第28話 目標達成

「うおっしゃ!! やっと【土魔法】【気配察知】レベル3きたぁあああっ!!」


 あれから12日後。


 来る日も来る日も朝から晩まで、休まずパルメラ大森林で狩り続けた結果、俺はとうとう【土魔法】と【気配察知】をレベル3にした。


 俺が次なる狩場、ロッカー平原へ行くため自分に課したノルマ。


 お金を150万ビーケ貯めること。


 そして3種のスキルを全てレベル3にすること。


 その最後の障害になっていたのがこの2種のスキルだ。


 どうしてもフーリーモールの遭遇率がゴブリンやホーンラビットよりも落ちるので、途中からはこの2種が最後にはなるだろうなとは思っていた。


 ただ予想よりは早いペースで到達することができたのも事実だ。


 それもこれも、メイちゃんのお母さんから譲ってもらったのおかげだと思うと頭が上がらない。



 貰った日の晩、結局俺は貧乏根性丸出しで宿屋の夕飯も無理して頂き、その後に丸薬を飲んで久しぶりの満腹感を味わいながらあっさり就寝。


 朝目覚めると疲労がだいぶ取れていることが分かり、さらに次の日にはほぼ抜け切ったかの如く体調万全になっていた。


 ピークはどうやら丸薬を飲んでから2日目のようで、その後はまた徐々に身体が重くはなっていくものの、薬の効果は約4~5日間程度持続することが判明。


 その間はハンター初日を超えるホーンラビット6体をノルマに変更して籠をパンパンにしても、なんとかジョギングできる程度のペースは維持できたため、収入増にも繋がり俺の中でのに認定された。


 当然この薬は今後のために買えるだけ買いだとメイちゃんのお母さんを訪ねたところ、その時になってお母さんが最後にしていた苦笑いの原因が判明。


「あの薬は希少な薬草も混ぜているから結構高いのよ」


 と濁すお母さんに具体的な値段を尋ねると、言い辛そうに一瓶50000ビーケもするやつだからごめんねと何故か謝られる。


 しかし脳内計算すればあの薬で1日の収入が40000ビーケくらい増え、それが5日間持続すれば1粒でトータル200000ビーケくらい俺は得をすること。


 そもそも仮に収支がトントンだったとしても、敵を多く倒せることは経験値的に俺にとってプラスなので、結局値段を聞いても神薬認定が覆ることは無かった。


 たまに来る行商や商人が持っていた時だけ買える希少薬草が必要らしく、在庫は二瓶しかないということだったがもちろんその二瓶はお買い上げ。


 お母さんからすると狩りはパーティを組むのが当たり前と思っているようなので、こんなポンポンと気前よく買う人はこの町にいないと驚いていた。


 まぁそりゃそうだよねと思いつつ、「僕は一人でやってますから」と伝え、もし薬草が手に入った時にはこの丸薬を予約しておくことも忘れない。


 お母さんは稀に訪れる中規模商人が疲れを癒すために買うくらいで、ベザートの町長すら滅多に買わないから大丈夫よと笑っていたから、買い占めしたとしてもまず問題は無いだろう。



 やっと森の出口が見えてきた。


 外に出てくればゆっくりとステータスが確認できる。


 草原に座り込んで開いた現在の俺のステータス、所持スキルがこれだ。



 名前:ロキ(間宮 悠人) <営業マン>


 レベル:8


 魔力量:52/52


 筋力:   29(+1)

 知力:   30(+7) 

 防御力:  28

 魔法防御力:28(+6)

 敏捷:   28(+6) 

 技術:   27(+7)

 幸運:   33(+1)


 加護:無し


 称号:無し


 取得スキル 【棒術】Lv1 【火魔法】Lv1  【土魔法】Lv3 【気配察知】Lv3 【異言語理解】Lv3 【突進】Lv3 【採取】Lv1 【狩猟】Lv1



【棒術】は棒持ちゴブリンを見つけ次第倒していたら、【採取】は草や果実を取っていたら、【狩猟】は魔物を倒していたら不意にアナウンスの文字が視界に入りスキル取得をしていた。


 対応ボーナスは【棒術】が筋力、【採取】は幸運、【狩猟】は技術という具合で、近接アタッカーの俺としてはやっと筋力が上昇して喜ばしい限りである。


 防御力は……どこいったんでしょうね?



 そしてそれぞれのスキル詳細はというと


【棒術】Lv1 棒形状の武器を所持している限り、攻撃動作、防御動作にプラス補正が入る(魔力消費0) 任意で1秒間、特定所作に能力値130%の限定強化を行う 魔力消費5 


【火魔法】Lv1 魔力消費10未満の火魔法を発動することが可能


【土魔法】Lv3 魔力消費30未満の土魔法を発動することが可能


【気配察知】Lv3 使用者の周囲で動く物体に対して反応が敏感になる 範囲半径15メートル 魔力消費0


【突進】Lv3 前方に向かって能力値190%の速度で突進する 移動範囲は任意指定 最大距離5メートル 消費魔力9


【異言語理解】Lv3 人族が扱う言語であれば、知識が無くても11歳児程度の理解度で会話をすることができる 常時発動型 魔力消費0


【採取】Lv1 採取技能が向上し、採取物を僅かに発見しやすくなる 常時発動型 魔量消費0


【狩猟】Lv1 狩猟技能が向上し、獲物を僅かに発見しやすくなる 常時発動型 魔量消費0


 こんな感じだ。


 この中でも初の攻撃スキルとなる【棒術】は興味津々で色々と試した結果、棒を握って振ると型が自然と身体に入ってくるというか、こう振れば良さそう、こう守れば良さそうという動作を身体が無意識に取ってくれた。


 スキルレベルがまだ1であることからも、どこかの道場で修業して基礎がちょっとだけ分かった……そんなレベルの技能が勝手に身に付いたんだと思っている。


 また特定所作への限定補正は、早く振りたい、力をもっと込めたいと思った時に、一時的にその振りが加速したり、攻撃後の衝撃が強くなったりしていた。


【棒術】限定であれば、加速だけ、力だけ、どちらもという風に配分も可能で、速さに全てを意識すればその分速く、力も速さもとなれば速度編重よりは遅いもののバランスよく振ってくれる。


 ただ戦闘中に細かい指定をしている余裕はないので、基本使いたいなら魔力消費は最大前提。


「全力で振り抜く!」「全力で守る!」という使い方にはなるだろうけどね。


 連続使用、つまりクールタイムは存在しないようだったので、効率度外視で魔力さえあれば、数秒間敵の攻撃を受け止め踏ん張り続けるなどの使い方も可能だろうということが把握できた。


 まぁ棒を握る予定が無いので、【棒術】はあくまでステータスボーナス目的。


 今後の【剣術】や【短剣術】も同じ内容と予想して期待しておこうと思う。


 そして他のスキルも今のところおまけ程度。


【採取】にしろ【狩猟】にしろ、正直見つけやすくなった実感はまったくと言っていいほど無い。


 スキルレベルが上がれば違うのかもしれないけど……特に魔物に関しては気配察知の方がどう考えても先に魔物の動きを捉えられるので、ここに実用性を意識してスキルポイントを振ることは間違いなく無いと感じた。


 ちなみに【突進】がレベル3になったのは何日も前の話で、そこから1体当たりの取得経験値を測定するとおおよそ1%程度。


 上げられないことはない上昇値だけど、俺のレベル上げがまだ一桁なのにとんでもない亀ペースになっているので、やはりここらで狩場を上位に移した方が総合的にプラスだろうと思われる。



 さて、ステータスチェックも終わったしどうするか……


 チラリと籠を見れば、まだスペースには多少の余裕が有り、あとホーンラビット2体くらいは狩れそうだ。


 ただ明日はジンク君達と川遊びするんだよなぁ……


 それもあって滋養強壮丸薬は飲んでない。


 狩りを1日オフにするのと、そこからもう1日くらいはロッカー平原に向けた準備で休む予定だったので、薬の効果をフルに使えないことを勿体なく感じてしまった。


 おかげで最初の頃ほどでは無いけど、全体的に身体が重くて力がそこまで湧き上がらない。


(うーん……もう1匹だけホーンラビットを倒したら終わりにするか。一応レベルが上がった気配察知の感覚も掴んでおきたいし)


 普通の感覚なら終わるところを終われない。


 ついもうちょっと、もうちょっととなってしまう。


 これはゲーム視点か? 


 いや違うな、営業していた時もそうだったわ。


 そんな自問自答を繰り返しながら、俺は再び森の中へと入っていった。

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