341.ぷらぷら体操とイタチの大興奮
「いらっしゃい。
本当に白いイタチに変身したのね。
イタチのアリーもとっても可愛らしくて食べちゃいたいわ」
警備の人に言われて待っていたら、ジェン様がやってきた。
ジェン様ってばもうのぼせてるのかな?
ほっぺがちょっと上気してる。
「ふふふ、レイヤード兄様の魔具は素晴らしいんです!」
ニーアの首に引っかかってぷらんぷらんしていた僕は体を起こして肩に座り直して力説する。
「やだ、イタチカワイイ」
おや、何だかカタコトになった。
しかも口元に手を当てて悶えながらフリーズしたんだけど、大丈夫かな?
「ジェン様?」
「え、ええ、驚かせてごめんなさいね。
私の首にも引っかかっていいのよ?
ほら、ほら」
「え、えっと····」
「申し訳ございません。
お嬢様は現在ぷらぷら体操の考案に私の首でぷらぷらしております。
首が変わると良い案が浮かばないらしく、今後のアドバイザーとしての仕事にも差し支えるかと」
スーパーモデルが両手を突き出してくれくれスタイルにで迫る迫力に、ちょっとだけ気後れしてたらニーアがフォローしてくれた。
でもぷらぷら体操って何かな?!
首が変わるとってどういう事?!
僕、初耳だよ?!
「そう。
それは仕方ないわね」
嘘だ、通じちゃうの?!
「それなら早く一緒に普通に温泉に入れるようにしなきゃね。
貴族用の建物も急いで建設しているから、完成したらそっちは人型のアリーで一緒に入って感想を教えてちょうだいね」
「もちろん!」
「さあ、中に入って」
気持ちを切り替えたのか、僕達を中に誘うジェン様。
さあさ、中はどんな感じになってるんだろうね。
僕は再びニーアの首に引っかかってぷらんぷらんを楽しみつつ、門をくぐって中に入る。
「アリーは絵も上手なのね。
絵があんなに上手いと私も職人達もイメージが湧きやすくて助かったわ」
「それは良かった。
イメージって言葉で伝えるより、絵で伝える方がちゃんと伝わるみたいですね。
街に作ってた足湯なんかもジャガンダ国の物とは違っていて、なおかつジェン様や職人さん達とでこの領らしい趣きがある物に仕上がっていて良かったと思います」
スケッチなんて前世以来ぶりだったけど、僕は前世では外科医をしてただけに今世と違って手先は鍛えてたんだよ。
スケッチはもちろん自宅にピアノを置いて弾いてたよ。
暇潰しも兼ねてたから、最初だけ知り合いにちょっと教えてもらったくらいでほとんど我流だったけど。
後は幼馴染や、僕にとっても娘みたいな子に付き合って刺繍とか編み物なんかもできるようになった。
体はあの頃と全く違うけど、感覚は頭の中にあるみたい。
スケッチの腕前もやってみるとなかなか上出来だったんだ。
「ふふふ、ありがとう。
さあ、ここが温泉に入る前の着替えや貴重品預かりなんかの、準備する為のスペースよ。
アリーやカイヤ商会長の話を参考にして作ったのだけれど、どうかしら?」
なるほど、入ってすぐのここはお城の回廊みたいになってて、広く取ってある。
多分水着が普及してからの事も考えてるんだろうね。
ほら、服の下に水着を着てれば更衣室いらないもの。
もちろん更衣室はちゃんと見える所にあるよ。
ニーアにぷらんぷらんしながら覗いてみたけど、男女でほぼ同じ作りだし、ちゃんとベビーベットも置いてくれてるね。
貴重品預かりの鍵付きロッカーはもちろん設置してあるけど、それとは別に案内所でもロッカーに入りきらない貴重品を預けられるみたい。
預かり料は有料で、案内所の方で預かる方がもちろん割高。
ていってもロッカーのは駄菓子1個分くらいで案内所のは従業員さんの時給分かな。
あちらの世界の日本みたいに治安が良いとは言えないから、手数料を払っても預ける人は預けるはずだよ。
もちろん貴重品の量や質への限度はあるから、注意書きはしてる。
この領の識字率が心配だけど。
「ここからは温泉に入る前のゲートよ」
ジェン様に案内されるまま、回廊を進むと更に中に入るのにゲートがあった。
向こう側には温泉が見えて、温泉好きな僕は少しずつ興奮してくる。
「まずはここで来客達に洗浄魔法をかける事にしてあるの」
もちろんはやる気持ちは抑えてスーパーモデルの説明を聞く。
ゲートで行うのは、魔法の世界だからできる事だね。
洗浄魔法は入浴前のかけ湯みたいなものだよ。
高度な濾過装置があるわけではないし、メンテナンスにかかる維持費を最小限に抑えるには、かけ湯の代わりに魔法を使う方がいい。
洗浄魔法で魔力はそんなに消費しない、生活魔法の類なんだ。
こちらも金額は駄菓子1個分。
ゲートの警備員さんが見てる前で自分で自分に魔法をかければお金はいらないよ。
ちなみに12才までの子供は無料。
ほら、この国は13才で成人だからね。
ゲートを抜けて温泉浴場を目の当たりにして、僕はあまりの素晴らしさにニーアの肩からするりと降りて、興奮するままに、思わず叫んで走り回った。
「うわぁー!
サトゥルニア!
あ、向こうはブダペスト風ー!」
叫んだのはあちらの世界の地名だった。
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