第115話「安堵感、そして夢と希望」
リオネルがキャナール村で過ごす日々は、
勝利の報告をしたモーリスが、親友パトリスと固く抱き合った時、感じたように。
以前にエレーヌ、アンナ母娘と、隣村アルエット村で過ごした日々と、
『変わらない日常』が始まったのである。
……夜明け前、午前3時に起床。
午前4時過ぎから、リオネルを心から慕うミリアンとカミーユ、
そしてパトリスの依頼でキャナール村自警団の若手達を引き連れ、村の周辺を早朝パトロール。
そのパトロール後、軽い朝食を摂り、そのまま農地へ移動。
村民達に混ざって、復興作業の手伝いを行う。
帰村後、お昼まで、牛、豚、鶏など家畜の世話もする。
一緒に働く事で、アルエット村同様、キャナール村の村民達と心の距離も更に縮まり、絆も深くなって行く……
それは共に働く、モーリス、ミリアン、カミーユも同じであり、
パトリスから移住を勧められたキャナール村を『第二の故郷』とする事を真剣に考え、検討しているようであった。
3人同様に、リオネルも自分の将来……冒険者引退後の事を考えている。
相変わらず旺盛な好奇心もあって……村民達から、農作物、家畜についていろいろ教授して貰い、数多の知識を得て翌日実践する繰り返しである。
そんなリオネルの努力もあり、農作業の基礎は完璧となり、応用のレベルへ入っていた。
冒険者を引退したら、「農民も『あり』だ」と考えるようになる。
昼食後は、『リオネルが教授する番』となり、モーリス、ミリアン、カミーユとともに戦闘訓練の『指導教官役』を務めたが……
リオネル自身も志願し、モーリスから、
モーリスの荷物には予備の『強化ミスリル製ガントレット』があった。
「
様々な動物の能力習得、レベルアップに伴い、リオネルの身体能力は更に進化。
モーリスが驚愕するほど凄まじい事となっていたが、成長は全然ストップせずに、
とどまる事を知らない。
冒険者ギルドの王都支部の教官から、基礎と応用を徹底的に叩き込まれたリオネルは、モーリスの指導も受け、更に能力は上がって行った。
夜間は、空き家の宿舎で『勉強会』を行う。
武技、魔法、魔物の特徴や弱点、そして雑学等々……
リオネルとモーリスが互いの持つ知識を共有しながら、ミリアンとカミーユも学んで行く。
数日後、農地を護るモーリスの岩壁――防護壁も完成したが……
ゴブリンとのバトル現場に引き続いてリオネルの熱心な観察、モーリスへの質疑応答もあり……
そして、遂に遂に嬉しい大事件、スペシャルイベントが起こった!
チャララララ、パッパー!!!
リオネルの心の中で、あの独特のランクアップファンファーレが鳴り響き、
内なる声が淡々と告げて来る。
チートスキル『見よう見まね』『エヴォリューシオ』『ボーダーレス』の効果により、リオネル・ロートレックは『地属性魔法』の『初歩』を習得しました
そう!
リオネルは遂に遂に!
3つめの属性『地属性魔法』の『初歩』を習得するに至ったのだ。
ちなみに『初歩』とは、
具体的に言えば防御魔法『土壁』の生成と攻撃魔法『岩弾』である。
リオネルが心の中で大いに歓喜し、叫んだのはいうまでもなく……
何も知らないモーリスには、
「理由もなく、いきなり、にやついて気持ち悪いぞ」と言われるおまけもついた。
後、残るのは『水属性魔法』のみ……
水属性魔法を習得すれば、リオネルは、
すなわち、『リーチ』がかかったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そんな日々が続き、ゴブリンを討伐してから10日が過ぎた。
既にリオネルは近日中の出発を決めていた。
アルエット村の時同様、パトリス以下村民からは熱心に移住を誘われ、引き止められた。
しかし……リオネルの思いは変わらなかった。
「広い世界を見たい」「自分の可能性を見極めたい」
という熱い思いを捨て去る事は出来なかったからだ。
一方、モーリス達は、村長でもある司祭パトリスと約束を交わしていた。
冗談っぽく、「予定は未定だぞ」とパトリスへ前置きしながらも……
いずれは、このキャナール村へ戻り、『正式な村民』になると。
モーリスは、キャナール村へ移住し、『生涯の友』として、パトリスを支えて行くと誓ったのだ。
またミリアンとカミーユは、暮らしやすく自分達を受け入れてくれたこのキャナール村を『第二の故郷』とする事を決意したよう』である。
しかし3人は『現実的』且つ『合理的』でもあった。
ひとまず冒険者の街ワレバットへ行き……
実働期間を決めた上で、将来の為「生活資金を稼ぐ」と言うのだ。
「うむ! 私にはそこそこたくわえがあるし、パトリスからの謝礼も多めに受け取ったのだが……キャナール村で、そのまま暮らすには、少々不足している。だからワレバットへ行き、たっぷり金を稼ぐよ」
「私もそう。将来、キャナール村で暮らす為、修行と実践、バトルで腕を磨き、強くなってお金をガンガン稼ぐわ」
「俺もっす。目いっぱい頑張ってシーフとして力をつけ、、一人前となり、がっぽりお宝をゲット。たくさん稼いで、楽しくキャナール村で暮らすっすよ」
きっぱりと言い切るモーリス、ミリアン、カミーユ。
情に流されず、見事なまでにブレない。
「さすがだ」と思うリオネルであったが……
話はこれで終わらない。
「と、いう事だ。これからも末永く頼むぞ、リオ君!」
「当分宜しく! めっちゃ甘えるからね、リオさん!」
「リオさんには公私ともども、全面的に、最大限お世話になるっす!」
「ははは、みんなしっかりしてるなあ……俺も見習って、たくましく行こう」
つい苦笑したリオネルではあった。
だが……
心の絆をしっかり結んだ3人の仲間と、冒険者の総本山ワレバットへ行く。
彼の心は安堵感、そして夢と希望にみちあふれていたのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます