第173話 俺たちの家

『…ま、待ってッ!…お前達…創造主に歯向かうつもりかッ!おいッ!聞いてるのか?…っ…話せばわかるッ!…話し合いを…話し合いをしようじゃないかッ!…グギャァァァァァァッ!』


七つの包丁達は、白髪の男の話に耳を傾けることなかった。


(身体が変わっても能力やステータスは変わっていないな。むしろ、強くなってないか…?苦労して手に入れたオリハルコンやヒヒイロカネで造った自慢の包丁だったから有り得ない話じゃないけど…。)



クロン達の身体を乗っ取った自称創造神を倒したあと、モンタが肩の上に乗ってきた。


『コウスケ。ここ木の実もなんもねぇぜ。』


(モンタは相変わらずだな。)


続いて、モンタの後ろで控えていた紅ゴブが報告を始める。


『若旦那のお見立てどおり、この空間も龍脈のようなシステムで運用されているみたいでゲしたね。システム改修も粗方終了したので、じきにここも完全に管理下におくことができるでゲス。しかし、龍脈といい、このエネルギーはどこからくるんでゲスかね?』


(どうでも良いけど、紅ゴブは何で白衣を着てメガネをかけてるんだろう…。)


「う~ん。それにも別の神がいるのかもね。まあ、俺の私見では神を超越した意思を持たない存在が生み出していると思うけどね。」


紅ゴブは、メガネを外して黄昏れるように遠くを眺めた。


『深いでゲスね。本当の神とは意外にそんなものかもしれないでゲスね…。』


紅ゴブの頭の上にモンタが飛び移って、ペシペシ叩いた。


『なあなあ、難しいこと言ってねぇで帰ろうぜッ!こんなつまんねぇとこより、魔の森の奥を探検しようぜッ!いい場所見つけたんだ。スゲェ木の実がなるデケェ木があんだぜッ!ビビんなよッ!』


紅ゴブは少し照れながら頭を掻いた。


『あはは。神も親分の前では形無しでゲスね。』


日本酒を飲みながらモンタと紅ゴブを眺めていたクロンがしみじみと語りだした。


『フハハッ!モンタの言う通りだッ!神の意思だの聖剣の役割だの、つまらぬ固定概念に囚われては、自分自身まで囚われてしまう。思考を停止せず、自分で考え、モノの本質を見出だし、進んでは下がる、時には立ち止まって悩む…。押し付けられた考えをそのまま受け入れるのは楽だが、そうやって悩んで進むことに本当の価値があるのかもしれんのう。』


(いつの間にか酒盛りしてる…。そのせいか、良いこと言ってる筈なのに、全く頭に入ってこない…。)


クロンを呆れて眺めていると、遠くから仲間達の声が聞こえてきた。


『コウスケ様ぁぁぁッ!神モドキの首を3つも打ち取りましたぁぁぁッ!』


『主様、私は黒と協力して神モドキを7体も屠りました。』


『コウスケッ!私とお姉様の美少女ペアは、強そうなヤツ3体倒したわよッ!』


『へへん♪オイラとイカズチは、超大ボスを倒したぜい♪』


『若様。カブト隊も天使の大軍約一万を殲滅つしたでござる。』




(ヒトと関わるのも悪くないな…。)


「さぁ、帰ろうか。俺たちの家に。」

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