第73話 降臨予約
(ロキ君~生きてますか~? 森に入ると聞いてから4日経ちますけど、一向に【神通】を使ってくれないので連絡しましたぁ~。生きているなら早めに使ってくださいよ~)
「あっちゃー……」
そう呟かずにはいられなかった。
そのうち【神託】を使われるだろうなとは思っていた。
だからこそ、連絡が来る前に終わらせたいと思っていたが……
もう4日か。
そうだ、俺はこの4日間【神通】をサボってしまっている。
理由は魔力が『60』も溜まらないうちに使ってしまっているからだ。
決して女神様達とのおしゃべりに飽きたとかではない。
ただ一度やり始めた作業はきっちり終わらせないと、どうにもスッキリしないという性格の問題である。
「あとちょっとで終わりそうなのになぁ……」
【探査】で各種魔物を指定、周囲30メートルにいないと分かったらステータス画面を起動する。
すると残り魔力は『34』。
ということはあと1時間ちょっと魔力を溜めれば、一応【神通】を使うことはでき
る。
(1時間後だとちょうど21時くらいか……ならしょうがないか。心配かけるわけにもいかないし、今日の作業は諦めるとしよう)
内心落胆しながらもそう決断し、目の前にある作りかけのモノを一瞥した後、拠点の穴倉へと戻っていった。
▽ ▼ ▽ ▼ ▽
【神通】
「もしもしロキです。ご連絡が遅くなってしまいすみません」
(あぁー! ロキ君生きてたよー!!)
(良かったです~。何かあったのかと思って心配してたんですよ~?)
(だから言っただろう? そう簡単に死ぬようなやつではない)
(何を言ってるんですか? 連絡が来ない来ないと、毎日念仏のように唱えていたではありませんか)
(お忙しかっ――)
(リステだってルルブの森に【分体】降ろすとか言っていただろう!)
「ちょ、ちょ、ストップ! ストップです! これじゃ最初と同じ流れになってますよ!」
(そうだったすまない)
(失礼致しました)
(すみま――)
(ごめんね~!)
(今日は私が代表してお話ししますよ~)
「フィーリル様ですね。宜しくお願いします」
なんかアリシア様の言葉が
突っ込んだ方が良いのだろうか?
一応女神様達のリーダー的存在だと認識しているけど、どうも扱いがぞんざいな気がしてならない。
(それでロキ君はルルブの森にいると聞いていますけど、そんなに忙しかったんですか~?)
「えーと、魔物を倒すので忙しいというのもありましたが、ちょっとお風呂を作りたくてですね」
(お風呂ですか~。でもわざわざルルブの森にですか~?)
「ルルブの森だから余計にですね。毎日返り血が凄いですし、一日中走り回っていると汗だくな上に、かなり疲れるので……」
(なるほど~。それは楽しみですねぇ~)
「えぇ。早く入りたくて、それで毎晩魔力をいっぱい使っちゃってたんですよ」
(目的があるならしょうがないですよ~)
「あ、ちなみに一つ質問をしてもいいですか?」
(大丈夫ですよ~?)
「本当は鉄を作り出したかったんですけどできなくて……【土魔法】で鉄って生成できるんですかね?」
(それは無理でしょうね~。素材から金属を分離するなら【錬金】のはずですよ~? この辺りに詳しいのはフェリンかリステですけどね~)
「なるほど【錬金】でしたか! そりゃできないわけですよね、そんなスキル持ってませんし。助かりました。ありがとうございます!」
(気にしないでください~。ちなみにロキ君はまだ当面ルルブの森にいるんですか~?)
「だと思います。まだまだレベルは上がりそうなので、たぶんあと半月くらいは滞在するんじゃないですかね?」
(それは良かったです~)
「……ん? どういうことですか?」
(次は私が下界に【分体】を降ろしますから~)
ん?
んん?
返答を聞いても「どういうことですか?」となってしまう。
女神様が【分体】を降ろすのは転移者探しが目的だよな?
それで俺がルルブの森にいた方が良いって……
まさか、リア様の【分体】をポイントにして、俺とまったく会わなくても済むから良いってこと?
さすがにそんなこと言われたらショックなんだけど!?
((((会えないと(ッ!?)ショックだって!!))))
(ロキ君は可愛いですねぇ~。違いますよ~? ルルブの森に【分体】を降ろしますから、それが楽しみなんですよ~)
「え? 町とかじゃなくてルルブにですか? 人いませんよ?」
(リアと同じように1日だけですけどね~。私は魔物の生態調査も担当のうちですし~)
「な、なるほど……」
そう言われると納得せざるを得ないか。
確かに【突進】スキルが魔物専用だと言ったのもフィーリル様だし、のんびりしているようで実は一番魔物に詳しいのかもしれない。
(なので楽しみにしてますよぉ~お風呂~!)
「……へ?」
違った。ただの風呂好きだった。
(降りるのは3日後くらいになると思いますから~それまでに完成させといてくださいね~?)
「は、はぁ。善処します……」
うーん、いいのだろうか?
完成したら誰が入ってもいいんだけど、目隠しになるようなものはこのままの予定だと何も無いんだよな……
まぁ人が入り込むような場所じゃないし、俺の拠点付近に来る可能性のあるアルバさん達だって、夕方くらいまでには素材を換金しにベザートへ帰るんだ。
そうなれば誰に見られるわけでも無い。
俺はいるけど……拠点の目の前なんだし、俺は近くにいると思うんだけど……
(……フィーリル。ロキはスケベだから気を付けて)
「え?
((((((……))))))
(ちょ、ちょっとどういうこと!? リア!? リアだって!! ロキ君が呼び捨てにしたよ!!)
(ロキ! いくらロキでも、それはさすがに不遜であろう!?)
(呼び捨てにされている件について、双方から詳しく事情をお聞きしたいのですが? あとスケベな件についても)
(なんということ……まさか女神と異世――――……)
「……もしもーし? もしもーし?」
なんとなく今までもアリシア様が不憫だとは思っていたが、今日は一段と酷かった。
だがしかし、今はそんなことどうでもいい。
俺、呼び捨てにしたことで他の女神様から殺されるんじゃないだろうか?
わざわざ練習までさせられて、半ば強制的に呼び捨て指示を受けただけなんだけど……
自分から呼び捨てにしたくてしたわけじゃないんだけど……
【神託】も【神通】も使った。
あと女神様達から連絡を取る方法は、俺をポイントにした【分体】降ろししかないだろう。
(い、い、い、いきなり真横に現れて尋問とか無いよな……?)
不安でその日、俺はなかなか眠りにつくことができなかった。
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