番外編、ギャルゲーのような人生

前世である豊臣光秀が主人公の番外編になります。







『豊臣君はないよねぇー!魅力が一切ない感じ』

『わかるー。なんてーか彼にはときめかないよねー』

『男だけ群がるけど、女子は来ないタイプよね』


クラスの女子の会話が耳に届く。

俺がトイレで教室を留守にしている間にそんな俺の陰口が繰り広げられていたらしい。


──中学のある日、自分はモテない人間というのを知った……。







「はぁ……、ギャルゲーのような人生を送りたいぜ……」

「ギャルゲーをしている時点で無理じゃね!?」


クラスメートの森と一緒にケータイゲーム機で遊んでいた。

周りの野郎共はみんな『タイヤハンター』通称『タイハン』というゲームが熱狂的に盛り上がっているみたいである。

内容はシンプルでオープンワールドの世界に散らばる車やトラックなどから、ありとあらゆるタイヤを狩って廃車にしていくゲームらしい。


しかし、俺と森はタイハンには一切興味を示さず、昨日発売した『悲しみの連鎖を断ち切りファイナルシーズン』をプレイしていた。

因みにケータイゲームハード機とテレビゲームハード機の同時発売だったので両方購入済みである。


「やっぱり今回は乙葉と茜リストラっぽいな」

「公式サイトから存在抹消されてたからな」

「てか2人共前作で死んだやん。俺推しの茜リストラとか桜祭頭おかしいんじゃねーか?」

「いや、エイエンちゃんがいるだけで俺は満足だよ」

「セカンドでCGが1枚もない扱いだったがそれで良いのか……?」

「エイエンちゃんの立ち絵とボイスが存在するだけでどんなクソゲーでも買うんだよなぁ……」


それはそれとしてセカンドのアンケートで『次回作では宮村永遠の出番を最低50倍は増やしてください』と要望を書いたのだが、一切俺の意見が反映されてなくてイライラする。


「あっ!?でもこのタケルに褒められて照れて満更じゃない表情のエイエンちゃんの赤面顔の立ち絵新規じゃね!?」

「はぁ!?これずっと使い回してるやつだろ……」

「よく見ろ森!これまでの赤面時の赤い色が少し淡いだろ。それに赤い箇所が7ドット広い。あと、指の角度が3度違う」

「わかるわけねーだろうが!?」


新規の宮村永遠の照れ顔が出てきて俺はとても満足していた。


「エイエンちゃん攻略ルートなさそうだな……。マジ萎えるわ……。ただ、アリア様ヒロイン昇格で俺は嬉しいよ」


アリア様はセカンドの新キャラでは宮村永遠には及ばないでも、深森美月と同じくらいに気に入ったキャラクターだったのにルートがなくて発狂しそうになったものだ。

SNSでも『アリア様ヒロイン昇格希望』と盛り上がるくらいには人気キャラだった。


「アリアはどう見てもセカンドの扱いから温存ヒロインじゃん」

「絵美みたいにヒロインになれないパターンも覚悟してたからな」

「……絵美って誰だっけ?」

「秀頼の彼女の子。ファーストに出てたやん」

「え?いたっけ?全然覚えてねーよ」

「にわかかよお前……。詠美と似てる子」

「あぁ!あの空気か」


森が思い出したと声を出す。

そんな扱いするなよ……。

絵美は桜祭の純粋な被害者なのに……。


「お?バッドエンドNo.6『仮面の騎士から殺害エンド』引き当てたぜ」

「え!?なんで!?俺、ずっとバッドエンドNo.3の『ありきたりな共通バッドエンド』しか当たらないんだが……」

「選択肢を総当たりやめろっての」


仮面の騎士にタケルが殺害されたのでロードをし直す。

おそらくアリア様はルートロックされてるっぽいな。

次は絶対ルートロックされてると確信しているヨル寄りのバッドエンドを埋める作業にするか。


懐かしの理沙が画面に映って感激したりしながらゲームをやりこんでいく。


「…………」


はぁ……。

なんでこんなにゲームの主人公のタケルはモテるんだろうか……?

ヨルと夫婦漫才しているシーンを見て心が痛くなる。


中学時代にモテない自分に気付き、勉強に運動、剣道と磨いていった。

平凡だったあの頃から3年近く自分磨きを頑張ったが結局俺はモテることはなかった。


「豊臣先生、俺ギャルゲーの世界に転生したいっすよ……」

「現実見ようぜ森……」

「モテたいでござる……、モテたいでござる……」


人間、モテ気なんて存在しない。

俺は黙々とゲームをプレイしていた。





─────




「豊臣君……、豊臣君……、豊臣君……。好き好き好きぃ……」

「あんたは告白したら?」


親友の吉田に突っ込まれながら、来栖由美が豊臣光秀に熱い視線を送っていたのであった……。











以上、超短編でした。




次回、いつもの。

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