160.義兄様達と合流
「レイヤード兄様、お疲れ様」
席を立って後ろの兄様に抱きつく。
「おじさん、驚かせてごめんなさい。
私の兄様で、怪しい人じゃないの」
「いや、え、な、どこから湧いた?!」
「人を虫みたいに言わないでくれるかな。
普通にそこの出入口から入って、アリーの後ろに立ってたんだから」
レイヤード義兄様が少し不機嫌そう。
例の難癖付けてた人の相手して疲れちゃったのかな?
背伸びして頭をよしよししておくね。
「兄様、普通に入ってきてもその外套の気配消し機能を起動させてたらわからないよ?」
「そういえば人混みでどこまで使えるかちょっと性能を確かめてたんだ。
忘れてたよ、アリー」
レイヤード義兄様が羽織ってる外套は去年僕がルドルフ第2王子殿下に貸したあの気配を消すケープと同じ機能を常備してあるんだ。
義兄様も僕の頭を撫でてくれる。
「んふふ、おっちょこちょいな兄様可愛いね」
「僕のアリーも可愛くて拐われちゃうから、現地調査は他の人にさせようね」
「ふぐっ」
相変わらず僕の心を読んで油断したところで先手を打つ義兄様も素敵だね。
思わず変な声出しちゃったよ。
「な、仲が良いんだな。
これ、いつもか?」
「あ、ああ、ここの兄妹は珍しくない。
あともう1人兄もいるが、そっちも····」
初対面のおじさんも、滅多に会わない王子も認めるくらい仲が良いなんて嬉しいな。
ちょっと後ろに下がって2人で固まってひそひそ話さなくてもいいのに。
リューイさんはそっと端に寄って護衛に徹している。
「レイヤード!
俺に押しつけた隙に天使と合流とはいい度胸だな!」
「出たぁ!」
わわ!
バルトス義兄様がレイヤード義兄様の外套と同じくらいの高性能な魔法使えるの忘れてた!
多分ついさっきこのブースに颯爽と入ってきて魔法を解除したんだろうけど、王子は幽霊と出くわしたみたいに顔を引きつらせて叫ぶし、おじさんはまたまた後ろにジャンプ&ファイティングポーズだ。
「バルトス兄様、お疲れ様」
レイヤード義兄様ってば、バルトス義兄様に押しつけちゃったんだね。
労りのよしよしをバルトス義兄様にもしておこう。
「滾る!」
言ってる事は意味不明だけど、疲れて変な事口走る時もあるもんね。
「さあ、祭りにくり出そう!」
なんて思ってたらバルトス義兄様は僕を縦抱きにして外に出ようとしちゃう?!
「待って、兄様?!
まだお買い物できてないよ!」
「兄上だけズルい!
僕もアリーを抱っこして回るからね!」
「ふん、抜け駆けしようとするからだ!」
口喧嘩しながら僕を抱えて外に向かうバルトス義兄様。
押しつけられたのがよっぽど頭にきてるの?!
このままだと外に出ちゃう。
かくなる上は····。
「バルトス義兄様、あれ買って!!
お願い!」
おねだり攻撃だ!
「む、どれだ?
兄様が何でも買ってあげるぞ」
よし、かかった。
「バルトス義兄様には珍しい南国の果物買って欲しいの。
甘くて美味しかったよ」
「ああ、たくさん食べて体重を増やそうな」
片腕に僕を乗せて、よしよししてくれる。
「ありがとう、バルトス義兄様。
まだ注文もできてないから戻って?」
「アリー、僕にもおねだりしてくれないの?」
「えへへ。
レイヤード義兄様にも買って欲しいのがあるよ。
あそこの香辛料一式。
一緒にお買い物に付き合って欲しいな」
「もちろん」
3人仲良く席に戻る。
気を利かせていつの間にか椅子が2つ追加で用意されてるけど、僕はそのままバルトス義兄様のお膝に乗せられる。
「レイヤード義兄様、ここを出たら抱っこして回って?」
「もちろん!」
「なっ?!
天使を抱っこするのは····」
何か言いたげなレイヤード義兄様が口を開く前に次の行動の予約をすれば、バルトス義兄様が不服そう。
僕ってば愛されてるね。
「お祭り2年ぶりだし、私達3人で回るのは5年ぶりだよ?
皆で仲良く周りたいの。
ダメ?
最初はバルトス兄様だから、次はレイヤード義兄様、最後はバルトス義兄様とお家に帰るの。
だってバルトス義兄様は今日夜勤でお家にいないでしょ?
だから今日の抱っこの時間はバルトス義兄様が長くてもいいでしょ?
嫌?」
「嫌なわけないだろう!
もちろんだよ、俺の天使!」
「良かったぁ!
帰ったらきっと疲れて眠っちゃうから、レイヤード兄様は今日はお家にいて?
明日の朝は一緒にご飯食べよ?」
「うん、明日に備えて今夜は家にいるから、今日の疲れを残さないようにゆっくり起きればいいからね」
「はーい」
いっぱい抱っこしてくれるバルトス義兄様も、僕を気遣ってくれるレイヤード義兄様も大好き!
「なあ、俺は何を見せられてるんだ?」
「いつか慣れる時がくる····私はこの砂糖を煮詰めたような兄妹愛には昨年慣れた。
1年ぶりに目の前で見ると何かにあてられた感はあるが····」
相変わらずあっちで肩を並べてこそこそ何か話してるけど、いつの間にそんなに仲良くなったんだろ?
「おじさん、そろそろお会計のお話してもいい?」
「おっと、悪いな。
何か料理の仕方がわかんねえ香辛料とかなかったか?」
おじさんと王子も着席する。
「多分大丈夫です。
ピタ、ヤッツは20個ずつ、スラは中袋で1袋、カハイは2袋、ウナは4瓶、そこの香辛料はそれぞれ1袋ずつ····」
「いやいや嬢ちゃん、それ買いすぎじゃねえか?!
食いきれねえんじゃねえか?!」
おじさんが驚く。
売り物なのに相変わらず消極的だよね。
「アリー?!
それは買いすぎでは?!
特にカハイとグリッゲンの材料····」
「「アリー、だと?!」」
「いや、す、すまない、アリー嬢」
愛称呼び捨てに義兄様達が反応すると王子の顔が盛大にひくついてる。
一応僕がいいって言っておいたから気にしなくていいんだけど、妹が大好きな義兄様達でごめんね、王子。
「ふふふ、大丈夫です。
単体でも他の料理に使えそうですし、最初は失敗もすると思うので。
追加購入する時は、チャガン商会に問い合わせしますね。
兄様達、お会計お願いしてもいい?」
「「もちろん」」
頼もしいね。
ついでに兄様達のマジックバッグに入れてもらう。
おじさんは大容量タイプのマジックバッグをあまり見た事なかったみたいで興味津々だった。
「嬢ちゃん、毎度あり。
気に入ったらお得意さんになってくれ!」
ニカッと豪快に笑うカンガルーさん····レイヤード義兄様に抱っこさえされてなければ····。
「「アリー」」
「わかってるもん」
くっ、こんな時の義兄様達は息がピッタリで笑顔に迫力が上乗せされる····素敵か!
「ありがとうございました!
きっとまた連絡すると思います。
えっと、少し先になるんですがウィンスさんと東の商会長さんがうちに来るんです。
多分うちの従兄も来ると思います。
その時に日が合うようなら一緒にいかがでしょうか?
多分試食会になると思うし、何かしらのご縁ができるかもしれませんよ?」
「そりゃあ是非参加してえな!」
「ではウィンスさんを通してお誘い····」
「アリー嬢!
私も参加させてくれ!」
ん?!
「「断る」」
「そんな····」
僕が答えるより早く義兄様達が断る。
息ピッタリな義兄様達に王子はたじたじだ。
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