番外編、カフェラテ

「見て見て!ウチの子2人、きゃわいくない!?」


その日、そう言って彼女はキラキラした目で自分の年子2人を紹介する様に見せびらかしにやって来た。


「きゃわいくないってなんですか?」

「可愛いのより上の言葉よ!」

「へー、きゃわいい!」

「朝伊先輩!また変な言葉を彼女に真似させないでくださいよ!?」


僕はコーヒーを淹れて、謎の造語で盛り上がる2人に近寄る。

彼女が好きなエスプレッソを提供する。

そうやって突っ込むと彼女が「あはは」と笑い頬を掻いた。


「いやー、だって木葉ってからかいがいがあるんだもん」

「ウチは気にしてないですよ!」

「いや、気にしてよ……」


僕の奥さん、谷川木葉は少し天然が入っている。

その天然さを朝伊先輩はよくからかったりしてネタにしているのだ。


本当に昔から変わらないやり取りに自然と頬が緩む。


「あとながれ君、もう智尋先輩は朝伊じゃなくて明智ですよ」

「すいません、僕の姉も明智になっちゃったんでなんか呼び辛いんですよね……。それに朝伊先輩の方が馴染んでいるんですよ」

「いいよ、いいよ。流君の呼びやすい方でさ」


僕と木葉の高校からの先輩であり、友人であり、恋のキューピッドである彼女は朝伊智尋から明智智尋へと本名が変わっていたのであった。


「あたしもたまに木葉の名字を谷川じゃなくて源と間違う時あるしお互い様だからね」


そうやって朝伊先輩は出されたエスプレッソを甘くしてから口に運ぶと嬉しそうに笑う。


「にしてもあの金髪ライダー喧嘩番長の谷川流が黒髪に戻して喫茶店のマスターなんてね。あり得ねー、あはははは!」

「っ……!?あんまり変な過去掘り返さないでくれないっすかね!?」

「だって!だって、あの流君が自分を僕って呼称してる!俺って言えよ、似合わねー!おーい、マスター」

「親父の店を再開するんだし呼び方変えるっすよ……」


ガンガン黒歴史を掘り返して恥ずかしくなる。

金髪ライダー喧嘩番長とか大人になってから思い返しては死にたくなる時がある。


「こないだウチにコーヒー淹れて、谷川流たにかわりゅうだってダジャレ言って暴走してた」

「うわー、つまんねー」

「…………」


女2人が合わさると男の立場は本当に弱い。

朝伊先輩に弄られ、木葉に弄られをぐっと我慢して飲み込んだ。


「娘って父親に似た彼氏連れて来るって言うでしょ?モテモテで女癖が悪くて目付きとかもこう鋭い男連れて来そう」

「話が面白くて流君似のイケメンなら歓迎しちゃう」

「あらー」

「……っ」


ニヤニヤとした顔を先輩が向けてくる。

本当にもう恥ずかしい……。

追い出してやりたくなる。


「そ、それにしても先輩の息子さんが僕の娘と同い年なんて偶然ですよね!」


この先輩弄りの矛先をどうにか逸らす言葉を言うと「そうね」と相槌を打ってくれた。

テーブル席の椅子に置いていた息子を手に取る。


「見て見て!あたしの息子の秀頼!目付きとか旦那に超そっくりじゃない!?」

「いや、全然わかんないっす……」

「えー?ウチは超似てると思うっす」


『木葉は違いがわかるのかよ!』と心で叫んでしまう。

赤ん坊の顔にまだそんなに特徴ないのに、この2人スゲーなと思う。


「でも明智秀頼ってどんなネーミングセンスなんすか智尋先輩……?」

「旦那の名前が秀吉でしょ、だからまぁ……。命名する名前考えていた時にテレビでちょうど大坂夏の陣の時代劇やってたから運命かなって……」

「雑過ぎる……」


秀頼君の命名の由来に同情してしまった……。














マスターは初期からずっと昔はやんちゃしてた性格だっただろうなと思いながら描写してました。

金髪ライダー喧嘩番長はマジもんの黒歴史。

盗まれそうになったバイクで走り出して帰宅してそうな異名である。

絶対姉のおばさんからも弄られてると思う。

そうやって考えると元金髪ライダー喧嘩番長のマスターを手玉に取った原作秀頼の格も上がる気がする。




谷川流がマスター。

谷川木葉が咲夜の母親で、マスターの妻。

明智智尋が秀頼と星子の母親。



智尋の元の名字が細川じゃなくて朝伊なのおかしくない?と疑問になるかもしれませんが、次のページで理由に触れています。




次回、明智秀吉登場……?

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