27、谷川咲夜はお礼がしたい

永遠ちゃんから誘ってくれた。

その出来事が、俺の心を掻き乱す。

でも、俺が失敗したら本編永遠ちゃんみたいに心が勉強に支配されてしまうかもしれない。


そうなったら、永遠ちゃんを壊すだけでなく、俺の死亡フラグに繋がる。


デートという言葉に騙されそうになるが、いうなればトラブルハプニングに巻き込まれたこととも取れる。

どうすれば良いのか悩みながら、図書室で恋愛に関する本を開いていた。


「…………」


『待ち合わせ場所には早く着いておき、女を待たせない』の文章が視界に入る。

なるほどと思いながら、心で頷く。


「だーれだ」

「…………」


見えない。

目を隠された。


「おーい、秀頼?だーれだ」

「…………」


見えない。

文字が読めない。


「ふふふっ、ウチが秀頼の目を塞ぎました!だーれだ」

「…………」


見えない。

失明でもしただろうか。


「無視しないでぇ……!ウチが誰だか当てろよ!」

「…………」


見えない。

うるさい。


「ごめん秀頼!お願いだから許してぇぇ!」

「図書室では静かにしようぜ……」


俺の視界を塞いでいた手を離して、抱き付いて泣きつく谷川咲夜の姿がそこにあった。

そして、図書委員の人や図書室利用者の視線を一身に受けていた。


ペコペコ謝りながら咲夜を引き剥がし、小声で会話をする。


「全く、今日はどうした?」

「うん!秀頼の看病のおかげでウチは風邪を克服した!ありがとうな」

「別にいいよ」


ギフトの実験台にしただけなのに感謝されると後ろめたいし。


「そ、それで……、お礼がしたい」

「お礼?」

「う、うん!今週の土曜日!土曜日にウチのウチに来てくれ」

「土曜日か……」


さっきの永遠ちゃんとの予定が被った。

タイミングが悪いな、10分前だと土曜日空いてたんだが……。


「ちょっとタイミングが悪いな」

「え……?」


咲夜が涙目になって俺を見ていた。

そうやって俺の良心にダイレクトアタックをするのはやめてくれ……。


「日曜日だと良いんだが……」

「日曜日はマスターも忙しい……。みんな誘ったのに……、そっか貴様は居ないのか……」

「みんな?」


みんなってなんだ?とは思ったが複数人でカラオケとかボーリングとかに行く気だったのかもしれない。

悪いことをした……。


「ごめんなぁ、秀頼……」

「いや、謝るのは俺だよ。本当にごめん」

「まぁ、いっか!次は真っ先に誘うから!絶対空けておけよ!」

「わかったよ」


咲夜の用事が気になったが、あえて聞かないことにした。

内容聞いて『やっぱり永遠ちゃんのデートやめて咲夜と!』という気持ちになるのも嫌だし。

まぁ、永遠ちゃんのデートを断るのはファンとしてあり得ないけどな。


土曜日の予定が被ったのははじめてだったので、これからはもっと慎重に休みの予定を組み込もうと思うのであった。

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