第19話

あたしは一段階段を上がって舞の頬に手を伸ばした。



数字に触れてみると、肌の奥に硬い感触がある。



「これ、チップが関係してるんだろうね」



舞は小首を傾げていった。



あたしは聡介へ視線を向ける。



この数字はやっぱり本物だ。



あたしたち2人だけで学校中を逃げ回るよりも、仲間がいたほうが心強い。



それに、あたしたちはちょうど隠れられる場所を探していたところだ。



スマドで時間を確認してみると、授業が終わるまであと3分になっていた。



もう迷っている暇はない。



「行ってみよう」



聡介の言葉にあたしは頷いたのだった。


☆☆☆


3階に到着すると舞は3度ノックをした。



すると中から足音が聞こえてきて「誰だ」とと子の声が聞こえてきた。



「舞だよ。友達を見つけてきた」



「番号は?」



「326」



答えると鍵が開けられる音がして、ドアが開いた。



「番号を聞かれたら、自分の商品番号を答えてね」



舞は説明しながら教室内へ入っていく。



あたしと聡介も後に続いた。



「早くドアを閉めて鍵をかけて!」



中にいた女子生徒に言われ、あたしはすぐに鍵をかけた。



3階の端の教室は確かに空き教室になっていた。



といっても、ほとんどが倉庫みたいなものだ。



文化祭などで使った道具が押し込められていて、後ろ教室の半分を覆っている。



そんな中にいたのは3人の生徒たち。



男子が2人に、女子が1人だ。



叫んだ女子は顔色が悪く、隅の方で三角座りをしている。



男子2人はまだ元気そうだ。



「これで全員か?」



鍵を開けてくれた男子生徒が舞へ向けて聞く。



「たぶん、そうだと思う」



「この学校だけで商品が6人もいるなんてな」



「ランダムだなんて本当なのかな?」



2人は会話をしながらそれぞれ椅子に座った。



あたしと聡介はその場に立ち尽くしたままだ。



どうすればいいのかわからず4人へ視線を向けていると、背の高い男子生徒が立ち上がって近づいてきた。



とっさに身構えてしまう。



「これで全員ってことで、自己紹介でもしておこうか。まずはこの2人を連れてきた舞から」



「そうだね。あたしはもう1度自己紹介したけど、一応ね」



舞はそう言うと椅子から立ち上がった。



「1年C組の尾上舞です」



「俺は2年D組の宇城大志(ウジョウ タイシ)。柔道部だ」



舞の隣に座っていた大柄な男子生徒が言った。



柔道部だといだけあって制服の上からでも筋肉がついているのがよくわかった。



「で、俺は3年B組の甘倉一(アマクラ ハジメ)。それで、そっちで震えてるのは同じクラスの西京花子(ニシキョウ ハナコ)」



一が隅で三角すわりをしている女子生徒をあごで示して言った。



花子はうつむいたままで顔をあげようとしない。



それからあたしと聡介はそれぞれ自己紹介をした。



念のためにみんなの右頬を確認していくと、確かに数字が書かれているのがわかった。



みんな、仲間なんだ……。


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