第308話「リオネルと村長の話は、とんとん拍子に進んだ」

ジェロームが大きな声を張り上げて大勝利を報告すると、


「わああああああああああああああああああっっっっ!!!!!」


と、村長以下村民達は、大歓声をあげた。


なかなか鳴りやまない歓声は何度も何度も繰り返され、しばらく続いていたが……


ようやく落ち着いたところで、村長が声をかける。


「リオネル様! ジェローム様! ありがとうございます! お疲れさまでした! まず宿舎へ! しばしお休みになってから、詳しいお話をお聞かせください!」


リオネルとジェロームは、宿舎の空き家へいざなわれ、更にまた村長が、


「ええっと……お疲れのところ申し訳ありません。私達は、いつぐらい経ってから伺えば宜しいでしょうか?」


と尋ねて来た。


気を遣いながらも……

「一刻も早く朗報の詳細を聞きたい」と村長と助役の顔には書いてある。


リオネルとジェロームは顔を見合わせた。

正直、『全快』の魔法で体力、体調は万全。


たった今から報告を始めても構わない。

そう、ふたりとも思っている。


「ええっと……リオネルに任せるよ」


とジェロームが言ったので、リオネルは微笑み、告げる。


「では、村長、1時間後にいらしてください」


「分かりました。では、夕食を用意しましたので、会食をしながら、オーク討伐の報告をお聞きしましょう。その際には自警団のメンバーも同行します」


「はい! お待ちしております」


「では後ほど」


村長と助役は帰って行った。

1時間後、自警団のメンバーとともに、夕飯を持ってやって来るはずだ。


「さあて、ジェローム。さっさと後片づけして、とりあえず休もうぜ」


「うん、そうだな! ああ、それよりリオネル」


「ん?」


「俺に『報告役』をやらせてくれてありがとうな! お陰で、気持ちが良かった! 良いとこどりさせて貰ったよ」


「いやいや、お安い御用さ」


ふたりは空き家の宿舎へ入り、武器を仕舞い、革兜を取り、革鎧を脱いだ。


平服のブリオーに着替え、居間の椅子に座ってくつろぐ。


「ジェローム」


「ん?」


「この前、俺が受諾していた仕事の話をしただろう?」


「ああ、リオネルがワレバットの街周辺でやってたっていう『町村支援施策』の事か?」


「うん! ジェロームも、砦から戻る際、村の農地を見たよな?」


「ああ、結構荒らされていた。農地のていをしていなかった。あれじゃあ、未開の原野と変わらない……」


そう、ふたりは砦から村へ戻る途中、村の農地を見た。

村長から、砦のオークに散々荒らされてしまったと、聞いていたのである。


「だからさ、村長さんに聞いた上で、俺達に何か協力できる事があればと思うんだ」


「な、成る程」


「農作業を依頼されるか、どうか、分からないけれど、な。他にも自警団への武術指導とか、俺達がやれる事は、いろいろあるんだよ」


「そ、そうか!」


「依頼された仕事以外の案件って、冒険者なら誰でもやるってわけじゃないけれど……感謝される事は間違いないよ」


「感謝される……か」


ジェロームはこの村に、「救援物資を運んだ」時の事を思い出した。

村民達は、自分に対し、感謝の気持ちを大きく示してくれた。


「但し、俺達冒険者も商売だから、ボランティアはやらない。有償依頼とはなるよ」


「そうか! リオネル、俺も出来る事があればぜひ協力したい! いろいろ聞いてみようぜ」


自分も何か、役に立ちたい!

ジェロームはリオネルとともに、村長から話を聞くと決めたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


約束通り、1時間後、村長はやって来た。

他に助役、自警団の団長、副団長も一緒だ。


4人は、夕食用の料理、飲み物も持参していた。


宿舎の居間には大きなテーブルが置かれている。

椅子は6つ。


テーブルには料理と飲み物が置かれたが、まず報告を!という事で、

6人が座り、改めて挨拶、依頼遂行を労わって貰った後……

リオネルが話し始める。


ちなみに、村長達には報告が終わるまで、聞き役に徹して貰い、

「質問は後で」と前振りしておく。


「皆さん、結論から先に申し上げますと、砦に巣食うオークは全て倒しました。つまり全滅させました」


「……………………」


「敵の首魁……リーダーは想定外の相手、オークの中では最強とうたわれるオークの王、オークキングでした」


!!!!!!!!!!!!


オークキングが首魁と聞き、村長達は大いに驚いたが……

まずは、リオネルの話を通しで聞こうと、口をはさまなかった。


「俺とジェロームも驚きましたが……何とか、倒しました」


「……………………」


「計略を使い、火で倒したのでオークキングの死骸はありませんが、ギルドの討伐履歴には記録が残っています」


「……………………」


「すべてのオークを倒した後、砦の左右の出入り口は、また変な奴らが入らぬよう、魔法杖を使い岩壁で完全にふさぎました。正門は確認の為、すぐ入れるよう、とりあえず、土と岩でふさぎました」


「……………………」


「倒した証拠として、砦の構内、良く見える場所にオークの死骸10体余りを残してあります」


「……………………」


「ですので、明日にでも確認作業をお願いします。ちなみに、それ以外のオークは不死者アンデッド化防止の為、葬送魔法で塵にしました」


「……………………」


「確認作業には、当然、俺達も同行しますので、明日皆さんご自身でご確認ください」


リオネルの話が終わると……

村長達からは、いくつか質問が出た。


しかし、リオネルの説明は理路整然、簡単明瞭であり、はっきりしていて、

分かりやすかったから、質疑応答はすぐに終わった。


明日の予定も、朝一番で砦へ行きたいと希望が出たので、

リオネルとジェロームは村長以下この4人を連れて行く事となった。


ここでリオネルが言う。


「村長、他に何かお困りの事案があれば、ご協力しますが、いかがでしょう?」


「他にとは?」


「はい、討伐の帰りに、村の農地を拝見しました。村長にお聞きした通り、オークどもに散々荒らされておりました」


「おお! ご覧になりましたか! そうなんですよ! もうオークの脅威がありませんから、リオネル様のおっしゃる通り、これから村民総出で、整地をし、改めてうねを作る農作業を致しますよ」


「成る程……自分はこれまで、有償で魔物の被害にあった町村の復興手伝いをして来ました」


「はい、冒険者ギルドからも、良くお聞きしております。たくさんの町や村を復興させたとか」


「いえいえ、俺は少し手伝いをしただけです」


「いやいや、ご謙遜を」


「ですが、そうであれば話が早い。もし宜しければ、農地の整地、畝作りは、俺がゴーレム達を使ってやらせます」


「ほう! 見せて頂いたあのゴーレムですか?」


「はい! 今回のオーク討伐にも、ゴーレムは大活躍してくれました」


「成る程!」


「ゴーレムが農地で作業すれば、村民の皆様の、肉体的負担が軽減されるのは勿論、時間と手間が大幅に軽減されますよ。無論代金は頂きますが、ご検討の余地はありますか?」


「おお、それは願ったりかなったりです。まずはオーク討伐が優先と思い、敢えてその話は後回しにしておりました。予算の方はご領主様にご了解を頂いております」


リオネルと村長の話は、とんとん拍子に進んだ。


「では! 村長! 早速詳しい打ち合わせを致しましょうか!」


リオネルは微笑み、大きく頷いたのである。

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