12、明智秀頼は引き付ける
俺たちはあの後、いつものメンバーや山本らと挨拶をしていく。
そして、ヨル・ヒルも当然同じクラスであった。
彼女は俺を見て睨み、逆にタケルはヨルを見て睨んでいた。
なんでこんなことに……?
前途多難で、波乱万丈な原作の幕開けである。
その日は、早めに学校が終わりみんなと下校する。
隣の家である絵美以外は全員と別れた。
今は2人で人通りのない道を歩いている。
「広い学校だったね……」
「あぁ、電車通学だし大変だ……」
まだそこまで自宅が遠くないのが救いか。
ゲームだと、タケルが学校と自宅を行き来するのに3クリックくらいで終わるが、リアルでは3クリックの労力で終わるわけではないから大変だ。
山本の家は駅までも結構遠いので大変だと思う。
「それにしても、全員同じクラスは凄い偶然でしたね……」
「神の意思を感じるな」
神の意思というか、ゲームの強制力というか……。
それに同じクラスのヨルは厄介過ぎるな……。
ゲームではまぁ確かにあんな噛み付きが多いヒロインだったけど……。
あんまりヨルは好きじゃないんだよな……。
本人というよりかは、ヨルルートがあんまり好きじゃない。
でも、やっぱり綺麗にまとめるならタケルにはヨルルートを辿ってくれた方が俺も助かるわけで……。
ーーっ!?
「賑やかなクラスになりま……」
「絵美っ!?」
「え?」
呑気に喋っていた絵美を引き寄せ抱き締める。
「ひ、ひ、秀頼君!そ、そんな強引に!受け入れますけど……」
「絵美、早く逃げろ!」
「……え?」
「見ろ、襲撃された」
俺の頬に血の感触がする。
かすっただけだったが、軽傷を負った。
ナイフかなんかが絵美に投げられ、俺はそれから絵美を守った。
「秀頼君、血が……!?」
「良いから早く帰れっ!俺がどうにかする」
「ど、どうにかって言われても……」
「大丈夫だよ、死なねーよ。死なないために達裄さんから鍛えられたんだ、ほら行けっ!」
「っ!?……絶対帰ってね、秀頼君」
絵美は涙目になりながら俺に背中を向ける。
それで良い、必ず俺が絵美を死なせない。
「……何者だよっ!?」
「我は忍、ギフトを刈る死神だ」
艶のある黒髪をスラッと伸ばした女性が現れる。
ピタピタな網タイツに、太ももを露出し、もはや下着が見えるんじゃないかというほどに短いスカート、もはや布である必要であるのか疑問なほどに露出しまくりな上着、如何にもなくノ一属性のエロい衣装に身を包んでいる。
フィクションかよ!と突っ込みたくなるが、フィクション世界だったか。
「ギフト狩りか……」
「お前からは強いギフトの力を感じる。学校の時からお前をずっと付け狙っていた」
「ははっ、ストーカーじゃねーかよ」
「ストーカーではない、忍だっ!」
投げ動作もなく刃が忍から飛ばされる。
一直線に俺という的を狙った攻撃を態勢を低くして避ける。
マジで今日は災難ばっかりじゃねーかよ、いつ俺の人生はバトルものにシフトチェンジしたんだっ!
「よく避けるな。それに女を逃がす判断。実にあっぱれ。プライベートならお茶でも誘っていただろうに」
「あいにく、俺はコーヒー派だ」
大丈夫、この人より達裄さんの方が強い。
あの人の攻撃の方が早い。
心を落ち着かせる。
「俺は明智秀頼。君の名前は?」
「……上松ゆりか。同じクラスだ」
「クラスメートかよ……。出席番号近いな……。全然名前と顔が一致しねーよ。ただお前……、ストーカーの顔は覚えたぞ」
「ストーカーではない、忍だ」
上松ゆりか?
違う、ヒロインではないはず……。
上松?
あれ、なんだっけ?ゲームの冒頭にその名前が出てた気がする……。
思い出せ、確か……理沙。
理沙がその名前を出していた気がする。
もうちょっとで思い出せる。
スタチャみたいに立ち絵もないモブだった記憶はある。
上松、ゲームのどこでその名前が出たのか体験版詐欺をよく思い出せ。
「クラスメートにギフト狩りとかやってらんねーぜ」
「クラスメートではない、忍だ」
「わかったよ、忍だな!はいはい!」
「我の技の正体を見せてやる。アイスブレードギフト使用」
「は?」
「刃でくたばれっ!」
氷の刃を3発俺に向かい射出される。
俺は走り抜き、軌道を読み転がり、上松に近付く。
ギフト狩りのクセに思いっきりギフト使ってきやがって……。
ーーその女を殺せ。
「ぐっ……」
頭にノイズが走る。
俺の脳内で『敵を殺せ』と警告している。
「お前……、秀頼か……」
もう1人の俺が告げる。
あの忍を殺せと、指令を出す。
殺す……?
あぁ、思い出した。
こいつはあの……。
『クラスの上松さん、今日全裸の遺体で発見されたんだって……』
ゲームの中の理沙がタケルに言ったセリフだ。
ヨルの出会いからすぐにこのイベントがある。
「……っ!?」
「氷に貫かれろ!」
つまり、今日はこの女の命日だ……。
モヤモヤが晴れた瞬間、氷の刃が3つ俺に飛んでくる。
†
和風に上松ゆかりという名前を考えていたのに、ゆりかになっているのに気付かないで書き進めてしまい、修正するのが面倒になって上松ゆりかという本名に設定された謎のキャラクターです。
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