第445話「待ってました! とばかりにふっと笑ったリオネル」

ミノタウロス3体、合成魔獣キマイラ3体、リザードマン30体、

そして狼男ワーウルフ10体を、あっさり倒したリオネル。


このフォルミーカ迷宮へ入ってから、

向かうところ敵なしで探索を続け、地下94階層へ降りた。


リオネルは実感する。

このようにスムーズに探索が出来るのは、

英雄の迷宮における、実戦を含む様々な経験が活かされているのだと。


一緒に冒険したモーリス、ミリアン、カミーユ、

ブレーズ、ゴーチェは元気だろうかと、思いをはせる。


さてさて!


リオネルの戦法は、身体束縛のスキル等を組み合わせた遠距離攻撃魔法、

同じく身体束縛のスキル、自身の身体能力向上を組み合わせたヒットアンドアウェイに、のっとった近距離攻撃魔法、剣技、格闘技も合わせて使う。


迷宮へ入る前から、そして入った後も、これらの熟練度を確実に上げている。


更に課題として、転移魔法使用の攻撃を加え、

念話を応用したサトリ能力を活かし、

敵の攻撃を先読みする『見切り能力』を磨きつつ……


死角に隠れてもそれを無効化する、

魔力の軌道を自在に変えるムービング攻撃魔法の発動、制御もクリアした。


立てた課題は順調にクリアし続けている。


1日遅くなってしまったが、本日中には、地下100階層へ到達したい。


ふう!

息を吐き、気合を入れ直したリオネル。


気配を消す『隠形』

そして、足音を殆どたてず、こっそり歩く『忍び足』のシーフ職スキルを駆使。

すっ、すっ、すっ、と空気の如く進む。


と、そこへ先行したケルベロス、オルトロス、ファイアドレイクから、

念話連絡が入る。


『主よ! 敵発見! マンティコア1体だ!』


『くくく! 主! 小賢しいわ! たった1体の癖して、偉そうに通りかかる獲物へ、待っているぞ』


『!!!!!』


ファイアドレイクも思念伝達で、

またも、どうする? 俺達でろうか? と告げていた。


先述したが、補足しよう。

マンティコアは、人面・獅子の胴体・コウモリの翼・サソリの尾を魔獣だ。

尾に猛毒のある針を持ち、刺すことによって獣や人を殺して喰らう。

特に人肉を好む事から、この名を冠する。


しかし、索敵……魔力感知で、

マンティコアの待ち伏せを察知していたリオネルは、先ほどと同じく首を振る。


魔物の中では、比較的知能が高いマンティコアを使い、課題のクリアを行いたいのだ。


合わせて念話で指示も出す。


『いや、皆、今回も考えがある。またまた俺に任せてくれ』


対して、ケルベロス達は『了解!』の返事を戻して来た。


よし!

大きく頷いたリオネルは、大きく一歩を踏み出したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


しばし歩くと、リオネルは待ち受けるマンティコアと正対する。


距離は約10m。


リオネルの姿を捉え、マンティコアは、唸り、舌なめずりもする。


肉食の合成魔獣マンティコアは、他の魔物を捕食していたが、久々に人間のリオネルを見かけ、たまらん!という感じで舌なめずりをしたのだ。


尾の毒で、弱らせ、喰い殺してやろうと考える。


対して、リオネルはふっと笑う。

食欲という本能に忠実なマンティコアは、人間のリオネルを見て、わずかな冷静さ、さえ失っていたのだ。


それゆえ、放つ波動で、『次の動き』が手に取るように分かる。


リオネルはまず、マンティコアから、距離3mの近くまで転移。


「!!!???」


いきなり『目の前』に現れたリオネルにマンティコアは、大いに驚いた。

何が起こったのか、理解出来ないのだ。


しかし、数十秒後、気を取り直したマンティコアは、当初の予定通り、

長い尾を伸ばし、ついている毒針で、リオネルを刺そうとした。


だが!

そのような動きなど、マンティコアが放つ波動を読み切ったリオネルには計算内。


そもそも、破邪霊鎧はじゃれいがいの効果で、マンティコアの毒など無効化してしまうのではあるが……


さてさて!

マンティコアが鋭い動きで伸ばした尾であるが、リオネルはすっと身体を動かし、

ゆうゆうと、かわした。


怒ったマンティコアは、何度も何度も何度も、尾の毒針をリオネルへ突き刺そうとする。


しかし、リオネルはそのアプローチを全てかわした。


焦れたマンティコアは、もう辛抱ならない! という感じで、

リオネルを噛み殺そうと、大きく口を開けた。

鋭い牙が並んだ真っ赤で巨大な口だ。


瞬間!


「待ってました!」とばかりにふっと笑ったリオネル。


マンティコアの口の中へ、


どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ!


貫通撃を含んだ風の塊、高圧化した硬い風弾を撃ち込んだ。


体内をめちゃくちゃに破壊されたマンティコアは呆気なく即死。

リオネルは更に、高熱の炎弾を連射。


ぼしゅっ! ぼしゅっ! ぼしゅっ! ぼしゅっ! ぼしゅっ!


既に死骸となった、マンティコアの巨体を焼き払っていたのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る