2、津軽円はイカサマを防ぎたい
ギフト適正検査終了後、津軽とはまた例の話合いをするという取り決めをしていた。
……のだが。
「ずっと天気悪いらしいわね」
「そうだな……」
ギフトで盛り上がるメンバーから離れて、廊下で雨が降る窓を見て俺と津軽は相談していた。
いつもの河原で相談ができない。
代替えの場所での相談が必要だ。
「これは明智君の家に私が行く流れね」
「いや、無理だ。絵美が隣の家だ。すぐ邪魔されに来る」
「え?付き合ってるの?」
「付き合ってねーよ!知らない内に家に居るんだよ!」
「もはや彼女よそれ……」
絵美が聞いたら憤慨ものの付き合っているとかいうレッテルを剥がしておく。
まったくタケルが近くにいるんだ。
俺の魅力は霞むだろうに。
絵美ルートは原作でも没にされた幻のルートだ。
タケルによる絵美攻略が見れるならファンとしては見てみたい。
……まぁ、別に原作の絵美は普通にただのモブみたいなものだから印象にも残らないし、プレイヤー視点だとすぐ死ぬネタキャラ扱いなので、そんなルート見たいかと言われれば別にって感じだが。
風呂敷広げまくった原作だから、非攻略キャラだけどルート見たいキャラ山ほど居るんだよ。
その中でいえば絵美は全然美味しい見せ場のない小物の悪役。
初代からファイナル全体を通してやると、最終的に『佐々木絵美って誰だっけ?』ってなるくらい印象の薄いキャラだ。
原作やり込んだ俺ですら、佐々木絵美の活躍5つ挙げろとか言われても無理だ。
そもそもそんなに出番もない。
津軽円ルートは結構見たいって意見多かったかな。
男子に対してさばさばしている彼女をデレデレにしたい変態ファンは多かった。
ただ、やはりシリアスに関わらない賑やかし要因。
攻略出来ない魅力的なキャラが多い原作で津軽円を優先させるにはちょっとパンチがない。
「ここは、津軽家へお邪魔するべきだ」
「いや、ゴミクズを家にあげるのは絶対ない」
「ゴミクズって言った?」
純粋な暴言に傷付く。
永遠ちゃんもゴミクズって言ってたけど、そもそもゴミクズってなんだ?
「あ、カラオケとかどうだ?」
「……やだ」
「なんで?」
「思い出を汚されたくない」
「ワガママばっかりだな……」
俺だって来栖さんと行ったカラオケの思い出を汚されたくないから飲み込んでおいた。
「マスターの店も咲夜が居るしな……。普通の喫茶店でも周りの目がある。やはり明智家か津軽家のどちらかだな」
「じゃんけんよ」
「あ?」
津軽が俺にグーを突き出す。
「私がじゃんけんに3回勝ったら明智君の家、明智君がじゃんけんに10回連続で勝ったら私の家よ」
「俺の勝利条件異常なんだが?連続って何?」
「ごめん、純粋にゴミクズを中に入れたくない」
「わかった、10回連続で負けたら素直に津軽家だな」
ギフト使えば余裕よ。
ようやくギフト使ってチートという明智秀頼オリジナルの特権を使える。
「ギフト使用禁止ね」
「そんな殺生な……!」
「イカサマじゃん」
俺が明智秀頼になったアドバンテージが一瞬でゴミクズになった。
「でも記憶消されたらギフト使ったとかバレないし……。……あ、じゃあ私じゃなくて十文字君とじゃんけんして。勝利条件はさっきので」
「わかったよ……」
『アンチギフト』の『命令支配』メタ持ちとじゃんけんになりイカサマが不可能になる。
正しい『アンチギフト』の使い方だ。
教室に居たタケルだけを呼びだし、じゃんけんにタケルが3回勝てば津軽の勝ち、10回連続で勝てば俺の勝ちの勝負が始まる。
「てか、津軽がじゃんけんすれば良くない?」
「私宗教上の理由でじゃんけんできないの。だから十文字君が代理」
「わかった!」
どんな宗教なのかとか気にならない?
本当にタケルは純粋だな。
「いくぞ、秀頼」
「じゃんけんぽん!」
やるなら本気で10連続勝利を目指す。
さて、最初はタケルが何を出すのか考えながら、俺はチョキを出した。
俺と津軽は雨の中、傘を差して歩き、そこそこ大きいマンションへ足を運んでいた。
つまり、そういうことである。
「わーい、円ちゃん家だ!」
「どうしてこうなるのよっ!」
タケルに10連続でじゃんけんに勝利した。
あいつ、パー率異常なんだよ。
幼馴染舐めんな。
10回中7回パーだった。
「お前の家結構金持ちなんだろ、ワクワク!ワクワク!」
「あー、うぜー」
津軽が家を開けて中に入ると、俺も続いて中へと乗り込む。
うわー、確かにここは良いマンションだ。
なんか壁も塗装がしっかりしていて新しい。
「凄い、玄関に変なタペストリーが貼られてる」
「お願いだから家の吟味するのやめてゴミクズ!」
「アダナみたいに呼ぶのやめろよっ!」
ゴミクズゴミクズって!
秀頼にももうちょっと優しくして世界!
玄関で騒いでいるとトコトコとした足音が廊下の音から聞こえてきて、玄関で立ち止まった。
「おかえりです、姉者!」
「ただいまー、和」
津軽の妹っぽい人物が挨拶をしていた。
凄い!
未設定の津軽円の妹まで再現されてる!
えー、めっちゃ凄い!
津軽の妹は、当然ながら俺をじろじろ見ていた。
「そちらの男性は姉者の友達ですか?」
「ううん、違うわ。彼はゴミ……ゴミクズよ」
「言い直そうとして、言い直さない!」
妹にすらゴミクズと紹介された……。
「よろしくです!ゴミクズ先輩」
「普通疑問持たない!?」
笑顔でゴミクズって……。
普段Mっ気のある俺には、変な性癖が芽生えそうになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます