第4話 二人でお昼ご飯
ーーーーキーンコーンカーンコーン……
お昼休みを知らせるチャイムが、学校に鳴り響く。
教師が号令の合図を出すとダッシュで購買に走りに行くものや、友人とお昼を取るために机を寄せ合うものなど様々だ。
この時間になると学校が一気に活気づき、人な話し声が校内に反響しはじめ廊下に出るとザワザワと声が聞こえてくるような気がした。
そんなお昼に刹那秀登は誰とも話すことなく、屋上へと歩いていく。
屋上の入り口には見知った顔がそこにはいた。
「矢田さん、おまたせー」
「同じ教室なんだからそんなに待ってないですよ」
ここ最近は屋上で一緒に昼休みを過ごすようになっていた。
以前学食を二人で利用したら矢田さんが恥ずかしそうにしていたので、二人きりで食べようと誘ったのだ。
意外としっかりしているように見えるが、付き合ってみると彼女は人見知りが激しいようだった。
「(はぁ~~。刹那君と二人っきりでお昼なんて最高だわ~~。学食だと刹那君の隣に女子が座ってきて落ち着いてご飯食べられないし、刹那君からお昼二人毎日食べたいだなんて! 最高だわ!)」
二人は相変わらずだった。
そんな会話を交えつつ矢田はポケットから鍵を取り出し屋上の扉を開く。
この学校では屋上は生徒に開放されていないが、何故か二人でお昼を取るという話が出た次の日に鍵を彼女が用意してくれていた。
どうやって用意したかと聞いてもはぐらかされるので最初にうちは気になったが、今ではすっかりと疑問が抜け落ちていた。
二人で屋上の扉をくぐり、適当な場所に二人で座る。
たどたどしい会話でお互いに無言になる時もあるのだが、不思議と圧迫感などはなく心地よささえ感じていた。
そうしてしばらく二人でお昼を過ごしていると彼女に気になる点が一つできた。
自分は自前の弁当を用意しているのだが、彼女はずっと菓子パンや総菜パンを食べていた。
それを見て一つ思い付き、それをすぐに実行するのであった。
お昼休み。
今日も二人で屋上に待ち合わせをして、お昼を取る。
しかし、今日は少し様子が違った。
「矢田さんちょっといいかな?」
「? どうかしましたか?」
「矢田さん、ずっとパンばかり食べてるの見ててさ。パンばっかりだと身体に悪いと思ってお弁当作ってきたんだけど……よかったら食べてくれないかな?」
「っ!? たべます! たべます!」
自分が思っていたよりも好感触なようで胸をなでおろす。
彼女に用意しておいた弁当を差し出すと彼女は両手で喜びながら受け取った。
弁当は唐揚げや卵焼きといった定番の中身だったのだがそれを箸でつかみ嬉しそうに彼女が口に運ぶ。
「おいひぃ……」
一口、口に入れると言葉が漏れだすかのように彼女がつぶやく。
その後、夢中になって弁当を食べ始める。
今の彼女を見ているとリスが口いっぱいに頬張る姿と重なり苦笑してしまう。
そんな自分に気付かないくらい弁当に夢中になっていた。
「矢田さん、慌てて食べると喉詰まらせちゃうよ。」
そう言いながら水筒からお茶をコップに注ぎ彼女に差し出す。
コップを受け取りお茶を飲み干すと、気づいたように顔を赤面させながらしどろもどろになる。
「す、すいません! つい、おいしすぎて夢中になってしまいました」
「ははは、そんなに喜んでくれるとこっちも作り甲斐があるから大丈夫だよ。」
そんな会話を交わしながら、二人で食事をとる。
矢田さんが恥ずかしがってあまり会話はなかったが、例のごとく内心は色々とおしゃべりであった。
「(やっちゃた~~。つい夢中になってがっついちゃった~~。でも仕方がないじゃないですか! こんなにおいしいんですもの! このお弁当には刹那君の愛情がたっぷり……♡)」
彼女はいつも通りだが、
「(やっぱり育ちざかりがパンばっかりってのはよくないからね。矢田さん子供舌っぽいしそこら辺を次は気にしながら作ろうかな?)」
この男前回の一件から母性を育みすぎて、完璧に親目線になっていた。
二人とも愛し合っているようでどこかずれている。
そんなお昼の一幕は過ぎ去っていくのだった……
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