10、宮村永遠の牽制会議
「では、これより『西軍グループ』による会議をはじめたいと思います!」
「はぁ……」
昨日までわたしは声が出なくてずっと引き込もっていたのであったが、永遠たちはマスターさんの喫茶店で知らぬ間に緊急招集をするのを決めたらしい。
リーダーのわたしが仕切ることが多いけど、ハッキリ言って意味がわかってないため、今回は永遠に全部一任している。
「あの……、あたし必要だったか……?」
「ヨルちゃん!」
「は、はいっ!」
ヨルが意見をするとビシッとした声で永遠が声を出す。
「私、わかってます……。抜け駆けで秀頼さん狙ってるんでしょ!?……着席してください」
「なんでだよぉぉ!?」
「まあまあ、ヨルさん……」
理沙ちゃんが優しくフォローしている。
唐突に『西軍グループ』にヨルが混ざっていてわたしもビックリしている。
いや、立ち上げたのわたしだけど……、なんでこんなに人増えてるの……?
「まずは円!完全に秀頼さんとやってます」
「やってないわよ!」
「なんか……、オーラがやってます」
「オーラ!?」
円が不本意という顔をしているけど、今朝の雰囲気を見るに、絆が深まる何かはあったんだと思う。
それくらい、刺々しさが無くなっていた。
「そ、それなら私より絵美の方がやってるオーラあるわ」
「…………え?わたし?」
「私も絵美がやってる感はあると思います」
円、永遠と完全にわたしを攻めるパターン入りましたね。
「やってる感!?むしろわたしは秀頼君とやりたい感!」
「さっきからお前たちは何を言っているんだ?」
わたしに矢印がきたが、堂々と受け止める。
わたしは秀頼君とやりたい。
隠すことはない。
「咲夜、ゆりかに説明を」とわたしが咲夜にお願いするとゆりかを教室の端に連れて行き、コソコソと説明をはじめる。
何回か頷くゆりかと、説明する咲夜。
「な、なんだ?その数字の6みたいな単語は?」
「察しが悪いな。だから……」
「うぇ!?」
「……まつゆりか」
「あわわわわ……」
赤くなるゆりかと冷静な咲夜の声がする。
するとそのゆりかの悲鳴に反応したのか、廊下からガラリと出入口が開く音がする。
「なんか上松の悲鳴聞こえたが大丈夫か?」
「気にするなタケル」
「はいよ」
他生徒が入らないように門番をしていた十文字君が現れたのだがすぐに引っ込む。
それを見届けたゆりかは下を向きながら着席し、咲夜もゆっくりと自分の席に戻る。
「絵美……。子供とはそんなことをしないと産めないのか……?」
「残念ながら……。あなたの両親も通った道です……」
「じゃあ我と弟で最低2回はしたのか!?」
「いや、それは知らない……。というか、中学の授業で習わなかったですか?」
「ちゅ、中学時代は修行に明け暮れていてほぼ不登校のようなものだったから……」
「修行って何!?」
「己の精神と向き合ったり、己の拳を磨いたり……」
というかこの人、秀頼君を襲った人だっけ?
ど、どんな生活送ってるんだろう……?
「さ、細胞分裂で子供産んだりできないのか?」
「哺乳類なことを捨てないで!」
「処女ってそういうことだったのか……。マンガってエロいんだな……」
「どういうことだと思ってたの?」
「はじめて胸を触らせることだと思ってました……」
「ピュア過ぎない!?」
ゆりかが凄いことを言っていたので突っ込んでしまう。
本当にこの子、色んな意味で怖い……。
「話は逸れましたが、秀頼さんと隣の家なのを良いことに抜け駆けしてないですか?」
「さぁ?どっちでしょう?」
おでこにキスされてます。
秀頼君の近さにはわたしは負けません!
「抜け駆けしてるな」
「してますね」
「ボク、やっぱり不利過ぎますよ!」
「あわわわわ、絵美やってるのか!?数字の6みたいなのを師匠としてるのか!?」
全て涼しい顔で流します。
「でも、私は明智君から『永遠が自分を好きなんじゃないか?』って質問きたわ。結構エイエンちゃんもやることやってんじゃないの?」
円の一言で、あの鈍感が永遠への好意に気付いたことに驚愕する。
「えっ!?ま、円!?秀頼さんに何言ったんですか!?」
「当然、自惚れ過ぎ!って忠告してあげたわ」
「何やってるんですかぁ!?」
永遠が目を丸くして、円に抗議している。
ぐぬぬ、永遠はやっぱり強敵だし、秀頼君からそんな相談されたことないのに、円にはしているですって……?
ぐっ、やっぱりわたしが知らないところでみんなアタックしていますね……。
「私は秀頼さんが大好きですっ!」
永遠がピシャリと言ってのける。
出会った当初の内気っぽい永遠とは変わったなとつくづく思う。
恋は人を変えるというを体現させた少女である。
「永遠さん……。廊下の兄さんから『余裕で宮村の本音漏れてる』とラインが来ました。ボリューム下げるように指示がきてます」
「ぅぅぅ……。言わなきゃ良かった……」
「永遠、今更だ。ウチらもタケルも秀頼の恋心を知ってるしダメージゼロだ」
「そんなわけありますかっ!」
珍しく永遠が咲夜に突っ掛かっている。
恋してる感が凄く伝わってきて『これは強敵』と警戒せざるを得ない。
「明智さん、競争率高過ぎ……」
「というかなんであたしはこんな会議に参加させられてんだ……」
「ウチは遥香やヨルがノーマークなだけに案外けろっと秀頼を恋人にしてる気がする……」
「さて、ヨルちゃんと遥香ちゃんの議題に入ります」
「え!?ボクも警戒されるですか!?」
「おい!咲夜てめぇ!」
「みんな平等にダメージを受ける。今回はそういう会議だ諦めろ」
そんな感じにグダグダな秀頼君の恋愛事情を牽制する会議は1時間ほど続くのであった……。
今回の会議でわたしが学んだことは……、永遠は強いというパワフルさを持っていることである。
†
周囲のヒロインらの警戒度
高い
永遠、絵美、円、星子
やや高い
咲夜、理沙
低め
ヨル、遥香、ゆりか
わからん
和
ウブ忍の上松ゆりかさん。
第7章 プロローグ
第153部分 13、上松ゆりか
にて、処女の意味が間違っていましたが、奇跡的に噛み合ってたシーンです。
処女を取られる=はじめて胸を触られること
と勘違いしているゆりかさんであった。
円の「自惚れ過ぎ」が見れるのはこの作品だけ!
第8章 病弱の代償
第175部分 16、津軽円はムカつく
次回、会議が終わった絵美が向かう先は……?
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