13、上松ゆりかは着替えたい
「師匠!修行です!修行をしましょう!」
次の日、やたら気合いの入ったゆりかに修行を誘われる。
修行を誘われるという単語をはじめて使ったが本当にそうとしか言いようがない。
「いや、俺は昨日修行したから」
「なら我も誘ってくださいよー」
昨夜に絵美と別れたあと、達裄さんと修行をしながらもボコボコにされ、今日は少し疲れ気味で眠たいくらいだ。
決して常にギャルゲーかスタチャ談義か沢村ヤマ談義をしている男ではないのだ。
「ししょー!ししょーのししょーが見たーい」
「俺の
そもそもなんでゆりかに師匠呼びされているのか、俺もよくわかってない。
「師匠が我にオススメする師匠候補は?」
「師匠が2回出てわかりにくい……。そうだな、…………アイリーンなんとかさんとか候補じゃないか?」
「いや、誰っ!?」
「そりゃあアイリーンなんとかさんといったら……」
…………。
「誰だろ?」
「変な人を候補に挙げないでくださいよ!?やっぱり我の師匠は秀頼が良いです!」
「呼び捨てにしたな?」
「ししょー!」
アイリーンなんとかさんとか3年前にすれ違っただけだからな……。
多分もう会うこともないだろうし、会いたくないし、会っても怖いし……。
「最近の師匠はそもそも我に修行をしてくれないじゃないですか!ねぇ、修行しよう?」
「…………」
タケルの家で無理矢理ラーメン食わせたくらいか?
三島のギフト制御とかの方がよっぽど修行といえるだろう。
「じゃあ、今日なんかする?」
「師匠!」
「わかった、わかったから!抱き付いてくるな!?」
もはや犬かなんかである。
意外と強いゆりかの抱擁を引き剥がしながら何をしようかと頭を悩ませる。
それから1日の授業が終わり、着替えをしに自宅に戻り、駅で合流。
ゆりかとの放課後修行がはじまるのであった……。
放課後デートより放課後修行の方が先に体験する人生とか嫌すぎるな……。
カーン!、カーン!と響き渡る打球音。
たまに達裄さんと修行という名で遊びに来るバッティングセンターに遊びに来た。
オープンしてまだ1年弱という最先端なバッティングを楽しめることで地元の人からは有名な場所になりつつあるところである。
「なんだこれは師匠……」
「ど、どうした……?不満か……?」
ゆりかが両手を拳にしてプルプルと震えている。
ヤバい、流石に修行をするつもりではなくて、遊びに来たという目論見がバレてしまったか……?
「楽しそうではないか!我、がんばる!」
「……おー、がんばれ」
取り越し苦労であった。
俺の周りの女子でバッティングセンターを楽しめそうなのゆりかとヨル、星子くらいな気がする。
美月とかならワンチャン興味持ちそうかなー?とはなんとなく思う。
他の三島や咲夜、円らはそもそも運動が得意なイメージがない。
「これ、野球とかいうやつですよね!弟のマンガで読んだことあります!」
運動神経は高そうだがバッティングはしたことはないらしい。
バッティングセンターに守備なんかいないから野球じゃないけど突っ込まないでおく。
「それでボールにバットを当てるやつですね!」
「まぁ、そんな感じ」
「よし、我は戦闘用衣装に着替えてきます」
「待て」
ゆりかの着ている服の首根っこを掴む。
彼女はなんでそんなことをされたのか理解してない顔であった。
「おい、戦闘用衣装って俺に襲いかかってきたあれじゃねーよな?」
「うむ。我は忍だからな!あれが我の正装姿だ!」
「露出狂だからな、あんなの!?」
「露出狂?」
「変態って言ってんだよ!」
「へ、へ、へ、変態!?」
「痴女ではしたないからやめなさい!」
こんな公共の場で太ももを露出したピタピタな網タイツで、下着が見えそうな短いスカート、もはや布である必要であるのか疑問なほどに露出しまくりな上着であるどすけべくノ一衣装なんか人前で披露したら通報案件だよ!
せめて、ハロウィンとかコミケくらいじゃないとあの格好は許されないぞ……。
確かにまた見たいなーという願望はあるが、絶対に今じゃない。
「大体どこであの衣装を手に入れられるんだよ……」
「あれはだな、我らの学校の瀧口という教師からもらったのだ。我はあれが忍という感じで気が引き締まるから本当はずっとあの姿で生活したいくらいだ」
「……」
瀧口、教師……。
それ、ギフト狩りじゃねぇぇぇぇか!
『ギフトリベンジャー』じゃねぇかよ!
お前、原作序盤で描写なく死んでるわりに、ガッツリ原作に絡んでるキャラクターだったんだな……。
あのくノ一衣装で生活したいとかに突っ込む気が失せるほどに、ゆりかとギフト狩りの関係が密接に繋がっていて衝撃を受ける。
フリーのギフト狩りとか言ってたから瀧口とか関に関わらないのか?とか考えていた余裕をちゃっかり跳ね返してきやがって……。
いや、あくまで衣装をもらったのは瀧口といっただけでギフト狩りのリーダーと告白したわけではない。
…………見て見ぬ振りしよっと。
「あいつ、変態教師だったんだな!」
「うむ。そうだな」
「…………」
肯定される瀧口の変態教師説。
いや、まぁ、学校でギフト狩りしている変態なのは間違いないけどさ……。
あいつの顔見ると変態にしか見えなくなるよ……?
「よーし、我は野球がんばります!」
こっちの気も知らないゆりかはやる気に満ちていたのであった。
†
実は初登場以降の秀頼とゆりかだけの単独回。
ゆりかのキャラクターが濃すぎて完全に忘れていたけど、これまであんまり秀頼との絡みがなくてビックリした……。
秀頼より、ヒロインの方が絡みあるゆりか……。
咲夜とかヨルの絡みが多いからね、仕方ないね。
次回、バッティング回!
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