第五章 汝、罪有リ
堕ちたイカロス
考えろ、考えろ!
考えながら
自分の持ち得る技能を!シーヴァン達と相対してきた今までの経験を!エクスレイガの
レガーラの
エクスレイガは夏の陽光に装甲を輝かせ、熱気に満ちた猪苗代の蒼穹を必死に駆けた!
****
「ティセリアちゃん!鼻ち〜ん!」
「ぐしゅっ……ち〜〜んッッ!!」
痛みが引いてやっと泣き止んだティセリアの鼻水をティッシュで拭き取りながら、時緒は活路を見出すべく思考をフル回転させる。
エクスレイガに立体的な空間高速機動を与えてくれたイカロス・ユニットは損傷し、今は寧ろエクスレイガの動きを重くする
果たして……どうしたものか……!?
ルリアリウム・ブレードでレガーラの
「ぁ……!」
一瞬、時緒の頭に閃きが疾った。
エクスレイガが初めてイカロス・ユニットと合体した時。そして……。
『いやぁ……無茶苦茶な戦法だ……』
『これは……やられた方はショックだよ……』
この間、カウナとラヴィーに観せていた……二人が失笑していたロボットアニメで、主人公が行なっていた起死回生の戦法……!
思い立ったが吉日!時緒は即座にイナワシロ特防隊基地へ連絡を取った。
「……母さん!」
『おっ!?』
いきなり通信を入れられたことに驚いたのか、立体ウインドーの向こうで、ままどおるを咥えた真理子が阿呆面を浮かべていた。
『時緒!?なんか動きがトロ……ってお姫ちゃん!?なんで乗ってんの!?』
「そんなことはどうでも良い!」
「うぎっ!?」
時緒にどうでも良いと言われたティセリアは気分を害し、しかめっ面で時緒の後頭部の旋毛を睨んだ。『旋毛を睨まれた奴はハゲるぜ……!』と、正文に教えられたからだ。
「以前真琴が使ったイカロス飛ばすコントローラー!あれエクスのコクピットに無いの!?」
『アレか!?無えよ!あのコントローラーは牧センパイが半分趣味で作ったヤツだから……』
ままどおるを嚥下しながら、真理子は首を横に振った。
どうやら無いらしい……。時緒は落胆し、新たな活路は無いかと考えようとしてーー。
『こんなこともあろうかと』
その時、立体ウインドーの端から牧が顔を出し、気の抜けた笑みを浮かべて時緒を見た。
『こんなこともあろうかと……あのコントローラーのアプリ版を作ってみた』
「アプリ版!?流石牧さんっ!!」
『何か手があるようだな?今からアプリを時緒の
エクスレイガの
迫り来る二基の
パイロットスーツにしまっておいた時緒の携帯端末が軽快な電子音を立てた。
藁にもすがる思いで時緒は端末の画面を見る。
好機!牧の言っていたアプリが送信されている!
時緒は操縦桿片手に携帯端末を操作し、アプリをダウンロード、起動させる。
端末の画面いっぱいに、一昔前のゲームコントローラー……を模したグラフィックが投影される。
起動確認!端末をイカロスに同調!
「ティセリアちゃんっ!」
「うゅっ!?」
時緒は携帯端末を座席後部のティセリアに放り投げた。
ティセリアの小さな手が端末を見事キャッチしたことを確認すると……。
「ティセリアちゃん、よく聞いて欲しい……!」
時緒はティセリアに自分の作戦を打ち明けた。
……………………。
「……うゅゆっ!?トキオほんきうゅ!?ホントにそれやるゅ!?」
つぶらな瞳を見開いて驚くティセリアに、時緒は冷や汗で額を濡らしながら強く頷いて見せた。
「この戦い……敗けられない!僕はエクスレイガの操縦で手いっぱいだから……イカロスの操縦は……ティセリアちゃんに任せたいっ!」
「う…………!」
時緒の決意。レガーラから滲み出るシェーレの禍々しい敵意とはまるで違う、闘いを通じて相手と分かり合いたい時緒の清廉な気迫を感じ取ったティセリアは……。
「……オッケー!まかしてなのョ!」
携帯端末を握り締め、大きく二度頷いた。
その幼い瞳には、時緒のそれと遜色の無い決意の炎が燃え始めていた。
****
レガーラの粒子砲が縦横無尽に乱射される。無茶苦茶な火線にエクスレイガは避けきれず、装甲各所を灼いた。
「大丈夫!
「うゅ〜〜っ!!」
しかし時緒は、エクスレイガはたじろぐこと無く、限界ギリギリのイカロス・ユニットを駆動させて天高く舞い上がる。
エクスレイガが太陽に隠れた。直射日光に目が眩み、レガーラはエクスレイガの
ガコン、金属同士が擦れる音と微かな振動と共に、エクスレイガの腰からイカロス・ユニットが解除される。
「ティセリアちゃん!イカロス・ユニット……ユーハブコントロール!!」
「うゅっ!あいはぶこんとろ〜りゅ!!」
途端、イカロス・ユニットはスラスターを全開!光の翼を広げ、内包したルリアリウム・エネルギーに自身を焼かれながら、一気に急降下する!
レガーラ目掛けて!
「シェーレ!よくも……よくもみんなとの思い出をジャマしたな〜!!」
覚悟のティセリアによって弾丸と化したイカロス・ユニットが、虚をつかれたレガーラの頭頂部へと突き刺さる!
「シェーレの……バカたれ〜〜!!」
数秒置いて、イカロス・ユニットは……エクスレイガに空の自由を与えてくれた翼は、レガーラの装甲表層部を道連れに、爆炎と轟音を伴って砕け散った!
ルリアリウム・エネルギー由来の炎が膨れてレガーラを包み込み、その巨体が空中でグラリと傾く。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁあっっ!!」
まだ!まだ終わらない!
炎の泡を突き破り、基本形態のエクスレイガも自由落下に身を任せ急降下!
「磐越っ道っ!十文字斬りいぃぃぃああっっ!!」
淀みの無い時緒の光の刀剣は、イカロス・ユニットの爆散箇所を確実に、燃ゆるレガーラの躯体を十字状に斬り裂いた!
レガーラの斬断箇所から粒子光が鮮血の如く噴き上がり、更なる爆炎へと変じた!
手応え……有り……!
だが……!
「うああっっ!?」
「うぎゃ〜〜っ!?」
突如襲い来た衝撃に、時緒とティセリアは揃って悲鳴をあげた。
炎の向こうから現れたレガーラの
バキバキ……バキバキ……!エクスレイガの
エクスレイガを……握り潰す気だ……!
続く
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