12、明智秀頼はわからない

「もう、秀頼君は!」


絵美がプリプリと怒っていた。

茶化したのが原因なのが一目瞭然であった。


「…………」


うわ……。

でも俺、絵美の身体にキスしちまったよ……。

家族みたいな子に何やってんだという気持ちが込み上げてくる。


「誰にでもこんなことしてるんですか!?」

「す、するわけねーだろ!?絵美だからしたって言うか、なんというか……。……ホイホイとこんなことしねーよ!」

「…………そ、そうなんだ」

「はじめてしたよ」

「う、うん」


絵美が顔を赤くしながら目線を反らす。

う……、俺もいきなり恥ずかしさで顔が赤くなってる気がする……。


「…………」

「…………」

「…………」

「…………帰るね」

「……うん」


気まずくなった絵美が立ち上がって俺の部屋から出て行った。

絵美の姿が見えなくなったのを確認し、一気に脱力する……。


「あー……」


いつも寝ているベッドへ倒れ込む。

やらなきゃ良かった……、そんな後悔が心で津波を起こす。


「ん……?」


倒れたベッドに微かな違和感がある。

女の子っぽい甘い匂いが染み付いている。


「…………」


これ絵美の匂いだ……。

近い距離を持つ絵美の慣れた気配が残っている。

そういえばさっきまでずっとベッドにくるまっていたからこういう事態になったのだろう。


絵美に俺がいつも寝ているベッドに使われてくっつかれたことが恥ずかしい……。

絵美の匂いで悶々としている俺だが、絵美も同じこと感じたかなとかバカみたいなことを考える。


「…………」


ヤバい……。

俺、絵美が好きなのか?

わかんねーよ、マジで恋愛感情と下心の違いってなんなんだ!?

これって俺、ライクとラブのどっちの意味で好きなんだ!?


「んんんんんんんっ……!」


ドキドキしている感覚が落ち着かない。


バクバク心臓が鳴っている。


「なぁシリ?俺のこの感覚って恋愛感情なのか?それともただの下心なのか?沢村ヤマの胸を見てワクワクする気持ちとの違いってなんだ?」

『シリ、機械だからわかんない』

「欠陥品だなお前」

『世の中答えが出ないことの方が多いんです。生きていて、答えが出ないなら探すのが人間っていう生き物でしょ』

「マジでなんなんだよお前……」

『シリでーす』


答えが出ないなら探すのが人間か……。

ド正論じゃねーか。

なんでシリに論破されてんだろ……?


いつの間に隣の家に住む娘みたいな子供を、女として見ていたのかねぇ……。

本当に好きの形がわかんねーよ。


永遠ちゃんは前世から1番推しヒロインだし……。

スタチャは1番推しアイドルだし……。

沢村ヤマは男の憧れだし……。

来栖さんも当然好きだし……。


マジで好きってなんだろうか……?




叔父さんよ。

俺なんか誰も愛さないんじゃなかったのか?

誰も必要としないんじゃないのか?


部長よ。

俺なんかずっと嫌われているんじゃないのか?






「はぁ……」


答えが出ないなら探すしかない状況になってしまっていたようである。









次回、家に帰った絵美が叫ぶ……?

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