第463話「待ってました!とばかりに、 リオネルは地の魔法、貫通撃を込めた『超高速の岩弾』を猛発射」

……引き続き、リオネルは、地下121階層の探索を続ける。


行く手に障害物があっても、ノープロブレム、全く問題はない。


先述した通り、高い崖は飛翔魔法でひとっ飛び。


ごつごつした巨石だらけの岩場、砂漠も同じで、軽々とクリアする。

転移魔法も臨機応変に使う。


道がなく倒木等でまっすぐ進めない複雑な地形の密林では、

飛翔魔法、転移魔法で高い樹木の一番上に上る。


辺りを見回し、木伝いにこれまた飛翔魔法、転移魔法で移動し、ゆうゆうと脱出する。


渡河不可能な川では、飛翔可能以外に、転移魔法を使い、向こう岸へ移動。

沼や浅瀬、湿地帯も同様だ。


また、川や沼において、水中に潜む敵が居ない事を確認した上で、

ウンディーネのマイムから、そして水界王アリトンから授かった『水の加護』により……

水上を歩き、あるいは水上に立ったまま、水を操り、波を立て、渡ったりもした。


このように探索していると、当然ながら敵に遭遇する。


竜――ドラゴン3体の次にリオネルの前に立ちはだかったのは、

沼と湿地帯が混在した地形に出現した、南方の動物ワニのようなタラスクスだ。


しかし数は1体のみ。


補足しよう。

タラスクスは個体差があるが、体長は5m~8m。

六つの足と甲羅を持つワニのようなドラゴンであり、

甲羅には鋭い剣のような突起物がたくさん生えている。


また甲羅以外の部分も、逆立った鋭いウロコにおおわれており、

近づく者を容赦なく突き刺す。


尾はサソリの尾に似ていて、自由自在に動き、毒を注入する事は勿論、

人間を絞め殺す事が可能である。

膂力が強い足には熊のように尖った爪があり、敵へ大きなダメージを与えるという。


加えて、タラスクスの息には強い毒があるので、

攻撃前に、相手を殺してしまうこともあるのだ。


リオネルが遭遇したように、タラスクスは、水辺に出没する事が多い。


人肉を喰らい、狩りの際は水中に身を隠し、

川辺を歩く人々を襲ったり船を沈めるという。


だがタラスクスは、森林、原野でも生息する事が可能だ。

古文書には、森林で旅人を襲ったという記載が残っている。


タラスクスのスペックを考えると、

物理攻撃オンリーの冒険者や、高位の魔法が使えない術者には、相当な難敵である。


しかし、リオネルと仲間達にはどうという事のない敵だ。


頑丈な外皮と毒のある突起に守られ、膂力は強く尾の毒針はある。


でも毒息以外、特殊攻撃はない。


先ほど倒した炎を吐く竜……ドラゴンの方がまだ手ごわい。


既述しているが、究極防御魔法『破邪霊鎧はじゃれいがい』の効果で、

リオネルに毒、石化は効かない、無効化してしまう。

ちなみに、修行の結果『破邪霊鎧はじゃれいがい』もレベルアップし、

現在のレベル補正はプラス40から『60』となっていた。


という事で、初見の魔物でもあり、

今回もリオネルは単独で倒す事に決めたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


今回も、仲間達は竜の時と同じように上手く『牽制』してくれた。


ケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟、火の精霊サラマンダーに擬態したファイアドレイク、1mの鷹に擬態した鳥の王ジズは……


まるでからかうかの如く、ヒットアンドアウエイ戦法でタラスクスを挑発。


たまに軽く一撃を入れ、怒ったタラスクスが攻撃するのを、

すいすいとかわしていた。


アスプはまたも『予備隊』となり、第三者の登場他、トラブル、アクシデントに備え、遠巻きにして見守っている。


しばらく、仲間達とタラスクスの戦いを見守ったリオネル。


初見の竜の時と同様……

優秀な仲間達のおかげで、タラスクスの動きほぼ全てを見切る事が出来た。


『ありがとう。参考になったよ』


リオネルのねぎらいの言葉と同時に、仲間達はす~っと、潮が引くかの如く撤退。


このタイミングで、リオネルは転移魔法を発動。


転移トランジション!』


仲間と入れ替わりに、いきなり!

リオネルがタラスクスの目の前に現れた!


距離は10mもない。


ぐはおおお!!!???


驚愕するタラスクスだったが、現れたのは一見、単なる人間族の少年。


同じ人間族の冒険者を何度も喰い殺したタラスクスにとっては、

久々の『ご馳走』である。


ぐはおおおおおおおおお!!!!!!


咆哮したタラスクスは、毒の息を吐き散らす。


タラスクスの毒はヒュドラにこそ及ばないが、アスプ、コカトリス、バジリスク並みの猛毒である。


対して、リオネルは毒を浴びせられても、その息の臭さに閉口し、

腕を組んだまま、顔をしかめるだけ。


毒にやられ、たおれるどころか、膝をつく気配さえ全くない。


それどころか、戦闘態勢にも入っていないのだ。


ぐはおおおおおおおおお!!!!!!


矮小な人間に余裕で遊ばれ、憤怒のタラスクスは、突進。


前足の爪で、リオネルを薙ぎ払う。


しかし!

リオネルは、タラスクスの動きを完全に見切っており、楽々とかわす。


焦れたタラスクスは、遂に巨大な口をあ~んと開け、リオネルを噛み殺そうとした。


だが、ここで!


「待ってました!」とばかりに、

リオネルは地の魔法、貫通撃を込めた『超高速の岩弾』を猛発射。


ばしゅっっっ!!!!!


どごわあああああっっっっっ!!!!!


タラスクスの口から、体内へ撃ち込み、破壊! 即死させていたのである。

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