―43― 久々
翌日、僕は一週間ぶりに学校に行った。
ここずっとアグレアスと特訓をしていたため、学校に行けてなかったのだ。
やっと、火、風、水、土の4つの自然魔術を覚えたので、学校に行く足取りもいつもより軽い。
次はなんの魔術を覚えようか。
錬金術に占星術、死霊術など、覚えていない魔術は他にもたくさんある。
だから、次はどんな悪魔を召喚しようか様々な考えがめぐってくる。
「よぉ、魔術も使えない無能が、なんでまだ学校に通っているんだ?」
それは突然の邂逅だった。
いや、同じ学校に通っていたんだ。いつか出会うことは必然だったのだろう。
目の前にいたのは、エスランド家の養子になったディミトだった。
僕にとって、義理の兄弟であり、正式な跡取り。
そのディミトはたくさんの生徒を連れて廊下を歩いていた。まるで、後ろに従えている生徒は自分の舎弟であると誇示しているようにも見える。
「魔術を習うために通っているんだけど……」
「はぁ? まだ諦めていなかったか? お前は魔術が使えない無能だろ! だから、あの家はもう俺のもんなの! だから、お前はとっとと魔術を使えないまま平民になって落ちぶれろよ!」
「今はもう魔術を使えるけど」
「はぁ?」
ディミトは目を見開いて僕のことを見ていた。
僕が魔術を使えるようになったことを知らなかった様子だ。
「おい、この無能が魔術を使えるって本当かよ?」
「えっ、あぁ、そういえば以前リーガルと決闘していましたね。そのときに魔術を使っていましたよ」
ディミトが従えていた他の生徒がそう説明していた。
「ほーん、つまり、最近魔術を使えるようになったってわけね」
「そういうことになるかな」
「くはははははっ、そうか、魔術を使えるようになったか。よしっ、今から俺と決闘しろ。無能がいくら努力しても無能のままだってことを知らしめてやる」
ディミトは僕の肩を叩いてそう主張する。
「嫌だよ。今の僕が戦っても、君には勝てないだろうし」
「くはははっ、そうだよな。最近、魔術を覚えたばっかりのペーペーが俺に勝てるはずないもんなぁ!」
ディミトはひとしきり笑うと、僕から離れていった。
やっと終わった、とディミトが目の前からいなくなったことに僕はほっとする。
「おい」
振り返ると、去ったはずのディミトが僕のことを見ていた。
「お前、固有魔術は持っているのか?」
「持っていないけど……」
「そりゃそうか。ちなみに、俺は固有魔術を2つ持っている。そのことをよく覚えておくんだな」
そう言い残すと、今度こそディミトは去っていった。
固有魔術を2つも持っているのか。
2つも固有魔術を持っている魔術師は非常に珍しい。それだけディミトが優秀なんだという証なんだろう。
恐らく、今の僕では彼に勝つことは難しい。
けれど、もっと悪魔召喚を極めれば、あるいは……。
そんなことを僕は考えていた。
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