6、マスターは見透かす

「占い師か……。そういえば達裄君のお母さんが有名な占い師だったかな」

「え?達裄さんのお母さん!?」


突然マスターの口から達裄さんのお母さんという単語が出て復唱してしまう。

あの人の妹がアイドルで、姉がギャルマスターで、母親が占い師と謎過ぎる家族である。

まぁ、1番謎なのが本人なのもまた意味がわかんないと思う。

達裄さんを掘り下げる度に謎が出てくるのをやめて欲しい……。


「彼の母親は有名だから一般ピーポーな僕らは相手にしてもらえないよ。そもそも達裄君も1年近く会ったことないらしいし」

「なんだ、そうなのか……」


占い師とか関係なく達裄さんの母親というだけで会話をしてみたかったので残念である。


「あとはこの店の常連客に売れない占い師がいるよ」

「売れない占い師……」


達裄さんの母親である有名な占い師から一変、なんか不安なモノが過る。


「売れない喫茶店に売れない占い師が通うのか。傷の舐め合いってやつだな」

「君はうるさいよ」


咲夜が父親に叱られていたが、追撃しない辺り優しい父親だと思う。

前世の父親はやたら強い人だったから、俺が余計なことを口にしたら半日から数日は機嫌が悪くなる人だった。


「公式サイトあるからPCで見てみると良いよ」

「よし、ウチがPC持ってくる!」


やたら俊敏な動きをする咲夜が喫茶店と自宅の狭間を行き来して消えていく。


「あ……、まだ勉強終わってない……」

「…………」


永遠ちゃんが真っ白なテキストに気付き、『しまった!』という態度である。

やたら俊敏な動きだったのは単にエスケープ目的だったようである。

それから2分ほどで「パソコン持ってきたぞ!」とパソコンを片手にノリノリで帰ってきた。

もう勉強する気がないのを悟ったのか永遠ちゃんは「やれやれ」と苦笑いしながら勉強道具を片付ける。

「みんな咲夜に甘いのな……」と呆れたヨルがぼそっと呟いていた。


絵美が「なんて店ですか?」と尋ねると、「『暗黒真珠佐山』って名前」とマスターが返事をはして、咲夜がタイピングをはじめた。

絵美、ヨルも気になるのか咲夜のノートパソコンのモニターの前に集まった。

俺が占ってもらいたい話なのに、なぜか女子らが集まって、俺が混ざるには密になるくらいに群がっていた。


「女の子って占いが好きだよね。ウチの奥さんもよく風水がどうこう言ってたっけ」

「風水とか意識してこの人の空き具合なのか?」

「はは……。僕がコーヒーを作りたくて道楽でやってるみたいな店だからね。これでも最近は右肩上がりで客は増えているんだよ」

「確かに俺がガキの時よりかは客は増えている気がする……」


スタチャ効果や口コミ効果もあるらしい。

最近はSNSや公式サイトも立ち上げ予定らしい。


「常連客も増えてるからって拗ねるなよ。僕と秀頼君の関係は変わんねーよ」

「マスターを対象に拗ねたことねーわ……」

「たまに僕が忙しくて、君に構ってない時眉が少し鋭いよね」

「……別にそんなことねーけど?」

「だからこうやって人が来なくて僕が暇な時を見計らって店に来るんだよね。わかってるよ」

「……偶然だけど?」

「あはは。可愛いよね君って。ひねくれた達裄君そっくり」

「…………」


見透かした様なマスターの言動や表情が妙に居心地が悪い。

女性陣へ耳を傾けると、「凄い雰囲気ある店だな!」とヨルのはしゃいだ声がする。

「絵美、どいてくれ」と咲夜が困惑している声もしてきてよっぽど夢中のようだった。


「でもたまにわけのわかんないお客さんも来たりするんだよね」

「わけのわかんないお客さん?わけわかんねーよ」


マスターがわけわかんない話を振ってきて、意識が彼に戻る。

スタチャ効果や口コミ以外で何かあるということなのか?

それとも達裄さんが裏でなんかしているのか?と考えていた時であった。


──カランカラン。

来客を告げるベルが鳴る。

店を閉めているわけではないので、こうやってマスターとの雑談中に来客するのだって珍しくない。

「いらっしゃいませ」と話の途中であったマスターがお客さんの対応をする。


「あの……、すみません……」

「?」


若い学生の女の子が恐縮といった感じで、挙動不審にキョロキョロと店を見回したりしていた。

怪しい動きに不審者を疑うが、不審者にしては俺より若く見える。


「ここって、『悪人なのに凡人で生まれてしまいました……』の小説で度々登場する喫茶店の舞台である『サンクチュアリ』の元ネタってここですよね!?うわぁ、凄い……」

「う、うん。そ、そうだね……」

「…………」


鼻息を荒くして「『サンクチュアリ』に来れて感動します!」と女性がマスターに黄色い声を上げる。

それを苦笑いをしながらマスターが手を振る。


『悪人なのに凡人で生まれてしまいました……』って確か和が書いてる小説だったような……。

読んでないけど、頭が痛くなった……。


「マスターさんだぁ……。感激ぃ……」

「…………ん!?」


コーヒーを吹きそうになった。

『悲しみの連鎖を断ち切り』ファイナルシーズンにて、『姿さえ知らない復讐相手の探し人』である筈のシリアスなヒロインが堂々と現れたのだから……。











もう、ほとんどのヒロインの名前が出たり、登場したでしょうか。

名前しか決まってないヒロインとか居たりしますが、順番に進めていきます。

名前が出てないヒロインは今回登場した子と、ファイナルシーズンであと1人。

セカンドシーズンのヒロインは全員公開しています。




限定近況ノート公開しました。

3、明智秀頼の誰よりの憧れ


秀頼と永遠ちゃんによるイチャイチャはじめました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る