38、宮村永遠はオススメする

「なるほど!マスターさんの店をもっと人で溢れさせたいんですね!」


キラキラした目の永遠ちゃんは乗り気でマスターと咲夜の相談に乗っていた。

「そうですねー」と言いながら店を見渡す。


「やっぱり時代は動物カフェですよ、マスターさん!」

「ほう、中々面白い意見だね。秀頼君と咲夜では出ないアイデアだ」

「お前の親父口が悪いぞ」

「ウチの親として恥ずかしいぞ」

「君らの口の悪さを棚に上げて良く言うよ!僕より秀頼君と咲夜の方が言葉遣いも態度も悪いからね!?」

「あはは……、仲良くしましょうよ……」


永遠ちゃんが来たところで、やってることはいつも通り、貶し合いであった……。


「猫カフェ、犬カフェとか若い女の子に人気高いんですよ」

「よし、採用だ」

「秀頼君にはそもそも決定権ないからね?君、若い女の子狙いでしょ?」

「ウチも若い女の子。えっへん」

「威張る内容ではないよ、咲夜……」


マスターと永遠ちゃんが突っ込みにまわっていた。


「でも、この店を立ち上げたのがマスターの親ならば、その娘の家族の俺にも口を出す権利あるのでは?」

「あるな」

「咲夜にもそもそもないからね。僕しか決定権ないよ」


咲夜が「酷い!酷い!」と言いまくっていたが、マスターは涼しい顔をしてシカトをしていた。


「でもねぇ……。猫カフェは駅前にあるしなぁ……」

「じゃあ犬カフェならどうですか、マスターさん?」

「僕、犬苦手なんだよ。吠えるし」

「ウチは犬好き。犬カフェにしよう」

「絶対しない」


マスターは断じて犬カフェ反対派であった。

苦手なものをやれとは強く言えないものである。


「ふふふっ、マスターさん。私が良い動物知っているんですよ?」

「なに?本当かい宮村さん?」

「はい。この動物出せば人気出ると断言するのあります」


永遠ちゃんは強くオススメする案がありそうだ。

俺と咲夜はダメダメのオンパレードだったのに、永遠ちゃんの意見はちょっと乗り気になっていた。


「それは……、パンダです!パンダカフェにしましょう!時代はパンダです!マスターさん!」

「不可能だよ。動物園じゃないんだよこの店」

「えぇ!?パンダ可愛いですよ!?」

「そもそも個人でパンダ飼えるの?」


……永遠ちゃんの天然可愛い。

永遠ちゃんパンダ好きか!

趣味も可愛いかよ!


「……秀頼のデレデレ顔がむかつく」


良いなぁ、永遠ちゃんと一緒にパンダ見に行けるようなデートコースをタケルに提供しようかな。


「秀頼!ウチはお前と喫茶店をする案をやはり押し進めたい」

「……いや、不可能でしょ」

「秀頼さんは、何の動物好きですか!?」

「……ペンギン」

「ペンギンカフェですよ!マスターさん!」

「ペンギンカフェだ!マスター!ウチと秀頼でペンギンカフェにする!」

「却下」


こうして、今日はマスターの喫茶店をどうやって盛り上げていくかの議題は決まらずに終わった……。

こうなる気はしていた。

「でも色々な案が聞けて良かった」と、あんなグダグダトークをされてもきちんとお礼を言えるマスターは聖人だと思う。

絶対口にはしないけど。


「秀頼さん、パンダとペンギン見に今度行きましょうね!」

「行こう!楽しみだね、エイエンちゃん」

「ウチと今度、売れてる喫茶店めぐりだ秀頼」

「行こう!楽しみだね、咲夜」

「…………あれ?散々議題して秀頼君のデートスポットの案作っただけ!?」


永遠ちゃんと咲夜から一緒に遊びに行こうと誘われる。

ずっと受験勉強させてるし、良い息抜きになるなら受験免除の俺が永遠ちゃんと咲夜のストレス発散に付き合おうと思った。


そんなことをしてる内に……。


「こんにちはです!秀頼君来ました!」

「ちーっす!こんちはーっす」

「こんにちはです!スターチャイルド本当に来るんですよね!?楽しみにしてました!」

「暇だから来たわ」

「スタチャ楽しみっす!こんちゃーす!」


絵美、タケル、理沙、円、和といつも通りのメンバーが喫茶店に集まって来た。


「なんかその内、この店は秀頼の知り合いで常連客が埋まる気がしてきたぞマスター……」

「奇遇だね、咲夜。僕もまったく同じことを思ったよ」

「んなわけないでしょ!?あと、マスターのプライド無いんすか!?」


咲夜とマスターの怖い予言めいた言葉を否定しておいた。

おかしいな。

最初は俺だけが喫茶店にコーヒー飲みに足を運んでいたはずが、こんなに知り合いの集まる店になるなんて……。


「やぁ、こんにちは。マスターに秀頼。……って結構呼んだな!?」

「あっ、達裄さん。結構来ちゃいましたね」

「リア充か……」


達裄さんが苦笑していた。

俺、咲夜、マスター以外は達裄さんのことを知らないので「なんか色々してる人。俺の師匠」と軽く達裄さんのことを紹介した。


そして、全員に達裄さんを紹介後、彼からコソっと声を掛けられた。


「女の子ばっかりだね、秀頼。本命は1人に絞りなよ」

「大丈夫っす。この中から本命を探す気はないので」

「逆に凄いな……」


彼女らの本命がタケルにある以上、俺にはどうしようもないから仕方ない。

見栄を張ってもダサイだけである。

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