第145話 閑話 元精霊王

研究室で実験をしていると、背後から元異世界勇者のジンが声をかけてきた。


「ユビタス、精霊樹と世界樹が復活したらしいよ。」


ユニークスキルが僕の研究に役立つため、ジンとは百年くらい前から一緒に研究をしている。


『マジッ☆なんでわかったの?どこにあるの?いつ復活したの?世界樹はともかく、精霊樹なんてさぁ、昔、僕が消滅させたから存在していないはずだよ~☆』


ジンは笑いながらソファーに座ると、研究室にある精霊用の檻を指差した。


「アハハ。最近、精霊達の動きが活発だから、そこにいるどんくさい精霊を捕まえて聞いたんだよ。そしたらさ、ランクエラーっていうドロップ無しのクソダンジョンにいるみたいなんだ。ちなみに、世界樹もクソダンジョンにいるみたい。いつ復活したかわかんないけど、かなり力を取り戻しているみたいだから結構経ってるんじゃない?」


…精霊樹が復活した…


…精霊が力を取り戻している…


…運がまた向いてきたな…


『フフ…☆ちょうど、精霊樹を消滅させて後悔してたんだよね☆あれがないと消費した精霊力の回復が遅くてね☆精霊達から無理矢理吸い取った分はまだまだあるんだけど、ちょっと不便してたとこなんだ☆そうか、精霊も力を取り戻しているってことは、また吸い取れるってことだもんねぇ☆』


「俺っちが言う台詞じゃないけど、そんなことして”精霊王”の称号が“鬼畜王”とかになったりしないの~?称号があるから従ってる強い精霊もいるんでしょ?」


『大丈夫、大丈夫☆僕は存在自体が“精霊王”だから☆ちょっとくらい悪いことをしても良いんだよ☆ホラッ!ジンッ!支度してッ!今からそのクソダンジョンとやらに、ダンジョンごと貰いに行くよッ!』


ジンは面倒臭そうに立ち上がると、研究室奥にある透明なケースから小さな“蚊”を取り出した。


「面倒臭そうだから、”テレポートモスキート”に”憑依”してついて行くよ。それならイイでしょ?正直、生身で君についていくの大変なんだよね。」


…蚊と精霊を掛け合わせたキメラ…


…まぁ、あれならいいか…


『OK☆転移ポイントに着いたら、呼ぶから来てね☆』


「OK♪間違ってもダンジョン内で呼ばないでね♪ペナルティで死んじゃうからね♪」


『死んじゃうのは、テレポートモスキートだけだけどね☆』

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