第475話「こりゃ、モチベーションが上がるぜ!」

特異スキル『フリーズハイ』レベル補正プラス60により、

『戦闘不能』となっていたヒュドラは、あっさりと消し飛んだ。


……消し飛んだヒュドラが居た辺りは……何の痕跡もない。


以前、上層階で、『破魂貫通撃』を放ち、

不死者アンデッドのマミーを倒した時と全く同じ。


正確には塵となって、ヒュドラは四散したのだろう。

だが、見た目は完全に、『無』となっていた。


気配も完全に消えている……


よし!


上手く行った!


マミー同様、ヒュドラをも消滅させた『破魂貫通撃はこんかんつうげき』は……

破邪聖煌拳はじゃせいこうけん奥義、破魂拳はこんけんに、

スキル『貫通撃!!』の魔力を込め、不死者アンデッドの魂を完全に破壊する、究極奥義である。


そもそも不死者アンデッドとは、死にぞこないとも言われ……

実態は、生前のむくろに付着した、さまよえる魂の残滓ざんしである。


残滓とは、残りかすを意味する言葉。

用に供された後に残る価値のないもの。


つまり不死者アンデッドの『本体』は、

不完全体である魂の欠片かけらなのだ。


だからこそ、リオネルは、トライしようと決めた。


首を全て斬られ、切り口を焼かれ、大ダメージを受け、死にかけても、

首1本から復活しつつあるヒュドラは、不死者アンデッドに限りなく近いのではと推測したのだ。


であれば、不完全体……死にぞこないの魂を打ち砕く『破魂貫通撃』ならば、

充分通用するはずだ、とも推測。

試してみようと決めたのである。


まさにトライアルアンドエラー。


だが相手が相手である。

命を懸けてまで無理やり挑むのは、リスクが大きすぎる。


ケルベロス達仲間に迷惑をかけないよう事前に避難させる。


自身に毒や瘴気が通用しない。


万が一の場合、転移魔法ですぐに脱出が可能。


……リオネルは、そこまで準備した上でトライしたのである。


この究極奥義は不死者だけでなく、不死の魔物に有効かもしれない。


魂を破壊しないと、倒せない……例えば吸血鬼とか、悪魔とか……

もしも奴らに遭遇した時、切り札として使おう。


……不死者相手に、威圧と破邪の魔力、対不死者魔法アンチアンデッドマジック破魂撃はこんげき』とともに、訓練だけはしておくか。


はは、『破魂貫通撃はこんかんつうげき』と『破魂撃はこんげき』か、

まぎらわしいかな……どちらかの改名も考えておこう。


リオネルの前には、ドラゴンゾンビを倒した時同様、

討伐したヒュドラが住み家としていた、

どす黒く濁り、ぶくぶく泡立つ沼地が広がっていた。


ドラゴンゾンビの住み家だった湿地帯同様、主を倒しても、

この沼地からは、悪臭と、強烈な瘴気が発せられている。


さあ!

仕上げだ!


「この沼地も、本来の姿へ戻してやるからな」


リオネルはつぶやくと、呼吸法で体内魔力を上げてゆく……


そして心で強く念じる。


『地の管轄者ティエラ様の名のもとに! われリオネル・ロートレックが! 大いなる加護を与えよう! 汝らに、めぐみよ、あれ!』


その瞬間!


ぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱぱっっっっっっっっ!!!!!


リオネルの言霊ことだまに応えるよう、沼地全体が、まばゆい白光に包まれたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ヒュドラが出現した沼地帯全体が、

正視不可能なくらい、まばゆい白光に包まれた。


すると!


湿地帯を覆っていた、酷い汚れは勿論、猛毒とおぞましき瘴気があっという間に、

かき消えて行った……


汚れ、猛毒、瘴気が消えるのと同じく、まばゆい白光も徐々に治まっていく。


よし!

この浄化も、後、何回か行使すれば、もっと上手くやれそうだ。


リオネルが満足そうに頷いた瞬間。


ヒュドラを倒したリオネルの心の中へ、

あの独特のランクアップファンファーレが鳴り響き、内なる声が淡々と告げて来た。


チャララララ、パッパー!!!


リオネル・ロートレックは、レベル31に到達しました。


チートスキル『エヴォリューシオ』の効果により、


身体能力、五感が全般的に大幅アップしました。


体内魔力が大幅に増量しました。


魔力回復力が大幅にアップしました。


魔法攻撃力が大幅にアップしました。


物理攻撃力が大幅にアップしました。


対魔法防御力が大幅にアップしました。


対物理防御力が大幅にアップしました。


魔力軌道制御力が大幅にアップしました。


『破魂貫通撃』の熟練度が大幅にアップしました。


『地の浄化魔法』の熟練度が大幅にアップしました。


ここで終わりかと思ったリオネルであったが……


少し間を置き、内なる声が淡々と告げて来た。


……リオネル・ロートレックは、ドラゴン族を、数多ノーダメージで倒しました。


チートスキル『エヴォリューシオ』の効果により、


ギフトスキル『ドラゴンスレイヤー』の能力がアップします。


ドラゴン族への物理及び魔法攻撃力が30%アップします。


ドラゴン族からの物理攻撃が20%ダウンします。


ドラゴン族からの特殊攻撃が15%ダウンします。


おお!

レベルが『31』へ上がった!

『破魂貫通撃』『地の浄化魔法』の熟練度が大幅にアップしたぞ!


そしてギフトスキル『ドラゴンスレイヤー』の能力もアップしたのか!


やったあ!

レベルアップと、各パラメータ、

そして『破魂貫通撃』『地の浄化魔法』の熟練度が、大幅アップだ! 

すっげえ嬉しい!


『ドラゴンスレイヤー』の能力アップは微増だけど、地味に嬉しい!


これで更に竜……ドラゴン一族に対し、優位性を持てる!


今まで以上に、楽勝で倒せるって事だ。


……レベル30になり、ギフトスキル『ドラゴンスレイヤー』を得てから、

それほど時間は経っていない。


でも、能力がアップしたという事は、

それだけドラゴン族の討伐経験値が高いという事。


もっともっと頑張れば、すぐにレベルアップ出来る!

各パラメータもな!


こりゃ、モチベーションが上がるぜ!


ドラゴンにも無双出来るかも!


目指せ!

無双の『ドラゴンハンター』!


但し、仲間の竜には優しく……だな!


成果を確認し、しっかりと実感したリオネルは、満足そうに頷いたのである。

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