6、十文字理沙は怒鳴る
「ど、どうしたのみんな?空気重いけど……」
6人ぶんの注目が俺へ一点集中に集まる。
本当は6人が気まずい理由はわかってる。
明智秀頼に転生して以降、鈍感とみんなからバカにされている俺だが、流石にもう明日から高校生。
わからないはずもない。
達裄さんからも『最近は勢いと鋭さがあってカッターみたいに成長したね』と褒められた。
俺の鋭さはカッターみたいと揶揄された俺は鈍感を卒業したといっても過言ではない。
もし転生してすぐだったら『俺の取り合いしてる?』と自惚れた回答をしていたかもしれない。
しかし、色々な人間関係を築いた今、『タケルへ誕生日を贈るライバルの多さに直面して言葉がない状況』といったところだろう。
「まさか、タケルの誕生日プレゼント買いにこんなに集まってあいつは大人気だな。タケルは羨ましいな」
「そうですね、秀頼君!十文字君はモテますね!」
やっぱりそうだ!
絵美がついに肯定しました!
散々鈍感とバカにされ続けた俺はカッターの如く鋭いの称号を得ました。
「絵美……、何これ……?」
「本当はわたしと秀頼君で十文字君の誕生日プレゼントを買いに行く予定だったのにみんなが秀頼君に連絡をしたんですよね。『愛しの十文字君へのプレゼント何しよう?』そう考えて永遠たちは秀頼君へ連絡したはずです。ね、秀頼君?」
「うん。だから親友の俺が僭越ながらアドバイス係に徹しようかと」
「違いますぅ!」
永遠ちゃんが珍しく大声で否定しだした。
大きい声を出すこと自体があまりないから本当に珍しい。
「しかも絵美。なんで貴様は秀頼と腕を組んでいる?」
「わたしがしたいからです。秀頼君が腕を貸してくれました」
「こっちのゴミクズ先輩の腕もーらった」
「ずるいのーちゃん!」
絵美が腕を組んでいる反対側の左腕を和に取られた。
うわ、こいつは笑顔で関節技決めてきそうで怖い。
「ちょっと、明智君!なんなのよ、これ!?」
「え?みんな理沙の兄貴のために贈り物を買いたいっていう同士を揃えた。タケルには内緒だぞ」
「言えますかぁ!兄さんに8人でプレゼント買いに行きました、なんて言えないでしょ!?」
「それ気にする?」
「絶・対、気にします!」
絶対を強調する理沙。
なんかみんな今日はテンション高いなぁ……。
「おっす、こんにちは円」
「よくこの状況で私に挨拶できたわね」
「俺はお前から、タケルにプレゼントを贈るなんていう協調性が嬉しくて」
「いま絵美と和から腕組まれてるあなたの言葉は何も刺さらないからね……」
「は、ははっ」
現実を直視してなかったのに円はこういうこと言う。
「絵美!私と交換して」
「ウチもする」
「やだやだやだ、永遠にも咲夜にも譲りません」
「のーちゃん、お兄ちゃんの腕貸して?」
「ダメです。妹と兄はベタベタしないものです」
「……」
この状況を誰かどうにかしてくれ……、腹減ったし昼飯にしようぜ……。
俺はこの場から動く気配のないメンバーの行動に泣きそうになる。
だからみんなと行くと予定が回らなくなるんだ……。
「1回みんな明智君から離れなさい!」
理沙の一言の怒鳴りで、みんな一瞬で静かになった。
絵美も和も俺の腕から手を離しているし。
すげぇ、俺が何言っても言うことを聞いてくれないくらい嫌われているのに理沙の言うことは一言で聞くのか……。
好感度の暴力、ってやつか……。
「大体兄さんの誕生日プレゼントを買うメンバーおかしいでしょ!?明智君と絵美さん以外、ほとんど兄さんと会話しないじゃないですか……」
『…………』
理沙の説教で咲夜らが気まずい顔になっている。
これはちょっと可哀想だ。
タケルが好きなのが恥ずかしくて表現ができていないのを理沙は知らない。
俺がフォローに入らないと。
「兄さんのプレゼント購入を口実に違う目的を持ち、下心を隠した子が大半ですよね!」
「まあまあ、そんな怒るなよ理沙……」
「明智君……!」
「みんな下心持って良いじゃねーか」
「明智君……」
「みんな暇してただけだよ。タケルのプレゼント口実でみんな昼飯食べたいって誘っただけじゃんか」
「そんな可愛い目的ではない!絶対違う!」
理沙が俺を全力で否定してくる。
女性から強く言われると『マジか』ってなる。
「エイエンちゃんや咲夜だって受験疲れで遊びたかっただけだよね?」
「ですです!」
「うむうむ!」
「ほら?」
「調子の良いっ!」
永遠ちゃん、咲夜、円と普段の勉強の成果が出て志望校合格を果たしていたのだ。
学年の違う和と星子は仕方ないが、このメンバーがまた高校になっても一緒に行動できるのは嬉しい出来事だ。
「…………」
そういえば、夢で秀頼から生きてます宣言されてたんだっけ?
……あれ?大丈夫か?
今朝の不吉な夢が頭から離れなくて、急に不安になった……。
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