48、キャンプと女子会
『必ず許さない』
『今すぐお前の不祥事を晒す』
『この人でなし』
『どこにいても呪う』
『キツツキに目を抉られれれれ』
『娘がいつもあんたに呪いの言葉を吐く』
支離滅裂な文章がたくさんあるメール欄を見ながらため息を吐く男の声がする。
「なるほど……。複数のメールアドレスからの迷惑メール、脅迫文の郵送、それに身体に異変ね……」
「呪ってやるって書かれてあって……。腕に呪いを掛けたと脅迫されたら腕を挟まれ、肩に呪いを掛けたと脅迫されたら肩が外れ……。呪われているとしか思えない」
「なるほどねぇ……」
違うアドレスの脅迫メールを開くと、こちらも酷い文章が並んでいた。
『偽善者』
『あんたが卓郎を見殺しにしたことを忘れない。祟られろ』
『クズクズクズクズクズクズクズクズクズクズクズ』
『卓郎は髪を切り、恨みを込めました。私の髪も混ぜました。死ね』
『2週間以内に慰謝料を払え。でないとマスコミに流す』
『次は胸に呪いを施す』
この日、遠野達裄は戸籍上では父となっている伯父の知り合いの男性から相談を持ち掛けられていた。
そして、読むだけで気持ち悪くなってくるメールを読んで「うげぇ……」と嫌な気持ちを隠さなかった。
達裄の目の前に座っているのは50代で頭の皮膚が見えてしまい、年齢と見た目によるギャップがまったくない男性であった。
そして、ゴールデンタイムの番組に10回ほど出演したことのある名高い政治家であった。
その政治家の彼はどうも1ヶ月間続く異変に疑問を持ち、達裄に対して相談を持ち掛けていた。
「警察じゃなくて俺にこんな犯罪の悩みを相談する辺り、後ろめたい感じが凄いですよ」
「っ!?そ、それは……」
「別にあなたのことに深く干渉するつもりはありません」
『女性トラブルやスキャンダル辺りか?』と、既に達裄は察していた。
姉から面倒事を押し付けられたと嫌な気分になり、コーヒーと一緒に軽口もぐっと飲み込む。
「俺はただ、事件を解決させるだけですよ。それに犯人の目星は付いているんでしょ?」
「あぁ。……この女だ。この女が弱みと共にワシに脅迫をしてくる。遠野君、なるべく早急に始末して欲しい。こんな状態じゃあ枕を高くして寝れんよ!」
数枚の写真。
それに紙の資料が20枚ほど手渡された。
データではなく、紙で渡される理由は資料を読み次第燃やして捨てろということである。
「……、わかりましたよ」
達裄は紙を受け取りながらカバンに仕舞う。
彼の態度は人に恨まれているのはわかっているが、反省はしていない。
この男からはそんな態度が見え隠れしている。
達裄は別に軽蔑するわけでもなく、共感するわけでもない。
依頼人の男性への興味はほとんどない。
(2時間後に始まる番組に葉子が出るから早く帰りたい……)
リーフチャイルドである妹へ意識が持っていかれていた。
番組予約はしているが、リアルタイムで視聴しながらツイッターで反応を見て、盛り上がりを確認する。
複数の仕事が掛け持ちなのだ。
「1週間だ。1週間でこの女を捕まえるなり、なんなりして脅迫を終わらせろ」
「わかりました」
2週間後、依頼人の秘密をマスコミにばら蒔くと脅迫されている焦りが達裄に強く念を押していた。
「余裕っすよ」と言いながら達裄は立ち上がる。
「任せてください。この女は必ず始末してみせますよ」
何気ない依頼を受けた達裄。
そのままテレビ番組に間に合うことで軽い足取りで帰宅をするのであった。
「はー、なるほどねぇ……」
リーフチャイルドの映るテレビ番組が始まるのを待っている間、依頼人の資料を読み込む達裄。
「まぁ、俺が退治するのは楽だけどさ。……秀頼の修行にはちょうど良さそうだね」
時間があれば秀頼をキャンプに誘うかと考えるのであった。
まさかこの事件が、秀頼とタケルを襲う恐怖の死亡フラグに繋がるとはまだ誰も想像をしていなかったのである……。
─────
「今週は西軍メンバーで女子会をします」
それから数日後、西軍リーダーの絵美は決断を下す。
現在、唐突に2人の西軍メンバーが増えたことで、元々在籍していた彼女らは頭を悩ませていた。
当然、内容は秀頼に落ちる女の子の多さによるモノである。
「なんで西軍が出来上がって1ヶ月で4人も増えるの……?」
円は増えたメンバーである三島遥香、ヨル・ヒル、深森美鈴、深森美月の顔が思い浮かぶ。
奇しくもみんな原作キャラクターである
「ウチは秀頼が認められて嬉しいところもあるがな。やっぱりモテル男に恋をしたいものだ」
「呑気ですか!既に野球チームが出来るレベルの人数の多さだったのに、もうサッカーチームが出来る人数が集まったんですよ!?秀頼くぅぅん……」
咲夜の言葉を否定して突っ込みながら絵美は少し涙目になっていた……。
彼女の予定では中学時代には付き合っていて、高校時代では将来を約束する仲になっている未来を小学生の時から描いていたのに、何も達成されていないのだ。
恋愛に対して焦る気持ちが常にある。
「秀頼君と十文字君は遠野さんと週末にキャンプする予定みたいです。ならば、これを機にみんなで女子会しながらミーティングです」
女子会という名のミーティングという名の牽制する女らの集まりが始まろうとしていた。
「…………タケルに秀頼取られてないか?」
「咲夜……、変なこと言わないで」
「円、お前ちょっと動揺してるぞ」
「…………」
この場の絵美、円、咲夜の3人全員がタケルの独り勝ちを恐れるのであった……。
†
秀頼の死亡フラグキャンプ、秀頼の女共による女子会スタートです!
次回、男共のキャンプ始まります!
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