6、上松ゆりかは強さを提示させる

あたしは本日、初バイトを終えた。

明智と達裄さんが去った後に新規のお客さんを接客したり、家に帰って来た咲夜に驚かれたりなど色々な出来事があった。


「へへっ。おー、中々良いでないの」


殺風景で刑務所みたいだと自虐していたあたしの部屋も、カラフルなタペストリー1つで少し明るくなり色が付く。

明智に貰ったという事実はムカつくが、タペストリーに罪はない。


ちょっと嬉しくなり、気分が良くなる。

そして自分の姿を鏡に写すと、銀色のペンダントが輝く。


「っ……、何を浮かれてやがるあたし……。あたしにはやるべき使命があるじゃないか……」


銀色を視界に入れて思い出す。

あたしは託されたんだ。

『想い』を受け継がれたんだ。

世界を救うため、あたしはこの地に立っている。


「あたしは全てを捨てて、ここに来た使命があるんだ」


自分のギフトを捨てて、幸せの思い出を捨てて、ここに来たんだ。

そうだ、あたしはヨル・ヒル。

果たすべき使命のため、あたしは突き進む。


「悲しみの連鎖を断ち切るんだっ……」


明智から情報を貰ったんだ。




『ぎ、ギフト狩り……?は、はぁ!?お前ギフト狩りに襲われたのか!?』

『襲われたも何も、襲ってきたギフト狩りは上松ゆりかだぞ』




まさか、隣の部屋に元とはいえギフト狩りが潜んでいたなんて灯台もと暗しであった。

ギフト狩りは許さない……。

いくらでも奴らの情報はあっても足りないくらいだ。

まだまだ、小さい芽のギフト狩り。

あたしはその小さい芽のギフト狩りを狩る。



それにしても、ハーフデッドゲームが犠牲者ゼロってどういうことだ?

参加者9人と主催者1人の計10人で行われた殺戮ゲーム。

参加者7人もの犠牲者を出したギフト狩りでも忌むべき事件として有名なハーフデッドゲーム。

ずっと目を光らせているクラスメートの熊本が生存しているからまだハーフデッドゲームは発生してないものとばかり思っていた。

いや、そもそも明智が巻き込まれたってのが意味わかんねーし……。

本来、明智なんかハーフデッドゲームの参加者に含まれてねーし!

意味わかんねー、意味わかんねー。


そして、ハーフデッドゲームの犯人の田沼は事件を起こしてすぐにギフト狩りに殺害される筈。

田沼がどうなったのか調べる必要もありそうだ。


「さて……、調べることだらけだが最初はゆりかから当たるか……」


あたしは部屋を飛び出し、隣の部屋をノックする。

すると暇をしていたのか、ゆりかが応対をする。


「おー、ヨルではないか。どうした?こんな時間に?」


長い黒髪をなびかせた私服を着た美人な女が現れる。

その態度からギフト狩りとはイコールで結ぶという方が無理であった。


「ちょっと、ゆりかに話したいことがあって来た」

「……。来い」


今日は真面目な態度で話しかけると、何かを察したようにゆりかはあたしを部屋に上げる。

ギフト狩りの部屋に侵入。

その事実に心臓をバクバクさせてあたしはゆりかの部屋に入る。


「それで、何か用か?」


ゆりかがクッションを出すと、あたしはそれに座る。

それを見届けると、ゆりかは自分のベッドに座り込む。

気まずい雰囲気が流れるが、ゆりかが『早く要件を言え』という目を向けるので、あたしから声を紡ぐ。


「……単刀直入に言う。お前、元ギフト狩りなんだってな」

「……それが?」

「っ……!?」


ゆりかは否定せず、当然のように肯定する。

上松ゆりか。

彼女のことは、ただの明智のストーカーにしか見ていなかったが、まさかそんな裏が隠されていたなんてな……。

心を非情になって話すしかないかもしれない。


「あたしにギフト狩りの情報を全部寄越せ」

「不可能だ」

「っ……」

「そんな睨むな」


ゆりかがあしらう態度を見せる。

当然といえば当然か……。


「ギフト狩りの情報を漏洩すれば我が始末される。言いたくても、それは出来ぬ相談だ……」

「頼む……、ゆりか」

「それに正直我は、何か知っていたとしても信頼出来る人にしか話さぬ。クラスメートであるヨルや他のみんなのことは好きだが、信頼は師匠以外していない」


頑なにゆりかは首を振らない。


「どうしても我から聞き出したいならお前も、力付くで我より強いことを証明しろ」

「……わかった」


そこまで言われた以上は仕方ない。

あたしはゆりかと争う覚悟をする。

おあつらえ向きな場所があると言って、あたしは遥香がギフトをコントロールをしていた廃墟へとゆりかを案内する。


お互い、ロクに言葉を交わさぬまま、廃墟内に入り込んだ。










ヨルがクラスメートの女子で1番仲良しなのはゆりかであり、ゆりかもクラスメートの女子で1番仲良しなのもヨルです。

いわゆるストーカー同盟(非公式)。


第8章 病弱の代償

第161部分 2、山本のストーカー対策

にて、山本のセクハラ攻撃で追い払われて友情が芽生えたと思われる。

その後は

第168部分 9、上松ゆりかは不服

でゆりかがヨルをタケルの家に誘うファインプレーを見せる。

拡散されてしまった『ヨルの好きな人が秀頼説』に対し、誤解が解けているのはゆりかのみ。

ゆりかはヨルがタケル狙いなのを知っています。

下ネタがダメダメの2人。




ヒロインの下ネタ耐性ランク付け

左に名前がある方が耐性が強い


強い

津軽和、十文字タケル、津軽円、佐々木絵美、三島遥香


普通

谷川咲夜、十文字理沙、宮村永遠、細川星子


雑魚

上松ゆりか、深森美月、ヨル・ヒル

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