番外編、プロローグ3

教室のスライドドアを開けると、新しい生活の始まりって気がしてきた。

しかし、教室には佐々木がいるのに秀頼の姿がない。


「黒板に席順書かれてるわね。明智君出席番号1番じゃん」

「お、俺と理沙の席近いな!」

「名字一緒だからね」


俺の前の出席番号は佐々木絵美だった。

知り合いの固まった席である。


「あ……」


そこで俺は見付けた。

中学時代、1年間だけ同じクラスだった宮村永遠。

美しい薄紫の髪は記憶そのまま、しかし表情は当時の面影はなく、目に悲しい絶望感が宿っている。

大人びた顔は、当時より10歳くらい上にすら感じてしまう。

そんな彼女を放ってはおけない気持ちが高ぶってきた。

俺は、偶然を装って宮村に接近してみた。


「よぉ、おはよう宮村!俺たちまた一緒のクラスだなよろしく!」

「……誰でしたっけ?」


こんな時だというのに、クラスで唯一机にテキストや筆記用具を広げて勉強している真面目な宮村である。


「十文字タケル。中学で1年の時同じだったろ」

「……記憶にございません。すいません、勉強の邪魔です」


俺を邪険にしつつ、鉛筆の動きは止めない。

宮村は何をそんなに取り憑かれたように勉強してるんだ?


「いつも勉強してるよなー、そんなに勉強好きか?」

「勉強しないと。私は勉強しないと価値がないから。勉強しないと、勉強勉強勉強勉強勉強勉強勉強。だから邪魔です」

「っ!?」


死んだ魚のような目で俺をじっと見てくる。

奈落の底『アビス』、彼女の瞳には深淵が存在している。




★選択肢★

→宮村に干渉する【永遠好感度+2※永遠ルート必須、2人を攻略することにより解放】

 宮村に干渉しない

 理沙のところへ行く【理沙好感度+1】




理沙は佐々木と談笑しているから、わざわざ彼女のところ行かなくても良いだろう。

俺は、宮村に質問を投げ掛けていた。


「宮村?勉強って楽しいか?」

「楽しいですよ。知らないを知れるんですから。ふふっ。フフフフフフっ、勉強楽しいです。勉強はタメになります。勉強万歳です。フフフフフフっ」


壊れたみたいに笑い続ける宮村。

俺の記憶にある宮村とはあまりにも態度が違い過ぎる。

彼女はもっと子供みたいに笑う子だったはずだ。


なんで、俺はこんなにも宮村が気になって仕方ないんだ……?


「じゃあ問題良い?」

「良いですよ。どんと来い、錦鯉です」


なにそれ?ダジャレ?と思ったが、スルーすることにする。


「ジャパン史から、1603年の出来事は?」

「江戸幕府の成立ですね」

「わかるじゃん」

「え?」

「知らないを知れるんだろ?既にわかってる勉強じゃん。無駄な勉強してるんじゃないのか?」

「…………フフフ」


下を向き数秒黙っていた宮村。

しかし、すぐに何がおかしいのか笑いが込み上げてきた宮村である。


「フフフフフフっ。十文字さん、でしたよね?」

「あぁ、それが?」

「あなた、……勉強の邪魔で、とても不快です。目の前から消えてください」


宮村は作り物の笑い顔を作りピシャリと言い切る。

彼女の中に、闇とその答えがかいま見えた気がした。


不快と言われ、宮村の元から離れた俺は時計を見る。

ホームルームが始まる10分前なのに秀頼がまだ来てない。


いくら初日でもサボりはヤバいだろ!?

すぐ学校をサボる癖のある秀頼だ。

ラインで『教室来い』と送るも、数秒で『死ね』と送られた。

秀頼の言う『死ね』は、『黙れ』、『干渉すんな』程度なので本当に命を落とせとは思ってないのだ。

朝から機嫌悪そうな秀頼を探しに教室を出る。




「おーい、ひでよりー?どこー?」



とりあえず5分くらいは探すことにする。

あいつの行動は読めないからな。


階段を歩いていた時であった。





ーー俺の時間が動きだす。





「た、……タケ……ル?」

「あ?」


目が赤い少女は、俺を見て涙を溢し、俺の胸に飛び込んでくる。


「タケル……。タケルっ!」

「う、うわわっ!?」



胸の中で彼女は突然俺の名前を叫ぶ。

名前を名乗っていないのに、なぜ彼女は俺の名前を知っている……?

ブレザーに付いた名前のネームを見たからだろうか……?


「会いたかった……、会いたかったよタケル」


彼女は俺の名前を愛しい者を呼ぶようにして叫ぶ。

俺には意味がわからない。

いつの間にか消えていた親友の秀頼を探していたはずが、そんなことは頭からはすっかりと抜け落ちている。


ただ、気付けば俺はこの名前すら知らない少女を抱き締めていた。

なぜだかわからない。

俺はこうしなければならないと、身体が勝手に動いていた。





【OPテーマ】

『悲しみの連鎖を断ち切り』


作詞:桜祭

作曲・編曲:Sakura festival

歌:スターチャイルド




レビュー一覧

投稿者:リアル本能寺

★★★★★

ファイナルシーズンのラストシーンで初代OPを流す演出は王道ながらも熱い展開で最高でした!

歌詞がまさかヨルから見たタケルへの心情を語ったものと知った時には脱帽しました。

まさか、こんなネタバレが仕込んでたのはズルい。

ファイナルシーズンのOPはタケルから見たヨルへの心情を語ったものと対になってるのが憎い演出。

これに永遠ちゃんが絡めばもっと最高だったと思いますね!

永遠ちゃんアフターストーリーのスピンオフ出してください。

好きなギャルゲーヒロインで永遠ちゃんが多分ベスト3に入るくらい好きです!

永遠ちゃん関連グッズをガンガン出して欲しいです!

個人的な話ですが、永遠ちゃんの立ち絵の2で追加された私服が1番可愛いと思うのに、2以降の永遠ちゃんが攻略できないのはおかしくないですか?

パッチはまだですか!?

永遠ちゃん私服増加パッチを10年でも待ちますのでよろしくお願いいたしますスカイブルーさん!

あと、宮村永遠のピロートークCDはイチャイチャしていて最高でした!

ウォークマンに入れるくらい好きです!

OPよりも永遠ピロートークを何回もリピートしてます!

どうして永遠をメインヒロインにしなかったの?

それだけが永遠ファン最大の欠点だと思います。

永遠メイン続編出してどうぞ。



投稿者:クルクル

★★★☆☆

曲は最高です。

ただ、この曲を聴くと好きな男の子が亡くなってしまったことを思い出し泣いてしまいます。

しばらくそっとしておいてください……(。´Д⊂)









『悲しみの連鎖を断ち切り』の体験版詐欺を書くのは楽しいですね。


ここから『悲しみの連鎖を断ち切り』シリーズがスタートしていきます。

続きを書くかはわかりませんが、だいぶクズゲスと人間関係が変わってます。


永遠ちゃんから『不快』と言われないとルートに入れません。

ゲームプレイ時の豊臣君にとってはご褒美でした。



消えていた秀頼は、1分前に教室に現れたのでセーフです。

純粋にタケルや円と会いたくなかったので誰もいない無人の教室でスマホを弄ってました。

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