5、ギフト持ちの犯罪
「だからっ!姉貴が自殺するわけないだろっ!どう考えても君がなんかしたんだろっ!?」
「なんかってなんだよ、おっさん?言い掛かりがうぜーんだけど」
ここ連日、おばさんの弟を名乗る変なおっさんが家にやって来る。
いつもはすぐに追い返すと消えるのだが、今日は中々にしつこい。
「姉貴は君に怯えていた……。怖い、旦那が殺されるかもって僕に何度も何度も相談してきたんだぞ!?その2人が自殺!?あり得ないだろそんなの!?秀頼、お前が殺したんだろっ!?」
「知りません。2人が自殺した時は俺は自宅に居ました。証人も存在します。どうか変な言い掛かりはよして帰ってください」
「ふざけた態度もいい加減にしろっ!」
はぁ……。
うるせぇシスコンだなぁ。
世の中シスコンしか居ないのか……?
『命令支配』使って退場させたり、黙らせるのも考えていたが、そんなの面白くない。
俺はこのおっさんの弱点という弱点を徹底的に探らせてある。
「姉貴がもしかしたら秀頼がギフト持ちじゃないかって怯えていた」
「あ?」
ギフト、その単語を聞いて一気に警戒心を上げる。
あのババア、ペラペラと喋っていやがったな。
「ギフトだったら殺しのアリバイとか要らないんじゃないのか!?『相手を自殺させる』ギフトとか前例も実際確認されている」
「ほぅ……」
『相手を自殺させる』ギフトねぇ……。
しょっぱいなぁ。
俺のギフトの完全下位互換だ。
自分のギフトが如何に優れた最強チート能力かというのを強く自覚する。
「『相手を自殺させる』能力とかではないにしろ、どうだ?ギフト持ちは図星だろう?僕は君をこれから『ギフト管理局』へ通報させてもらう。ギフト持ちの犯罪は重罪だ」
「…………」
「何を、……何をニヤニヤ笑っていやがるんだっ!」
通報ごときで俺に勝ったと思っているおめでたい脳内にだよ。
おばさんは無能だった。
その血が繋がった弟もやはり無能だったことがわかった。
「ちょうど俺のツレから連絡あってさ」
「ツレ?」
「そうそう、一応俺の彼女がこれからここに遊びに来るって」
そう言うと、ガラリと家の出入口が開かれる。
突然の音に、おっさんはそちらを振り替える。
「あっ、秀頼君こんにちは」
「おう、待ってたぞ絵美」
「エヘヘー」
短いツインテールを揺らしながら絵美が顔や手、脚を血で塗らした身体で笑いながら家に上がってくる。
ーー何かを引きずりながら。
「ま、待て!?オイッ!?」
「ちょっと、おじさん!セクハラやめて」
伸ばしたおっさんの手を払い除ける絵美。
絵美の払い除けた方の逆の手には女の脚が掴まれている。
「ちょうど車で待たせてたみたいだね。ダメだよ、おじさん?可愛い娘さんを車に閉じ込めるなんてかわいそー」
「咲夜……?」
「車のサイドウィンドウ割っちゃった、ごめんなさい」
申し訳なさそうに頭を下げる絵美だが、おっさんは絵美が引きずる女にしか目が言っていない。
「おい、……殺したのか!?咲夜を!?」
「あー…………。娘さんが暴れるからさ。ちょっと半殺し程度に殴っちゃった程度ですよ。おじさんはちょっと大袈裟に驚き過ぎです!ごめんね」
「ま、……ますたー」
血と涙で塗れた顔を娘はおっさんに向ける。
彼は絵美と俺に対して怒りを爆発させた。
「お前らぁぁぁぁ!姉貴のみならず咲夜までっ!?」
「あ。そういう暑苦しいの要らない。【突っ立って、黙って見てろ】」
「!?」
絵美がようやくおっさんの弱点を連れ出してきた。
こうやって相手を苦しめる時が1番楽しめるもんだ。
「ふへへ、あんたが推理したことと経験していること。2つのことからたどり着いたと思うがこれが俺のギフトだ。俺の命令には、誰も逆らえない」
「キャハハハ!秀頼君が、おじさんに娘ちゃんを殺せって言っても逆らえないからね。おじさんの負けー」
「ーーーーーー!」
何か言いたげだが、俺の命令がある限り口を開けない。
この場の勝利は俺が制した。
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