53.しばらく引きこもりを誓う
「おはよう、アリー」
小鳥のさえずりに窓から差し込む清々しい朝日、爽やかな笑顔、優しげな声····うん、寝起きの義父様も素敵だよ。
とてもアラフォーには見えない美中年だ。
「おはようございます、父様」
「気分はどう?」
「スッキリだよ。
父様、おはようのぎゅー」
「ふふ、可愛いね」
朝から大きなベッドでイチャイチャだ。
あれ?
てかここどこだろ?
「父様、ここどこ?」
「離宮の客室だよ。
あれからアリーが疲れて眠ってしまったから、そのまま私達は泊まったんだ。
着替えはここの侍女がしてくれたよ。
覚えてない?」
「うーん····あ、あの子は?」
「アリーが抱きついて離れなかったから、彼がここまで運んでくれたんだ。
私の事は、嫌いになってない?」
僕の頭をなでなでしながら、困ったように笑いかけられる。
「どうしてそんなこと言うの?
僕が父様を嫌うわけないでしょ。
むしろ大好き、愛してるよ。
そのまま抱っこしてお家に帰ってくれても良かったんだよ?」
「そうか、愛してるか」
義父様は僕をまたまたギュッと抱きしめる。
「昨日精霊の加護を2つもらっただろ?
魔力のないお前にはそのせいで精神性の部分が不安定になったようだ。
途中までは彼がそれ以上不安定にならないようにサポートしていた。
ちゃんと気付いてやれなくて悪かったね」
「そうだったの?
父様が謝ることなんて何もないよ。
彼がサポートできるだけ回復したみたいで良かった。
これで帰れるね」
「そんなに帰りたかったのか。
それなんだけど、帰る時にあの王子に会う事になっている。
お前が途中で眠ってしまって、礼を言わず仕舞いなのが気になるらしい。
その後は一切関わらないと約束している」
「····そう····まぁ仕方ないね」
まぁあの後ろくでもない話になった可能性もあるから、今後そういうのに関わらないで良くなるなら我慢しよう。
他国のお家騒動とか、子供の僕には怖すぎる。
それに闇の精霊さんには僕もちゃんとお礼言いたいしね。
ということで、着替えて昨日の客室でギディアス様も混ざって朝食を食べた。
僕待ちだったのかな。
ギディアス様は何かと忙しいはずなのに申し訳ないね。
でも混ざってくるなんて····実は暇なの?
闇の精霊さんも具現化して一緒に食べたのが少し嬉しかった。
ちゃんと昨日のお礼を言ったら、はにかんだ笑顔を向けられてしてやられちゃったよ。
直後義父様の殺気に殺られそうになった精霊さんには申し訳なかったけど。
リューイ様は相変わらず無表情で王子の後ろにいた。
昨日のあの小さい子供の手の記憶がまた気になってしまった。
朝は元々あまり入らない方だからフルーツと紅茶だけ手をつけたんだけど、王族2人に心配そうな顔でチラチラ見られちゃったけど、令嬢ってそんなものじゃないかな。
心配と言えば、ギディアス様もしきりに嫌ってないか聞いてきたんだけど、眠さにかまけて僕が何か失言でもしてたのかな?
うーん、思い出せない。
またお城においでって誘い文句はもちろん無視だよね。
最後に王子に両手を握られて最上位のお礼を言われて、僕はようやく義父様と転移してお家に帰れた。
今回たくさん気になる事はあったんだけど、領に戻って数週間した時にレイヤード義兄様と森に遊びに行ったら衝撃的な光景を見てしまってからは気にしない事に決めた。
木陰に佇む笑顔のフェルを見た。
華奢な彼女の手には、いかにも怪しい人拐いか暗殺者っぽい厳つそうな獣人さんの首根っこが鷲掴みにされてたんだ。
耳や尻尾が引きちぎられ、顔もボコボコで血塗れ状態の彼を見た時、依頼したどこかの誰かと自分のお互いの為にもしばらく領からは出ないで過ごそうと誓った。
精霊さんは怒ると冷徹、冷酷だから怖いんだ。
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