第478話「単純に比較すると、ヨートゥン1体がオーガキング2倍の強さだ! 念の為、2,5倍くらいの換算で良いか」

ケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟は大きくジャ~ンプ!!!


「獄炎波」に焼かれるヨートゥンの急所、喉元を喰いちぎっていた。


しかし、先ほどとは全く違う。


原因不明な……異変が起こっていた。


血が止まらない。

傷口が修復されない。

元に戻らない。


先ほど、ファイアドレイク、ジズの、牽制かく乱攻撃では発動した、

恐るべきヨートゥンの再生能力が、全く効果を表さないのだ。


魔獣兄弟に喰いちぎられた喉ぶえは、回復の兆しを見せない。

鮮血を吹き出しながら、無残な傷口をさらしていた。


苦しそうに、傷口を押さえながら、ふらふらふらと、たたらを踏むヨートゥン。


そこへ、ケルベロス、オルトロスが体当たりの猛アタック。


巨体を誇るヨートゥンが呆気なく吹っ飛ばされた。


ずっし~~んんん!!!!!


ずっし~~んんん!!!!!


凄まじい地響きを立てて、朽木のように倒れるヨートゥンは、

手足をぴくぴく震わせ、反撃の気配はない。


やはり先ほどの、喉ぶえへの一撃は致命傷だったようだ。


リオネルは見抜いていた。


まず冥界の蒼き炎、「獄炎波」が、

ヨートゥンの持つ再生能力を著しくダウンさせた。


リオネルと仲間達にとって、

回復、再生さえしなければ、ヨートゥンのアドバンテージは無きに等しい。


また喉ぶえをかみ切った瞬間、魔獣兄弟は、ヨートゥンの体内を破壊するような、

強い魔力をも放っていた。


その魔力が、ヨートゥンの体内へ入り込み、致命傷を与えるに等しく、

破壊したのだろう。


推測したリオネルは、すぐにピンと来た。


魔獣兄弟がヨートゥンの体内へ放ったのは、自分が持つ魔法、スキルに例えれば、

魔力で敵の体内を撃ち抜く、『貫通撃』みたいなものだと。


で、あれば!

戦い方は、既に決まっている!


……ヒュドラとの戦い方を応用する!


破邪聖煌拳はじゃせいこうけん奥義、破魂拳はこんけんに、

スキル『貫通撃!!』の魔力を込める『破魂貫通撃』を、

思い切り『極大レベル』で放つ。


そして、魔獣兄弟の「獄炎波」のように、

ヨートゥンの持つ再生能力を著しくダウンさせる。


その上で、魔法でも物理でも、攻撃して致命傷を与えれば良い。


頷いたリオネルは、ゆっくりと地上に降りた。


自分が倒すと宣言した ヨートゥン3体を見据える。


す~は~。

す~は~。

す~は~。


魔法使いが使う独特な呼吸法で、リオネルは体内魔力を上げて行く……


そしてリオネルは、『破魂貫通撃』を思い切り『極大レベル』で、

3回放ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ぱああああああっっっっ!!!!!

ぱああああああっっっっ!!!!!

ぱああああああっっっっ!!!!!


リオネルの『破魂貫通撃』を受けたヨートゥン3体を白光に包まれ、

光り輝いた。


攻撃魔法の効果を加えない『破魂貫通撃』にさして威力はない。

痛み、ダメージを感じてはいないだろう。


だがリオネルの推測が当たっていれば、『破魂貫通撃』は、

ヨートゥンの再生能力を著しく低下させるはずだ。


そうこうしている間に……元の場所にリオネルはもう居なかった。


転移魔法で、既にヨートゥン3体へ肉薄している。

距離は、ヨートゥン達から、3mもない。


まず、リオネルは破邪聖煌拳はじゃせいこうけんを試してみる事にした。


……確か、オーガキングを拳一撃で倒したはずだ。

ヨートゥンはどうだろう。


頷いたリオネルは、大地を蹴り、猛ダッシュ。


あまりにも速すぎて、リオネルの動きをヨートゥンは捉えられない。

触れもしない。


リオネルは、右端のヨートゥンの懐へ潜り込み、どてっぱらへ、


どっごおわっっっっっ!!!!!!!!!!


肘が見えなくなるくらい、強烈なパンチを打ち込む。


以前オーガキングを一発で絶命させたパンチである。


ぐははああっっっっ!!!!!


リオネルのパンチを喰らい、ヨートゥンは、苦痛に呻き、悲鳴をあげた。


結構なダメージを受けたようである。


しかし、オーガキングとは違い、絶命しない、たおれない。


大ダメージを受けたのみで、ふらふらと身体を震わせるだけだ。


もう一発。


リオネルは軽くジャンプし、あごの下部へ、ボクシングでいうアッパーカットを放つ。


どっごおわっっっっっ!!!!!!!!!!


最初のパンチでダメージを受けて踏ん張れなかったせいか、

リオネルのパンチを喰らい、ヨートゥンはあっさりと10mほど吹っ飛んだ。


ごろごろごろごろと、転がり、最後は大の字となり、無様に砂漠へ伏す。


どうやら『瀕死』の状態らしい。


再生能力が働いている様子はない。


パンチ2発でKOか!


……単純に比較すると、ヨートゥン1体がオーガキング2倍の強さだ!

念の為、2,5倍くらいの換算で良いか。


さあ、とどめだ!

再生能力が効かないようだし、もう楽にしてやろう。


『爆炎!』


リオネルから神速で放たれた火属性の『爆炎』!

火界王パイモンから授かった究極魔法だ。


すると!

何と何と!


リオネルの『爆炎』は完全に制御され、炎が燃え広がぬよう、

有効範囲を倒れ伏したヨートゥン周辺に狭めて発動させていた。


リオネルは修行の果てに、爆炎の有効範囲まで、自由自在に制御可能となっていたのだ。


どごおおおわあああああんんんんんんん!!!!!!!!!!


一瞬のうちに!


横たわった霜の巨人ヨートゥンは凄まじい魔法炎に巻き込まれ、

復活不可能な塵となっていたのである。

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