34、三島遥香は誘う

あれから星子と会話を終えてすぐに別れた。

叔父さんのことを星子は気にしていたが、聞かせるような話でもないためにお茶を濁しておいた。


星子はギフト『キャラメイク』について明かしてくれたのに、俺のギフト『命令支配』については何も語らないという信頼性に掛けたことをしている。

隠し事ばかりの最低な兄貴だ。

星子の信頼を預かるには、俺は相応しくないんだ……。


いっそ、何もかもぶちまけて楽になりたい。

でも結局、みんなが俺から離れていくビジョンが消えなくて不安だらけだ……。




「明智さん?体調悪いですか……?」

「あぁ、大丈夫大丈夫……。ちょっと昨日妹と会話していたことを思い出して……」

「妹さん?」


そして、今日も引き続き三島の『エナジードレイン』のコントロールを伝授をしているところであった。


「うん。別居している妹が居るんだよ」

「へぇ……。ボクにも弟が居るけど同居してるなぁ」

「まぁ、俺らの年で実の兄妹なのに別居してるのはちょっと面倒な事情があるからだからね。一緒に弟と一緒に暮らしている三島が羨ましいな」


確か和馬とか言ったかな?

ほぼ小説オリジナルキャラクターだから記憶は曖昧だ。

ネコ助のインパクトが強すぎる。

ネコ助が悲劇のヒロインとかネタにされていたのを思い出す。


「そ、そ、そうですかね」


羨ましいと言われてちょっと照れている顔を見せる。

こういう女の子の仕草は永遠に見れてしまう自分がいる。

永遠ちゃんは関係ないけど。

虫や植物などからも微量の元気を貰いつつ、『エナジードレイン』の効果を広範囲に広げられる特訓をしながらでも会話はできるくらいには慣れてきているらしい。


「『エナジードレイン』で苦しんでいるんだろうけどクラスの友達とかできた?」

「……全然居ないですね。あ、……明智さんを友達と呼んでも良いですか?」

「三島が嫌じゃないなら友達で良いけど……」

「はい!ありがとうございます!最初は友達からです!」


ゴミクズの友達ということになっても良いならの話であるが。

でも完全コミュ障の咲夜とは違い、中学まではそれなりに友達が居たとかいう設定は見たことあるな。


「あっ!そうだ!ボク、文芸部なんですよ!明智さんも一緒に文芸部入りませんか!?」

「文芸部?」


俺含めた知り合い全員が部活に所属しない暇人軍団だから部活という存在を忘れそうになる。

出たな、三島遥香の文芸部という設定がありながら、本編中1回も触れられない文芸部の存在。


「文芸部って何するの?」

「文芸をします」

「間違ってはないんだろうけど……」


中身が全く伝わらない。


「明智さんは何部ですか?」

「帰宅部」

「帰宅部は何するの?」

「帰宅するよ」

「同じです。ボクからは説明のしようがありません」

「説得力あるな!?」


確かにサッカー部はサッカーをするし、野球部は野球を、美術部は美術をする。

単純明快な話だった。


「今度お友達でも誘って文芸部に遊びにきてください」

「部活に呼ばれるなんてドキドキするな」

「ド●ドキ文芸部ですね!」

「ほぅ……あれに触れるか……」

「あれ?どういうことですか?」

「はっ!?伝わってない!?素でド●ドキ文芸部と言ってたのか!?」


心の穢れが三島からはまったく見られなかった……。

しかし、友達を誘って文芸部か……。


理沙からヨルを、永遠から美月を連れて来たら晴れて初代のヒロインが全員揃う文芸部か……。

顔面偏差値高過ぎなタケルの嫁集団の集まりか……。

見てぇ、タイトル画面でしか見ることができないヒロイン5人全員が並んで同じ空間にいる瞬間が超見たい。


三島に理沙や永遠のコネなんかないから見ること出来ないんだよなぁ……。

同じクラスの美月ですら三島と面識があるかすら終始不明だし。


初代5人のヒロインと面識を持って思ったのが、横の繋がりが全員見えないんだよね……。

完全に1人1人が独立しているイメージである。

永遠ちゃんも俺たちが積極的に絡まないと理沙との繋がりすら無かったかもしれないしね……。


「ボクは『エナジードレイン』を完全にコントロールしたら明智さんと一緒に文芸部で活動したいです!友達さんも巻き込んで良いのでお願いできませんか……?」

「う、うん……。そうだね、文芸部入るのも良いかもね……」

「はい!ボク、これからも明智さんと関われるような人になりたいです!」

「あ、ありがとう……」


ストレートにこういう言葉を掛けられると、調子が狂うな……。

でも、また円から『あんたバカァ』とか文句を言われそうである……。

タケル辺りが『俺もついでに』とか言ってきそうである……。


いや、タケルと三島の接点がないから俺が作る必要があるのか?

うーん……、もう根っからの親友役思考に変わってきている気がする。


「明智さん、結構ギフトを広範囲にできてきているとは思うんですけど見てもらって良いですか?」

「うん、わかった」


ギフト板を受け取って俺は三島を視界に入れていく。

どす黒い『エナジードレイン』が薄くなっていて、あまり毒素が感じにくいようになっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る