22.未知の料理

「これは····」

「あれ、思ってたのと違う?」

「あの調味料はどこに消したのだ?」


 盛られた料理を見てシル様、アン様、ルド様の順に発言した。


「僕の天使が買ったものが、おかしい調味料なわけないでしょう」


 レイヤード義兄様が得意気に笑う。


「兄様が可愛い····」


 あ、うっかり口に出しちゃった。

隣の義兄様がふんわり笑って頭を撫でてくれた。


 少年トリオが残念な何かを見るような目を向ける····というか、むしろドン引いてる気がするのは何故かな?


 気を取り直して、料理の説明だ。


「ルド様のご要望通りあの時購入した調味料、穀物のベイを主に使ったお料理です。

メイン料理は領地内の川魚を白いアジソと蜂蜜で下味をつけた焼き魚。

先日の狩猟大会で領民から献上された猪肉をセウユと蜂蜜で味付けた煮物。

鶏肉を一口大にして揚げた物で、セウユと香草で下味をつけた物、それにナナミや山の香辛料を足してピリ辛風味にした物との2種類あります。

パンもご用意していますが、よろしければジャカルタで食べられている穀物のベイも食べてみて下さい。

領地内の山菜、茸、鶏肉とベイをセウユと共に炊き上げて食べやすく一口大に握りました。

こちらは炊き上げたベイにセウユを塗って焼いた物です。

スープは根菜類と猪肉を煮てアジソで味付けしたものです。

お好みでナナミをふりかけて下さい。

皆様の好みがわからないので、オードブル形式にしました。

サラダやグラタン等馴染みのある料理にもアジソやセウユを隠し味で使用していますが、味が大きく変わらないよう調理してます。

お口に合わなければそちらを召し上がって下さい」

「もしやアリー嬢が全て考案したのか?!」

「····え、と、いえ、商会の方のお話を元に、うちの料理長達と一緒に考案しました」

「ふふ、アリーだけではさすがに難しかったんじゃないかな。

ね、アリー?」

「はい、もちろん料理長達の頑張りがあって実現した物ばかりです」


 ルド様への返答に義兄様が援護射撃をしてくれた。

何となくマルス様の目が鋭くなった気がするんだけど、何を疑ってるのかな?


 どうでもいいけど、西京焼き、角煮、唐揚げ、炊き込みご飯、焼おにぎりって言っても通じないから、説明が無駄に長くて疲れる。

全体的に茶色いからホントは彩り考えてパエリアやオムライスも出そうかと思ったんだけど、今日はあくまでもあの時の調味料で作りたかったんだよね。


「料理が冷めちゃうから、食べちゃおっか」


 義兄様の呼びかけで皆手をつけ始める。

結果は、出した料理は男達のお腹へと全て吸い込まれた。

特にあの3人は最初の一口は恐る恐る口に運んだけど、それからは凄かった。

相撲部屋の食事風景ってこんな感じ?

ラルク様も大人の2人に負けるとも劣らずだね。

義兄様とマルス様以外の食べっぷりはなかなか圧巻。

あ、2人の食べっぷりが悪いって意味じゃないからね。

きっと一般的な少年くらいだと思う。

皆目を丸めつつ、ニコニコしつつ、たくさん食べてくれてたから、美味しかったんだなって感じられてもてなす僕は一安心。

やっぱり少しは緊張してたみたい。


 食後のデザートはハチミツ入りのアイスクリームを作っておいたけど、義兄様以外はそちらも全てなくなった。

義兄様は甘いお菓子は苦手なんだよね。

一口食べて手が止まったから、代わりに僕のと交換しといた。

甘くないのも作っておいたんだ。

ふふふ、義兄様嬉しそうに食べてくれたよ。

え、アイスクリームって存在してなかったの?

料理長····言っといてよ。

マルス様の目がまた鋭くなったじゃないか。


 食後のお茶は最初の客室に戻ってから始めたんだけど、僕は商業祭でうっかりやっちゃったルド様との約束を果たして気が抜けたんだと思う。

僕の前にもニーアがお茶を置いてくれたあたりから、記憶が無い。

気がついたら真っ暗な自室のベッドで驚いちゃった。

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