第4章 変人親子の喫茶店
1、喫茶店
「ちわーっす!」
「いらっしゃ……、また君か……」
「客によって接客しないのマスターの悪いクセだぜ」
「ならお金払ってくれないかな」
最近、俺は喫茶店に通うようになっていた。
この喫茶店のマスターは、俺の家族のおばさんの弟にあたる。
つまり俺から見ると…………、おじさん?
おばさんから『秀頼は身内だからいくらでも弟に奢ってもらいなさい』と言い付けられている。
絵美やタケルなどに『コーヒーは好きか?』と聞いても、みんなそんなに好きではないらしい。
俺も前世の小学生の時はコーヒーは飲まなかったので、気持ちはよくわかる。
苦さの良さに子供は気付けないんだよね。
「まったく……、姉貴に好きなだけ奢ってもらえって言われて来るのはわかるけど、君はもうちょい子供らしさが欲しいね」
「何言ってんのさ。マスターって子供とそんなに喋れないでしょ」
「生意気だねぇ……。メニューは?」
前世の年齢17歳+現在の年齢10歳。
心の中身はアラサーである。
廃れるよ、色々と……。
「いつもの」
「常連客気取ってるつもりなんだろうけど君まだ来て3回目でしょ……」
「でもメニューはわかるでしょ」
「はいはい、エスプレッソね」
口の悪いマスターであるが、とてもコーヒーの腕は良い。
話していて楽しいし、おじさん?という感じではなく兄ちゃん感覚で会話をしてしまう。
「姉貴もよくこんな生意気なガキ育ててるな」
「年齢より大人びていて聞き分けの良い子って評判だ」
「自分で言う?あと、姉貴は君のこと『すけこまし』って言ってたよ」
「おばさんが!?」
温厚なおばさんからすけこまし扱いされていたのにショックを受ける。
心当たりがまったく出てこない。
むしろ俺より、主人公のタケルのがよっぽどすけこましなんだが……。
すけこましの親友はすけこましみたいなニュアンスかもしれない。
「おっと、コーヒー豆が切れてるな。補充しないとねー」
マスターがやれやれと言いながら面倒くさそうに店の奥へ消えていく。
いつ来てもあんまり客がいない店でコーヒー豆が切れることあるんかいと水を飲みながら思う。
「ふーっ」
しかし、原作キャラクターが存在しない空気は落ち着くな。
最近は津軽という同族も増えるしで、心が休まらない日が続く。
口が悪すぎてあんまり津軽には関わらない方が良いというのが俺の結論である。
ぼーっと喫茶店のテレビを見ていると、来客を報せるベルの音がした。
客の来ない喫茶店の客の顔を見てやろうと目を向けると、同い年くらいの女のガキが1人で来店してきた。
「ん?」
「?」
その子供が俺に気付くと少し早歩きになって俺に近寄ってきた。
なんだなんだ?
意味はわからないが、黙って彼女の行動を目で追う。
「おい、貴様!ここはキッズが1人で来る店ではないぞ!今すぐ立ち去るんだ!」
「…………」
見て見ぬ振りをしてテレビを見る。
ギフト所有者による事件・事故多発のニュースをしている。
「無視をするな!キッズ、貴様に言っているのだっ!」
「…………」
忘れそうになるけど、俺もギフトの持ち主なんだなと思い出した。
『命令支配』、人間に持たせてはならない悪魔の力だ。
「無視しないでぇ……、お願いだから反応してぇ」
「なんなんだよお前は!?あと、君もキッズだからな!」
「ウチは良いのだ。だが、貴様はダメだ。帰ってもらおう」
「…………」
「無視しないでぇ!」
うぜーガキに付きまとわれた……、とどんな反応をすれば良いか考える。
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