番外編、宮村永遠(バッドエンド)の後日談

次の日。

タケル、絵美、ヨル・ヒルの遺体が発見された。

痴情のもつれか、通り魔の犯行なのか、犯人は不明らしい。


俺は理沙ちゃんに呼ばれて、十文字家のマンションを訪れる。

泣いていたであろう理沙ちゃんが赤い目になりながらも対応し、俺を部屋に案内した。


「明智君……。なんで……、なんで兄さんがこんな目に……」

「……なんでだろうな」

「絵美もヨルさんもどうして……、わけがわかんない……」

「…………」


兄と親友を失った理沙ちゃんを見て心が痛む。

正直言えば、俺も虚無感でいっぱいであった。


「しかも……、なんで永遠さんは兄さんと恋人みたいになってたクセに姿を見せないの……?意味わかんないよ……」

「…………」


宮村と理沙ちゃんの記憶の中で矛盾が生じてしまっている。

そんな初歩的なことが抜け落ちるとは、俺も自分が思うより参っているらしい。


「ねぇ、明智君……。私が生きる世界が1日でガラリと変わってしまって別世界に来てしまったみたい……。昨日の朝までは普通で幸せな日々だったのに……。どうしてこんなことになったのかな……?」


理沙ちゃんは俺に顔を見せずにまた泣き始める。

タケルを殺した俺に参る一言であった。

いつもべったりで気持ち悪いとすら思ったことすらあったが、2人は一緒じゃないと、俺が落ち着かない気分になる。

とりあえずそんな落ち着かない気分を誤魔化すために現実と理沙ちゃんの記憶を揃えさせる。


「【宮村永遠のことは忘れろ】」

「……宮村永遠?……誰でしたっけ……?」


ギフト能力が一瞬で理沙ちゃんの記憶を忘却させた。

それを見届けて、俺は気分が悪いと言って十文字家から出て行く。





「あー、つまんねー」


理沙ちゃんと別れて、マンションの屋上に上がって街を見渡していた。


絵美が居ない。

タケルが居ない。


その人生は酷く退屈だ。

なんか、俺が目指していたものってなんだったのか、わけがわかんなくなる。


『クハッ、クハハハハッ!なんだ、明智秀頼?お前はわけのわからねー奴だな』

「……エニア」


唐突にそいつは現れた。

黒いフードを被り、肌が褐色の白髪の子供を姿をしたロ●ババアの登場である。

ギフトを配る神・エニアが俺を嘲笑う顔で俺を空中から見下していた。

彼女のことはたまに現れるうざってぇガキ程度しか見ていないが……。


『あんなに十文字タケルに執着していたではないか?それなのに今の明智秀頼はなんだ?腑抜けた顔をしよって』

「…………タケルと絵美が死んで俺のギフトが進化した。監視カメラの無機物にも『命令支配』を使えるし、俺自身にもギフトを使用出来るようになった。……多分『アンチギフト』を超えたギフトに進化したんだと思う」

『神と会話する気がない受け答えはやめろ』

「あんなにアンチ超えを目指していたのに、達成した途端どーでも良くなっちまったよ。タケルが昔から大嫌いだったのに、胸に穴が空いたみたいにつまんねぇよ」


エニアの突っ込みを無視して、俺の心境を語る。

なんか理沙ちゃんが言ったみたいに、俺も別世界にでも来てしまったみたいだ。


『上松ゆりか、三島遥香、ヨル・ヒル、十文字タケル、佐々木絵美。……お前は入学して5人ものギフト所持者を殺害しておいて何を言ってやがる』

「…………」


三島遥香はまだ死んじゃいないが、死刑待ちという意味では死んでいるもんか。


『クハッ!お前は変なところで優し過ぎる。ゴミクズならゴミクズらしく人間を捨てろ』

「…………あーあ、なんかタケルじゃなくて俺が死んでた方が良かったかもしれねぇなぁ……」


昨晩見た夢はタケルと宮村が幸せになり、俺と絵美がボコホコにされ敗北した物語であった。

今更ながら、そっちの方が現実で、俺がタケルを殺害するこっちの現実の方を物語にしたかったぜ……。


「ところでギフトは重複しねーって話だけど、ヨル・ヒルってタケルと同じギフト持ってるん?そもそもあいつってなんのギフトを持ってやがる?」


夢の世界で俺の『命令支配』を『アンチギフト』で抗うヨル・ヒルの姿を見て、もしかしたら本当にあいつも『アンチギフト』持ちなのか?という疑問が沸いてくる。

重複しないギフト能力だが、ヨル・ヒルが自称しているだけでタケルとは違う能力なのか?

それともタケルの上位互換か下位互換なのか?

わけわかんねぇ……。


『さぁなぁ?神は明智秀頼の味方でもなければ敵でもない。そういうことは語る気はせんのぅ』

「あっそ、まぁいいや。どうせヨル・ヒルも死んだし……。…………あいつに対しては全然罪悪感はねーや」

『クハッ!クハハッ!ダメだな。今の明智秀頼は面白くない。……興醒めだ。そろそろ神は帰宅させてもらうぞ』


屋上に強い風が吹く。

髪型が崩れないように髪を手で抑える。

そして、風が止んだ時にはエニアの姿は跡形もなく消えてしまっていた。


…………神が帰宅って家あるん?

エニアの自宅が気になる……。

同じ黒フードたくさんクローゼットに閉まっていそう。



「…………」


独りになり俺は考えるのを止める。

生き甲斐を失った様な喪失感は、思ってるより大きかった。

やりたいこともない。

したいこともない。

会いたい人もいない。


アンチ超えを果たした結果がこれとかつまんな過ぎる。

せめて、直接タケルのアンチ超えを果たしていたらもっとテンションも上がったろうに。

タケルの勝ち逃げがイライラする。

本当にアンチ超えをしたのか試させて欲しい。

タケル……、もう1回こっち来いよ。



あー、全然満足できない。

つまんねー、つまんねー、つまんねー。

タケルか絵美のどっちでも良いから会話してぇなぁ……。




「いっそ、俺も絵美とタケルの元にでも行くかなぁ」




死にたいなぁ……。

でも死にたくないなぁ……。



マンションの高さは約30メートル。

風が当たる屋上の景色を見ながら考える。




俺は屋上へ来た道を通ってそのまま自宅へ帰るか、このまま飛び降りるか。





俺はポケットを漁り、タケルと遊んだ時にゲットしたゲーセンのコインを取り出す。

表には天使が、裏には悪魔が描かれたコインである。

表が出たらデッド。

裏が出たらアライブ。

その条件で俺はコインを指に絡ませる。





高くコインを弾き弧を描く。

数秒掛けて落ちてきたコインを俺はキャッチする。




そのコインの裏表の結果は──。













200話記念話完結です!

おめでたいですね!


無事、タケル・絵美ENDになりました。


候補としては、

咲夜の過去、ゆりかの過去、タケルと理沙の過去、秀頼の虐待による過去、話をぶっち切ってクズゲスメンバーでスマブラ大会、話をぶっち切ってクズゲスメンバーが喫茶店に入り浸って中身のない雑談をしているだけの回などなど

200話記念でやりたいネタは山ほどあって悩んだ末に鳥籠の少女のバッドエンドのシナリオを興してみました。

桜祭が1番思い入れがあるのが鳥籠の少女編だから少し優遇気味かもしれません。

ヒロイン的にも絵美、永遠辺りがお気に入り。

ゆりかもわけわかんなくてお気に入り。

でもなんやかんや部長以外みんな好き。

やって欲しいネタがあればリクエストしてくださると、もしかしたらたまに番外編を書くかもしれません。



因みに概念さん(エニア)ですが、原作では非攻略キャラクターです。

別にヒロインでもなんでもない、純粋な悪役。

出番ないけど概念さんも気に入ってます。

褐色白髪黒フードロ●ババアは盛り過ぎ。

わからせの似合うメスガキキャラクターをイメージしてます。

原作タケルはエニアの名前を知らないので『謎の少女』扱いされていますが、原作秀頼はギフト学園入学からすぐにエニアの名前を知りました。

クズゲスタケルはそもそも概念さんと出会ってすらいません。

原作秀頼と概念さんはメル友です。

相性が良いのかもしれません。





この物語ではあえてコインの裏表の結末は描写しません。

読者の皆様の想像にお任せ致します。




秀頼のコイントスについて

天使が描かれた表が出たら死のうとしているのは、無意識に死にたい側の欲が強いからだと思います。



永遠バッドエンド世界のクズゲスキャラ大体不幸になってますね。


秀頼→自暴自棄、生死不明

絵美→死亡

タケル→死亡

理沙→兄を失う

円→親友を失う、秀頼が死んだら絶望してそう

咲夜→引きこもり、20歳前後で死亡

永遠→記憶を失う

和→秀頼が死んだら悲しんでそう

星子→スタチャやってる、秀頼が死んだら偽りのアイドル編に突入する

山本→引きこもり

ヨル→死亡

ゆりか→死亡

遥香→死刑待ち

美月→友達の遥香が逮捕で悲しむ、親友である永遠の記憶が消されて戸惑う


きちんとしたギャルゲーですね。



しばらくシリアス続きだったので、そろそろ日常回に戻ります。

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