかった。


「あぁ、ミッキーは通じなかったのね。ゆりちん、説明よろ」

「あぁ、明智は王様じゃなくて師匠だ」

「あ、理解してない奴2人目炙り出したぞ」

「疎いねぇ君たち……」


千姫の指摘に美月とゆりかがシュンと腰が低くなる。

『ヨリ君王って何?』と意味を理解出来ないけど、わかっている風にドヤ顔をしている円であった。

因みに妹の和だけ、姉の内心汗がダラダラなのを察していたが、姉の名誉のために口にしない姉思いの妹だった。


「えっと……、つまりですね、お兄ちゃんを誰が1番理解しているかを試すゲームみたいなものですよ」


星子が苦笑いをしながら美月とゆりかをフォローする。

これでも芸能界にいて、少しはそういう知識がある星子だった。


「なんでそれが師匠を王にするのだ?」

「そこまでは知りませんが……。ちょっと前にユーチューブで流行ってたんですよ」

「へぇ。ユーチューブってそういうのなのか」

「星子は博士だな!ゆりか王はないのか?」

「本当にわかってんのかな?」


美月とゆりかの反応に戸惑いながらも、一応仕切っていく千姫。


「それでは、ヨリ君がインタビューでなんと答えたかクイズにするよ!第1問、もし『挫けそうな人』がいたらなんて声を掛ける?」

「なるほど、クイズか!わかった!」

「はい、ゆりちん」

「師匠のことだ。『ドンマイって背中を叩きながら励ます』って言うに違いない」

「ちがいまーす」

「何!?」


ゆりかの回答に✕マークを出す。

半分くらいが『秀頼ならあり得そう』と考えていただけに、ゆりかの反応と同じになっていた。


「ならウチが」

「はい!サクサククッキー!」

「秀頼のことだ。『黙って見守り、助けを求められたら助ける』 。ゆりか、それがあいつのスタンスだ」

「ぐぬぬ」

「サクサククッキーはドヤ顔してますが、かすってもいません」

「なんだと!?」


どっちもありそうだなと考えていた者らは、頭を悩ませることになる。


「因みにみんな何回でも回答する権利があるのでゆりちんもサクサククッキーもまだまだ考えてみてね」

「無限コンティニュー制か。なら早い者勝ちということか」

「なら、はい!デメリットがないならボクが!」

「はい、はるちん」

「き、き、キスをして慰めるなんて……良いな」

「ただの願望じゃん」

「わ、ワンチャンありかなって……」

「全然あり」


絵美をはじめ、円や永遠もうんうんと頷いていた。


「どう?ミッキー?答えわかった?」

「え?司会から振られる制度とかあるのか?……な、なら『挫けた時はオロォナミンシィィだ』とか?」

「別にヨリ君のCM撮影してるわけじゃないんよ……」

「そ、そうだったな……」


千姫からやんわり否定され、1番挫けそうな表情を浮かべる美月であった。

「みんな、全然ヨリ君をわかってないねー」と司会が煽りだす。


「永遠ちゃん辺りいってみる?」

「え?え?私?…………『挫けたって良いんだよ』」

「お!?からのー?」

「え!?行けてます!?行けてます!?えと、えっと……『俺がエイエンちゃんを支えるから』」

「やっぱり願望じゃん。あと、別に最初から外れてます」

「じゃあ続きを求めようとしないでくださいよ!なんで『惜しい』って感じの声出すんですか!」


星子や和も自分の予想は立てていたが、近い人の意見が出て外れる度に自信を無くしていく。

咲夜が2個目の回答を出すが、やはりハズレだった。

円も理沙も美鈴も、もうわかんないって顔で苦しんでいた時だ。


「はい」


すっと絵美が手を上げる。

「はい、エミリー!」と千姫が絵美に回答を求めた。


「歌った」

「え、絵美さん?」


正気を疑うように絵美の顔色を伺う理沙。

しかし、彼女は自信満々であった。


「正解!もうこんなん当たりようがないから正解にしちゃう」

「え?」

「まずはわたしが1本先取です」


そう言って、千姫がビデオカメラを再生する。






『ヨリ君に質問!もし『挫けそうな人』がいたらなんて声を掛ける?』

『……もし自信を無くして挫けそうになったら』

『うんうん』

『良いことだけ、良いことだけ、思い出せ』

『うん?』


それから秀頼は口ずさみながら歌っていく。

千姫と、カメラに映っていないが撮影していたタケルはポカーンとしていた。


『ア●パンマンは君さ、元気を出して』

『…………タケルちゃん』

『2番歌おうとしたら止めよう』


タケルの先読み通り、1番を歌いきり2番に行こうとしたらストップが入る。


『え?まだ挫けている人が吹っ切れてないだろ?納得するまで歌って聞かせるのに』

『ア●パンマンたいそう全部聞く時間があるほど昼休みは長くないんだよ。次の質問いくから!』

『秀頼……、お前のその回答はマジなんか?』

『え?』

『タケルちゃん……。ヨリ君の可愛いカラオケはマジっぽいよ』


と、千姫が不満そうな秀頼に文句を言わせないまま、次の質問を繰り出すのだった。

当然、それが2問目のヨリ君王の問題になる。

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