35、佐々木絵美の対策

「今回の作戦について対策を練りました!」


次の日の日曜日、ギャルゲーをプレイしていると絵美が部屋に入り込んできた。

俺が今現在開いているパソコンへ目線が行く。


『うわわわっ!?胸、胸触ってるよヒロ君!?ってパンツも出てた!』

「…………」


ゲームをセーブさせて、終了させる。

そのままノートパソコンをスリープモードに設定しておいた。


「……早いな、絵美。待ってたぞ」

「待ってなかったでしょ絶対!絶対1人でエンジョイしてたよね!?胸が触ってるとかなんか聞こえたよ!?」

「ち、違う。筋トレでもっと胸筋を鍛えたかったから胸に力を付ける方法を検索していただけだ」

「いやいやいや、パンツも出てたとか言ってたよね!?」

「あぁ、半裸のボディビルダーがパンツ一丁の格好してたからパンツ出てたんだな」

「誤魔化し方が雑!またイヤらしいゲームしてたでしょ!」


まさかこんな朝っぱらから絵美が部屋に来るわけがないという油断が隙を見せてしまっていた。

というか、おばさんも絵美が来たことを報告してから部屋に案内して欲しい……。


「秀頼君さぁ、ギャルゲーを控えろとは言わないけど、ギャルゲーを控えて欲しいな」

「どっちだよ、めっちゃ矛盾してるじゃん!」

「そんな二次元の女のパンツを見るくらいならわたしのを見せます」

「見せるな、見せるな」


初対面の絵美のパンツをこっちはもう見たことあるんだよ。

どれだけあの出来事がトラウマで、罪悪感が凄かったのか、彼女には伝えられるはずもないが伝わって欲しい。


たまに暴走する彼女には参るね。


「それで、作戦というのは?」

「切り替えが早すぎない?こんなすぐに真面目なノリに戻せないんだけど……」

「いや、ここでグダグダしていてもエイエンちゃんは助けられない。やりきろう」

「凄い。まるでわたしが悪いことしたんじゃないかと勘違いしそうなくらい今の秀頼君はやる気に満ち溢れてる」


絵美は俺の雰囲気に圧倒されていた。

連続で5回ほどパチパチとまばたきをして、右手に拳を作り、「よし!」と呟く。


「じゃあ真面目に永遠の問題を解決させる作戦を立案しました」

「絵美が一晩でやってくれました」

「とりあえず……、」

「とりあえず?」

「秀頼君の出番はない」

「え?」


戦力扱いすらされなくなったことを絵美に告げられる。

そして、タケルも戦力扱いにならないらしい。

男2人、役立たずの烙印を押されてしまう。


絵美の真意がわからない。

ただ、あまりに自信に満ち溢れていた顔をしている。

絵美になら永遠ちゃんを任せられるし、任せたいという気持ちが込み上がってきた。


「よろしくお願いいたします。エイエンちゃんを、助けて欲しい」

「任せて秀頼君」


絵美が胸を張って俺の言葉を受け止める。

その姿は、とても頼れる男前な風格を漂わせていたのである。



ーーーーー



「おはよう、エイエンちゃん」

「秀頼さん、おはようございます」


次の日の朝、永遠ちゃんと教室に出会い挨拶を交わす。

今日の朝は機嫌の良さそうな彼女の顔で安心する。


「実は、土曜日の件。家庭環境に悩んでいる話についてなんだけど、その問題を解決しようと思ってね」

「え……?」

「エイエンちゃんが暇な日程を教えて欲しい」

「暇な日程……?」


今回の件は本当に俺はすることがない。

やるのは絵美と永遠ちゃんの橋渡し役をするということだけ。


そして、作戦の成功の有無は絵美らにかかっているのである。

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