27、病弱の代償・涙目

『エナジードレイン』の克服。


本当に毎日が楽しい。

学校の生活。

家族との生活。


そして、明智さんと会話する。


本当にささやかな日常と願いだったけど、全部がある日常がどれだけキラキラとした宝で大事な物なのかがよくわかる。


そんなことを考えながら廊下を歩いていると見慣れた光るような金髪の女性の美月が、美人な雰囲気の薄紫色をした髪の女性で会話をしていた。


「やっぱり永遠のノートはわたくしも勝てないくらいにびっしりだ!ありがとう、参考になった」

「いえいえ、美月も頭が良いんだからそんなに褒めなくて良いのに」

「永遠に比べたらまだまだだ。じゃあ、またな」

「はい。また、何か困ったら連絡してね」


ペコリと会釈した美人な女性はそのまま美月さんの前から立ち去っていた。

うわ……、本当にボクと同性なのかと疑いたくなるくらいに美しい人だな。

すれ違っただけだけど、シャンプーの匂いにドキッとする。


「い、今の人は美月さんのと、……友達ですか……?」


ちょっと呂律が回らなくなりながらも、その場を見たボクは美月さんに尋ねていた。

すると肯定するように笑顔で彼女は頷く。


「あぁ、彼女はわたくしと幼馴染でね。長い付き合いなんだ。彼女が小学校卒業と同時に引っ越したから3年振りくらいに会ったけど本当に優等生だよ彼女」

「そうなんですか?」

「うん。彼女のレポートを見てみたけどわたくしとは違う切り口で難しい話題に取り組んでいたのにわかりやすくて驚いた。名前は宮村永遠って子なんだけど……、いやー永遠に彼氏とかできたらそれだけで自慢できるだろうね」


はははと笑う美月さん。

よほど仲良しなんだろうなとその態度を見て察する。


「そういえば遥香に彼氏とかいるのか?」

「ぅえっ!?」


突然思い出したみたいに言うんだから参る。

すぐに明智さんを思い出し、顔の体温が熱くなる。


「いなっ……居ないよ!ボクに彼氏なんて出来るわけないじゃないですか!」

「まるで赤い羽根共同募金みたいに顔が赤いぞ遥香」

「ピンと来ない!」


トマトとかリンゴで良かったんじゃないかな……?、と心で美月さんのセンスに横槍を入れる。

ちょっと変わった思考をするんだよね。


「そっか。彼氏はいないけど好きな子は居るタイプか」

「ぅ……」

「ははは、青春というやつだな。永遠もなんか気になる子が居るって感じだしみんな浮かれてるな」

「いまは青春じゃなくてアオハルって言うんですよ」

「なんと!わたくしのセンスが古いとは!?」


ガチショックを受けたとばかりに驚愕する美月さん。

本当に美月さんも美人なのに反応が可愛いんだよね。


「ではあれですか。赤壁の戦いはアカカベのセンいと言ったりするのか?」

「赤壁の戦いは赤壁の戦いです。アカカベのセンいってなんですか?」

「東京をアズマミヤコと呼ぶとか?」

「東京は東京です。アズマミヤコってなんですか?」

「青春は青春じゃないのか?」

「アオハルです」


目が点とばかりに美月さんは言葉を失っていた。

真面目過ぎてユーモアが通じないタイプの人だ。


「くっ……バカな……。わたくしが流行を取り押さえられてないとは……。そんな自分に怒りが湧いてくるな」

「今は怒りじゃなくて、おこって言います」

「おこっ!?おこってなんだ!?怒ってるのか!?」

「おこです」

「…………アオハル、……おこ、……同情するから金をくれ……」

「なんですか?同情するから金をくれって?なんで貰う側なの?」


美月さんの頭がオーバーヒートしていた。

詠美さんがからかう理由が凄くわかる。

めっちゃ面白い人だからだ……。

美月さんにネコ助ミサイルしたらどんな反応するのかちょっとワクワクする自分がいる。


「…………遥香の好きな人はどんな人だ?」

「強引に戻りましたね……」

「ねえねえ」

「ぼ、ボクに優しくて頼りになってくれる人……」

「うわぁ、遥香可愛いな。ウブだなぁ、青春だなぁ」

「アオハルです」

「そうだった!おこだった!」

「……いや、ここでおこは使わないです」


また一瞬美月が反応をしなくなる。

そして暴走する。


「……難しいー!木刀をキ●●と言うタイプかー!」

「何言ってるんですかあなた!?その法則ならキカタナでしょ!?急に下ネタ言うのやめてくださいよ!?」

「木刀ってなんだ!?」

「木刀は木刀です」

「ところでキ●●って何?」

「ヘイシリ『キ●●って何?』」

『変態娘めっ!』


解説を聞いて赤くなる美月さん。

自分の不用意な発言に後悔している。


「…………」

「……あの、元気出してくださいっ!ねっ?」

「……遥香」

「はい」

「なんでお前はキ●●の意味を知っている?」

「…………」

「…………」


最低で気まずい空気が流れた。

お互いが顔を赤くしながら教室に向かう。


「…………アオハルか?」

「……ようやく本来の意味で使えましたね」

「……ははっ。やったよー、アオハルをマスターしたよー」


涙目の美月さんの顔が虚しかった。

ボクも心で泣いたし、多分涙目になってた。

もはや美月さんの友達の宮村永遠さんの存在なんか抜け落ちてしまっていたのであった……。









美月はレギュラーキャラにしたいくらい好きです。

いつ加入するんだろ……?

1番チョロいのは作者。

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