第37話

それからも教室とひとつひとつ調べて回った。



どこにも舞も姿は見当たらない。



トイレや更衣室も確認していく中、大志が図書室の前で足を止めた。



「ここかもしれない」



なにか直感でもあったのかそう言うとドアを開けた。



図書室の床は絨毯が引かれていて防音効果がある。



その上を歩いて進んで行くと、暗がりの中に誰かの姿を見つけた。



一瞬誰だかわからず3人同時に足を止めた。



そして大志が一歩前に踏み出した。



「舞か?」



声をかけると、うずくまっていた人物がはじかれたように顔を上げた。



そしてあたしたちの顔を確認するとすぐに駆け寄ってきた。



間違いなく、舞だ。



「よかった。無事だったんだね」



「うん……!」



安堵したせいか、舞の目には涙が浮かんでいる。



「図書室ならあまり生徒たちは来ないと思って逃げ込んだの」



「そっか」



大志が慰めるように舞の頭を撫でている。



図書室の中を見回してみると、漫画喫茶のように個室になったスペースが3つほどあった。



上から覗き込まれない限り中は見えない。



さすがに内側から鍵をかけることはできないだろうけれど、逃げ込むスペースとしてはいいかもしれない。



舞はこのスペースのことを知っていたのかもしれない。



4人になったあたしたちは一度3階の空き教室へと向かった。



3階の廊下に転がっていた一の死体はすでに片付けられている。



空き教室の中は随分と荒らされていて、机や椅子がなぎ倒された状態だった。



文化祭や体育祭の道具に紛れて、あたしたちが隠れていると考えたのかもしれない。



保健室へ行く判断をしなかったらどうなったか、想像するだけで恐ろしい。



あたしたちは手分けをして散乱したおにぎりをかき集めた。



ペチャンコになっているものもあるけれど、ナイロンにくるまれているから食べられる。



学校から出られないあたしたちにとって、これは貴重な食料だ。



今日みたいに優しい職員さんに当たればいいけれど、きっとそんなにうまくいく日は続かない。

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