3、男の文化発表会
「とりあえず新しいバイトのヨルさん。秀頼君はクラスメートらしいけど、達裄君は始めてだよね。彼が遠野達裄君で、彼は星子ちゃんの恩人で、秀頼君の師匠の人」
「よろしくお願いいたします」
「うん。よろしく」
マスターは達裄さんへヨルを紹介している。
俺の知らん間に星子と知り合いになっているのがムカつくな……。
「明智の師匠……ですか?」
「あぁ。秀頼が最近ギフト狩りに襲われた時とか教えが役立ったてさ」
「ぎ、ギフト狩り……?は、はぁ!?お前ギフト狩りに襲われたのか!?」
ギフト狩りに色々と因縁のあることが原作で語られているヨルが俺に突っ掛かる様に聞いてくる。
といってもあのポンコツギフト狩りとは因縁も何もないだろうけど……。
「襲われたも何も、襲ってきたギフト狩りは上松ゆりかだぞ」
「ゆ、ゆりか……?え?あいつギフト狩り!?」
「もうやめたけどな」
「…………え!?ゆりかギフト狩り!?」
「おーい、戻ってこーい!」
寮で隣の部屋だったり、ストーカー仲間としてコンビを組む相方のゆりかがギフト狩りだった事実ははじめて知ったらしく、大きく取り乱すヨル。
ヨル視点で言うなら、秀頼以上にギフト狩りが嫌いだろうからなぁ……。
「第5ギフトアカデミー近くには災厄を引き付けるドラゴンが眠る土地なんだよ。だから変な怨念に当てられてあの辺一帯変な人が登場しやすいって言い伝えがあるんだ」
「ドラゴンが眠る土地?んなバカな……」
達裄さんが俺とヨルに説明する口調で語る。
「さぁ?この辺、なぜか異常に犯罪率高いからね。そういう噂が5000年前からあるんだよ」
「ゲームの舞台設定みたいな言い伝えっすね」
「誰が5000年も数えたの?」
「さぁ?特にギフト関連の犯罪率は第5ギフトアカデミー周辺がジャパンイチなんだよ。いやぁ、怖いねぇ……」
ヨルもマスターも半信半疑な態度で達裄さんの会話を聞いている。
……まぁ、ゲームの舞台設定なのはガチであるが。
というかゲームでガッツリ犯罪起こりまくるからな。
秀頼とか秀頼とか秀頼とか拷問とか秀頼とか。
「俺の集めた情報になるけど、秀頼もハーフデッドゲームに巻き添えくらったんだろ?案外そういう真相があるかもね」
「は、ハーフデッドゲーム?なんすかそれ?そんなゲーム持ってないっすよ?」
「…………は?」
「FPSかなんかっすか?」
家にそんなB級映画っぽいゲームは置いてないし、そんな映画も存在しない。
ハーフデッドゲームってなんの話だ?
「無自覚か……。じゃあ忘れな」
「は、はい……」
達裄さんの一言でハーフデッドゲームを忘却させる。
本当になんのゲームか気になるぞ……。
「ハーフデッドゲーム……。ハーフデッドゲーム!?待て!?ウチの学校でハーフデッドゲームが起きたのか!?」
「俺は知り合いにそう聞いたけど……。犯人が自首して犠牲者ゼロだってさ」
「ハーフデッドゲームの犠牲者がゼロ……?」
ヨルがポカーンとしている。
ハーフデッドゲームなる意味不明な単語で当たり前に会話する2人を見て、マスターと困った顔になり見合わせる。
電波過ぎてついて行けなかった。
ただ、達裄さんが俺を見て含み笑いをしている。
「はいはい。意味不明な話は終わり。それじゃあ、ヨルさん。2人を接客して」
「あー、だから俺と達裄さんにコーヒーが来なかったのね」
「実践して覚えさせないとね」
マスターが笑顔でヨルに言うと、頷きながらヨルが俺と達裄さんに駆け寄る。
「お客様、注文はいかがでしょうか?」
「俺はいつもの」
「俺はいつものE」
「かしこまりました。いつものといつものEですね。お待ちください」
ヨルが紙にボールペンに記入して、そのままマスターのところへ行く。
「いつものといつものEの注文入りました」
「なにそれ?真面目に注文取らないと……」
「は、はい……」
ヨルが再びマスターから離れて俺と達裄さんの元に帰ってくる。
「お客様、ご注文はいかがでしょうか?」
「いつもの」
「いつものE」
「かしこまりました。いつものといつものEですね。お待ちください…………っておかしいでしょ!?マスターだってガッツリ明智らの会話聞こえてるじゃないっすか!?新人虐めっすよこんなの!?」
俺と達裄さん、マスターはヨルの反応に笑いを堪えていた。
ヨル以外みんなわざとだ。
「秀頼君がエスプレッソ、達裄君はコーラフロートだね」
「わかるわけないでしょ!常連気取ってんじゃねー!」
ヨルが俺の目の前の机をバンバン叩いてくる。
「こらこら、お客さんを威嚇しない。昨日の秀頼君の学校の様子を教えてくれたら許そう」
「あれは昨日の放課後。明智はタケルと山本の3人で教室に集まっていたんだ……」
「ちょ!?なんでヨルがそれを知ってんだよ!?」
「秀頼?黙って話を聞こう」
マスターと達裄さんが素敵でイケメンな笑顔を見せてくれる。
あ……、もうこれ止められないやつだ……。
昨日起きた放課後の出来事。
めっちゃしょうもないやつである。
ーーーーー
「本日、ゴールデンウィーク前の通学が終わったことによる記念により第15回男の文化発表会をはじめたいと思う」
「待ってました明智先生!」
「テンション上がりますね、明智先生!」
野郎2人の拍手に包まれる。
「憧れんなよお前ら」
「別に明智先生に憧れてはない」
「俺も……」
タケルと山本に持ち上げられながら俺が司会者となって男の文化発表会をまとめていた。
因みに女子禁制。
絵美や理沙らは残念ながらご参加を遠慮してもらった(別に男の文化発表会を開催する旨すら報告してない)。
「今日の議題はタケル君」
「はい、明智先生!」
タケルは俺と山本へ『理想の胸は誰の胸?』と書かれたルーズリーフを見せてくる。
3人で顔を合わせながら頷き合う。
「じゃあまずは俺だな」
山本が挙手をして、俺とタケルの視線を集める。
緊張が走る中、山本が口を開く。
「俺は、長谷川雛乃の胸が良いと思う!」
「いや誰!?」
「聞いたことある気もするけど誰!?」
「俺の彼女っす」
「ノロケかよ!」
「ノロケシネ!」
俺とタケルからブーイングをくらうも山本は涼しい顔である。
「参考画像の提出を」
「わかったよ」
3人の『リア充破裂グループ』の山本から3枚くらい女性の画像が送られてくる。
「……胸小さくないか?」
「いやいやいや、十文字氏。よく見てくださいよ、美乳でしょ」
「ふっ、理沙の方が形もキレイで大爆発しているぜ」
「明智先生!あそこにただのシスコンいるんですけど!?」
「許す」
「シスコンは許してノロケは許しませんか!?」
「シスコンノットギルティ、ノロケギルティ」
シスコン無罪判決、ノロケ有罪判決である。
「手繋ぐだけで赤くなるんすよ!?可愛くないっすか!?長谷川雛乃最高じゃないっすか!?」
「いや、十文字理沙には劣るな」
「俺の彼女とお前の妹を比べるなよ!?」
「理沙はよく膝枕して安心させてくれるんだ。最高だろ?なぁ明智先生?」
「両方ギルティ」
「なっ!?」
残念ながらタケルも有罪判決になったのである。
†
多分、口で『ジーっ』って言いながら盗み聞きしてたんだろうなって思います。
ハーフデッドゲームとは?
第8章 病弱の代償編
第172部分 13、HALF DEAD GAME
より
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