見習い魔導具師との出会い 4

 私の作った人工魔石を使って魔導具の生成を開始する。

 完成した手頃な魔石はすべて炎属性で五つだ。


 一つ目は魔術と持続時間拡大。二つ目は耐性と拡散。三つ目は増幅と範囲拡大。四つ目は範囲拡大と増幅と収束。五つ目は魔術と耐性と拡散。

 因子のレベルはそれぞれ1か2である。


「さっそく魔導具を造ってもらうけど、シェリルはどんな魔導具にするのがいいと思う?」

「どんなといっても……この因子の組み合わせ、考える余地ってあるのかしら?」


 クズ魔石に内包する効果因子の種類はそれほど多くない。というか、単体でもそれなりに有用な因子を含んでいる場合、クズ魔石として売られることがない。

 それゆえに、クズ魔石はどれもこれも似通った因子を内包しているが、天然の魔石を装うため、あえて無作為にばらけさせたために無駄も多い。


「たしかに、組み合わせを考える余地は少ないね。でも、だからこそ、少ない選択肢の中で思考をこらすのが魔導具師の腕の見せ所でしょ?」

「でも、あたし……」

「大丈夫、基礎的なことなら教えてあげられるから」


 私は魔導具師ではないけれど、魔石の研究をする過程で魔導具師としての知識が必要になることもあった。だから、サラ先輩から基礎的なことは学んでいるのだ。


「まず一つ目、魔術と持続時間拡大の因子を持つ魔石だね。これの流用パターンは主に二つあるんだけど……シェリルは分かるかな?」

「えっと、持続時間を延ばした火属性の魔術を使える魔導具か、術者の火属性の魔術の効果時間を延ばす魔導具かしら?」

「そうだね」


 ちなみに、前者はそれ単体で魔術が発動する魔導具で、後者は魔術師が行使する魔術の効果を引き上げる魔導具だ。

 どちらも魔導具だが、後者はお守りやエンチャント装備などとと呼ばれることもある。


「シェリルに問題。火の魔術を発動させる魔導具の場合、因子は全部使うよね? じゃあ、魔術の持続時間を上げるお守りにする場合は、魔術の因子を使った方がいいと思う?」

「ん~、そうねぇ……入れないわ」

「理由は?」

「魔術の因子はレベルが2しかないでしょ? その因子を入れると、効果時間を延ばせる対象が火属性の、それも初級の魔術だけに限られてしまうでしょ?」


 魔石に含まれる属性因子は、必ずしも使った方が良いという訳ではない。因子を含めることで、効果範囲が狭まることもあるのだ。

 ただし、因子は範囲を限定した方が、効果は高まるという性質も持っている。


「シェリルのいうことも正解だけど、お守りの場合も魔術因子は使った方がいいね」

「その方が需要が多いの?」

「ん~どうだろうね?」


 火属性の初級魔術限定で少し持続時間が上がるお守りと、火属性の魔術全般の持続時間をほんの少しだけ上げるお守り。需要でいえば、似たようなものだろう。

 ただし――と、私は続ける。


「需要は同じくらいでも、供給量がぜんぜん違うでしょ?」


 火属性で、持続時間拡大の因子だけの魔石はありふれているが、持続時間拡大と魔術の因子の両方が備わっている魔石は少しだけ珍しい。

 そういう意味で、両方使った方が売れる可能性は高い。


「そっか……需要が同じなら、供給の少ない方が売れるわよね」

「そういうこと。とはいえ、それはお守りにするなら、だね。作るなら、指定した火属性の魔術が発動する魔導具にした方がいいね。そっちの方が需要は高いだろうから」

「火属性の魔術かぁ。持続時間拡大だと、攻撃には使いづらいわよね?」

「そうだね。威力はしれてるから、薪いらずのたき火用、とかどうかな」


 薪を持ち歩くのは大変だ。

 森なら薪を現地調達も可能だけど、雨の日なんかには重宝するはずだ。灯りの代わりにすることも可能だけど、それなら光属性の魔石を使った方がいい。


「たき火かぁ……考えたこともなかったわ。じゃあ一つ目はたき火用ってことで。二つ目はさっきの法則で考えると、火属性を拡散させつつ耐性で防ぐ鎧……かしら?」

「そうだねぇ……防具に使うには少しレベルが低いかな? それに、エンチャント装備、特に防具は売るのが難しいからね」


 魔法に強い耐性を持つ防具や、衝撃を拡散させる防具などなど。物によっては高額で取引される装備もあるが、装備はサイズやらなんやらで使い手を選ぶために売れ行きが悪い。


 特に、今回のようなしょぼい効果因子の場合は確実に買い叩かれる。売るのなら、魔石のまま売った方がいいレベルだ。


「そっか、このクラスなら、魔石を買って自分の防具を魔導具化した方が早いわね。じゃあ、ネックレスにするとか? でも、全身を覆わない装備だと効果が下がるのよね?」

「うん、そうだね。因子のレベルも一だから、ほとんど効果は感じられないだろうね」

「となると……依頼されてから作る用に取っておく?」

「それもありだけど、販売効率を考えたらローブが無難かなぁ」

「……ローブ?」


 私の提案に、シェリルは思っても見なかったことを言われたと首を傾げた。


「暑さ対策にいいと思わない? 迷宮には暑い場所もあるでしょ?」

「あぁ、そっか、暑さ対策で羽織ったりするんだね。ぜんぜん思い付かなかったわ!」

「これなら冒険者だけじゃなくて、旅人とかにも需要はあると思うんだよね。しかも、陽差しの熱くらいなら、レベル一でも上手く拡散してくれるはずだよ」


 200年前は、戦闘用の魔導具ばかりが評価されがちだったが、迷宮の氾濫が始まる前、魔導具の研究が始まったばかりのころは、むしろ生活に使う魔導具に目が向けられていた。


 でもって、私はそういった生活を豊かにする魔導具にも目を向けていた。この時代に受け入れられるか分からなかったのだけど……シェリルの食いつきは悪くない。

 これならば、確実にローブの方が売れるだろう。


「じゃあ、二つ目の魔石はローブを買ってきて付与するわね。三つ目と四つ目はエンチャント装備、魔術を増幅用の杖か、もしくはアクセサリーにするのがいいわよね?」

「そうだね。アクセサリーが無難かな」


 私は少し考えてそう答える。

 お守りは総じて効果が低くなる。だが、杖を何本も持ち歩くことはないので、魔術師は出来るだけ強力な効果因子のある魔石を使った杖の魔導具を造る。この程度の効果なら、杖にしても見向きもされない可能性が高いので、お守りの方がマシだろう。


「最後の一つは、魔術と耐性と拡散ね。これもローブ。その上で、火属性の魔術に限定した方がいい? それとも、さっきと同じローブにした方がいいかな?」

「そうだね。これは魔術に限定しない方がよさそうだね」


 炎系の攻撃魔術をほんのちょっぴり軽減するローブより、暑さ対策のローブの方が絶対に需要は高い。前者も欲しがる人はいるかも知れないが、さっさと売るなら後者だろう。


「じゃあ、最後の一つもローブに付与するってことで、まずはローブを買いに行かないとダメね。いまならまだお店は空いている時間だからちょっと買ってくるわ」

「あ、それじゃ、私も買い物がしたいからついていくよ」



 ――という訳で、私はシェリルの買い物に同行した。

 歩きながら町並みを眺めるが、町を取り巻く壁を除けば、ラニスの町は200年たったいまもそれほど大きく変わっていない。文明レベルが停滞してしまっている。


 迷宮の氾濫による影響が大きいのだろう。人類の生存圏がどの程度残っているのか、知りたいような、知りたくないような……複雑な気分だ。


「カナタ、どうかしたの?」

「うぅん、なんでもない。それより、ローブを買いに行くんだよね」

「ええ。ちなみに、カナタが買いたい物はなにかしら」

「私が欲しいのは服かな。着替えがまったくないから」

「服なら私のがあるわよ?」

「借りっぱなしという訳にはいかないでしょ?」

「サイズが合わなくなった服だし、あたしははかまわないけど」

「……私にもサイズが合わないのよ」


 胸元のスリットを指で引っ張って見せた。

 シェリルから借りているワンピースには、胸の上部に横一直線のスリットが入っている。胸が大きい女性だと、胸の膨らみでそのスリットが開くように出来ているのだ。

 だけどいま、そのスリットは開いていない。背丈は同じくらいで、ウェストもちょうどいい。なのに、胸元だけ生地がだぶつくなんて、現実は非情である。


「あ、えっと……うん、分かった」


 恨みがましい目で見ていると目をそらされた。


「と、取り敢えず、カナタが欲しいのは服ね。他は?」

「……後はクズ魔石を買って帰りたいかな」

「クズ魔石なら家にたくさんあるわよ?」

「因子継承を始めるとあっという間になくなるからね。それに、販売用のは自重する必要があるけど、自分で使うのには自重する必要がないから」


 一山いくらの魔石を、それこそ山のように使用する予定である。


「シェリルも必要なら作ってあげるよ?」

「え、でも迷惑じゃない?」

「実験にもなるから大丈夫」

「それじゃ……お言葉に甘えようかしら」



 という訳で魔石屋に立ちより、一山いくらの魔石を購入。シェリルの家に配達してもらう。

 その後、足を運んだのは表通りにある、周囲のお店と比べても立派な服飾店。シェリルに続いて店に足を踏み入れると、ウェーブの掛かった赤髪が印象的な女性が姿を現した。

 服飾店の店員というだけあって、服のセンスがとてもよい。


「いらっしゃいませ。――って、シェリルじゃない。今日こそ私の作ったファッションのモデルになりに来てくれたの?」

「それはまた今度ね。今日はローブと、知り合いの服を買いに来たの」


 どうやら、シェリルは店員と顔見知りのようだ。シェリルの視線をたどった店員が私の存在に気付く。彼女はいきなり、私の足に縋り付いてきた。


「素晴らしいわっ、これこそ私の求めていた足よ!」

「ひゃあああっ!?」


 膝丈ワンピースの下、生足を撫で回された私は思わず悲鳴を上げる。


「うん、しなやかだし、スラリとしていて完璧よ!」

「ちょ、ちょっとっ!」


 彼女の手がワンピースの中、太腿まで這い上がってくる。慌てて彼女を止めようとしたのとほぼ同時、シェリルのげんこつが彼女の頭に落ちた。


「いった~いっ。シェリル、なにをするのよ」

「なにをするのはこっちのセリフよ」


 シェリルは腰に手を当て、涙目でうずくまる店員を見下ろす。

 それで我に返ったのか、店員ははっという顔をした。

 それから取り繕ったように立ち上がり、「ごめんなさい」と頭を下げた。


「いえ、まぁ……分かってくれればいいけど」

「ホントにごめんなさいね。あなたの足があまりに素晴らしくて我を忘れてしまったわ。という訳で、私のファッションモデルにならない? そうしたら服は無料で進展するわよ!」

「……ファッションモデル?」


 どういうことかと首を傾げる。

 となりでシェリルが「やめといた方がいいわよ」と囁いた。


「ちょっとシェリル、聞こえてるわよ?」

「だって、アリアが勧める服って、胸を強調するデザインばっかりじゃない」

「それはあなたの魅力を引き出すためよ。彼女には足を綺麗に見せるデザインを推すわ! ちょっと待ってて。一通り見繕ってくるから!」


 言うが早いか、アリアと呼ばれた店員は店の中で服を見繕い始めた。


「凄い勢いだけど……彼女は?」

「私の……友人よ。名前はアリア、店長の娘なの。悪い子じゃないんだけど……なんというか、女の子を可愛く着飾るのが趣味なのよね。悪い子じゃないんだけど」


 二回も悪い子じゃないと言った。

 どうやら、顔を付き合わすたびに、胸を強調する服のモデルを頼まれているらしい。


「彼女の趣味に付き合わされたくなければハッキリ言った方がいいわよ?」

「まあ……モデルがどうのはともかく、服はどのみち買うつもりだから」


 私としても、今の時代のファッションがどのような感じか分からないので、この時代の、その道の人間に見繕ってもらうのは望むところである。


「だったらいいけど、嫌なら断っていいからね」

「うん。というか、シェリルなら胸を強調するデザインも似合うと思うよ。というか、私が着ているワンピースも、結構胸を強調するデザインだよね?」


 私が着て、胸回りの生地があまっているのが目立つのはそれが理由だ。胸を強調するデザインを嫌がっている割に、そういう服のデザインが多いのはどうしてなのかと問う。


「アリアの好みの服を選ぶだけでも割り引いてくれるのよ。でも、モデルはさすがにね。魔導具で姿を写し取られて、ファッション雑誌に載せられるとか、恥ずかしいじゃない」

「……ファッション誌」


 姿を写し取る魔導具があるらしい。私の育った時代にはなかった物だ。見た目は文明のレベルがまったく進んでいないように思えたけど、進化した部分もあるようで安心した。


「――お待たせ。オフショルダーのブラウスにミニのティアード&フィッシュテールスカート。それにガーダーベルトで釣ったニーハイソックスよ! どうかしら!?」

「うわぁ……」


 思わずそんな声が零れた。決してセンスが悪いと思った訳ではない。私の時代では見られなかったデザインだが、可愛いか可愛くないかの二択で言えば可愛い。

 ただ――


「私にこの服が似合うかな?」

「大丈夫よ! 胸元は生地を重ねることで胸のラインを誤魔化しつつ、あなたの最大の魅力であるすらりとした足を綺麗に見せるデザインだからっ!」

「そ、そうなんだ」

「ええ、私の見る目に間違いはないわ!」


 彼女は自信たっぷりに言い放つ。

 不思議なもので、ここまできっぱりと断言されるとなんだかそんな気になってくる。私自身がこのデザインを嫌っていないというのも大きいかもしれない。

 というか、胸のサイズを誤魔化すデザインという部分がポイント高い。


「ちなみに、お値段は?」

「この服でモデルになってくれるなら無料で進展するわよ!」

「えっと……今回は急ぎだから、モデルは無理、かな」

「なら、次の機会に考えてくれるなら、今回は半額、これだけでいいわ!」


 アリアが指を立てる。提示されたのは、シェリルから受け取った分け前でも十分に買える値段だった。服の生地や縫製の手間を考えるに、格安の値段だろう。


「考えるくらいはいいけど……その値段で採算が取れるの?」

「大丈夫よ、この服は趣味だから!」

「そ、そう。なら、その服を買おうかな」


 値段を考えると、他の服を定価で買うと他の物を買う余裕がなくなってしまう。

 という訳で、私はその服に加えてラフな部屋着を二着、それに下着を数セット購入した。続けて、シェリルが魔導具化するローブを予備も含めて数着購入する。


 アリアが会計を済ませているあいだ、私とシェリルはソファに座って待つ。

 手持ち無沙汰になった私はシェリルに視線を向けた。


「ホントに凄い人だね」

「カナタは気に入られたみたいだから、次はもっとモデルをごり押しされるわよ」

「あはは……」


 苦笑いを浮かべた。私はシェリルに比べるとそこまで抵抗がないけれど、あの勢いで迫られるのはちょっと困る。まあ、受けるかどうかはそのときの気分次第、かな。


「それにしても、シェリルのその服は彼女の趣味だったのね」

「そうよ。胸を強調するのは恥ずかしいんだけど、値段が、ね」


 彼女が曖昧に笑った。彼女の趣味に合うかどうかはともかくとして、決して悪くないデザインの服。それが半額だと言われたら飛びついてしまう気持ちはよく分かる。


「でも、あんまり胸元を強調するデザインだと、ネックレスが隠せないから困るのよね」


 そう言って、シェリルが胸の谷間に隠れていたネックレスを引き出した。どうやらチェーンを長めにすることで、谷間の奥に隠れるようにしているらしい。

 一目で高価だと分かるネックレスなので、防犯的な理由だろう。つまり、そのネックレスを付けているのはファッション的な理由じゃない。


「……魔導具、だね」

「ええ。お母さんから受け継いだ大切なお守りなの」


 シェリルの工房にある金庫にしまわれていたネックレスだ。

 私はそのネックレスから目が離せない。


 私がサラ先輩に渡されたのと同じデザイン。サラ先輩が好んで使っていた、三日月の中に、純度の高い魔石が収まっているお守りだ。


 もちろん、デザインが同じだけならただの偶然だと思っただろう。だけど、解析の魔術を使った私は理解する。その魔石に、私の魔力が混じっていることを。


 その魔石は間違いなく、私が因子継承で産みだした人工魔石だ。

 そう思って鑑定すれば、七つの効果因子を内包している七等級の魔石だった。私があの日、お腹の中の赤ちゃんへの贈り物だと言ってサラ先輩に渡した魔石で間違いない。


 完成度を見ても、それを魔導具化したのはサラ先輩だろう。だがあのシェルターに、ネックレスを始めとした魔導具化に必要な材料が揃っていたとは思えない。

 つまり、この魔導具が造られたのは、サラ先輩が地下シェルターを脱出した後。


 サラ先輩は迷宮の氾濫を生き延びていた。

 生きて魔導具を造り、それを産まれてきた子供に贈ったのだ。


「そのお守り、代々受け継いでいるの?」

「え、どうかしら? お母さんはおばあちゃんからもらったって言ってたけど、さすがにそれより前からあったかどうか分からないわ」

「そっか……そうだよね」


 あれから200年、途中で他人の手に渡っている可能性も零ではないだろう。だが同時に、シェリルがサラ先輩の子孫である可能性は高い。

 少なくとも、無関係ではないはずだ。

 だから――


「ねぇ、シェリル。あなたは立派な魔導具師になりたいのよね?」

「もちろんよ!」


 シェリルが勢いよく頷く。

 サラ先輩を失って、一度は消え掛けた私の情熱が再び沸き上がる。押しつけにならないのなら、彼女と利害が一致するのなら、私が迷うことはなにもない。


「だったら私と手を組まない?」

「え、どういうこと?」

「私が魔石を提供して、あなたが魔導具を作るの。この提案を受けてくれるのなら、私の知る限りの知識をあなたに教えてあげる」

「それは、凄くありがたい申し出だけど……どうしてそこまでしてくれるの?」

「理由はいくつかあるよ。でも決め手は、あなたに才能があると思ったから」


 サラ先輩と約束したのは、二人の知識を併せて人類を救うような魔導具を発明すること。

 もう果たせない約束だと思っていた。

 だけど、シェリルにサラ先輩の知識を託せば、サラ先輩との約束を果たすことが出来る。


「私は正直、自分がカナタの期待に応えられるかどうか分からないわ」


 シェリルのセリフを聞いて、断られるのだと思った。

 でも、彼女は「だけど――」と続ける。


「あたしは立派な魔導具師になりたい。だから、カナタがそのチャンスをくれるというのなら、あたしはその申し出を受けるわ。だから――どうか、よろしくお願いします」


 ぺこりと礼儀正しく頭を下げる。

 それを見た私の胸に熱い思いが込み上げてきた。一度は見失った目標が見えてくる。


「うん、約束する。私が必ず、シェリルを最高の魔導具師にしてみせるよ」


 約束は違(たが)えない。

 私がサラ先輩から学んだ知識のすべてをシェリルに伝えよう。そしていつか、私とシェリルで最高の魔導具を造る。そうすれば、二人の知識を併せて造った最高の魔導具で人類を救うという、サラ先輩との約束も果たせるかもしれない。

 そんな思いを胸に、私は200年後の世界で新たな一歩を踏み出した。

 

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